「クルマの未来は地上だけにある」——そう思っていたのは、もう昔の話かもしれません。
100年に一度の変革期と言われる自動車業界。EVシフト、自動運転、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と、地上でのイノベーションが怒濤のように押し寄せるなか、業界の視線は今、静かに——しかし確実に——「空」へと向かい始めています。
その変革の最前線を体感できるイベントが、2026年6月に幕張メッセで開催されます。「第11回 Japan Drone 2026」と、同時開催の「第5回 次世代エアモビリティEXPO 2026」です。
単なるドローンの展示会だと思ったら、大間違いです。これは、自動車業界に携わるすべての人が無視できない、モビリティ社会の未来設計図が描かれる場なのです。本記事では、自動車業界目線で、このイベントの全貌と、そこに潜む大きなビジネスチャンスをあますところなくお伝えします。
【開催概要】まず、イベントの基本情報をおさえる
議論に入る前に、まずは基本情報を確認しておきましょう。知っているようで意外と知られていない「規模感」が、このイベントの本質を物語っています。
■ 第11回 Japan Drone 2026 開催概要
| 名称 | 第11回 Japan Drone 2026 |
|---|---|
| テーマ | ドローンによるインフラ革命 〜地域創生と街づくり〜 |
| 会期 | 2026年6月3日(水)〜 6月5日(金) 10:00〜17:00 |
| 会場 | 幕張メッセ(千葉県千葉市) 国際展示場5〜6ホール |
| 主催 | 一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA) |
| 共催 | 株式会社コングレ |
| 予定出展者数 | 300社・団体(2展合計)※昨年比15社増 |
| 予定来場者数 | 24,000人(2展合計)※昨年実績23,049人 |
| 後援 | 総務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、デジタル庁、復興庁、千葉県、千葉市 ほか |
■ 第5回 次世代エアモビリティEXPO 2026 開催概要
| 名称 | 第5回 次世代エアモビリティEXPO 2026 |
|---|---|
| テーマ | 空飛ぶクルマ(AAM)の新たな挑戦 〜イノベーションが離陸する〜 |
| 特別協力 | 株式会社日刊自動車新聞社 |
| 主な展示物 | eVTOL機体、素材・部品メーカー、Vポート・ドローンポートメーカー、地域開発デベロッパー、建設・建築関連企業、運輸関係企業 など |
2016年の初開催から数えて第11回目を迎えるJapan Droneは、国内最大規模のドローン専門展示会として成長を続けてきました。昨年(2025年)の出展者数は285社・団体、来場者数は3日間で23,049人を記録。GMOインターネットグループ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンクといった大手IT・通信企業の出展も相次ぐなど、もはや「ドローン業界の内輪の集まり」ではなく、産業横断型の一大ビジネスマッチングプラットフォームへと進化しています。
【Japan Drone 2026】「はたらくドローン」が社会を変える——その全貌
Japan Drone 2026のテーマは。「最先端技術の見本市」から「社会課題の解決策を提示する場」へ——その本質的な転換こそが、今回の最大の見どころです。
■ 社会実装とスマートシティの推進が核心
本展示会の核心は、単なる技術披露ではありません。「新たな産業創出と国際競争力の強化」、そしてスマートシティの推進に積極的に取り組むことが目的です。今回のキーワードである「ドローンによるインフラ革命」は、橋梁・トンネル・送電線といった老朽化インフラの点検から、過疎地域への物流ラストワンマイル、農業の鳥獣害対策まで、ドローンが地域社会の根幹を支える存在として社会実装される段階に入ったことを示しています。
自動車業界の人間として注目したいのは、この「社会実装」というキーワードです。かつてEVや自動運転も、同じように「技術展示から社会実装へ」という道筋をたどりました。今、ドローン・次世代エアモビリティが、まさにその技術から産業へと離陸するターニングポイントを迎えているのです。
■ 展示ゾーンと特別企画のハイライト
会場では、最新テクノロジーを搭載した機体はもちろん、それを支える周辺技術やサービスが多角的に展示されます。2026年は特に、本展示会で初となる屋外デモンストレーションエリアが新設される点が注目ポイントです。
- デモンストレーションエリア(屋外・災害対応・水中):デモエリアが3つに拡大し、ドローンが現場で果たす役割と実装イメージを実演。各エリア1日6回の実演が予定されており、カタログや映像では伝わらないリアルな「現場感」を体感できます。
- 機体構成部品・素材特別企画ゾーン:ドローンの設計者・製造者を対象に、機体を構成する重要な部品・素材にスポットを当てた特別企画ゾーンが新設。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、モーター、バッテリーなど、自動車サプライヤーが得意とする領域がここに集約されます。
- AI×ロボティクスゾーン:ロボット・AI・自動化分野との連携ニーズの急速な拡大を受け、新たに設置。ドローン技術と地上・水上・水中ロボットとの融合による「次世代スマートソリューション」の全体像が提示されます。
- ドローン×地方創生:自治体PRゾーン:「ドローン×地方創生」をテーマに、全国の自治体によるPRが行われ、地域課題解決の具体策が示されます。自治体向けビジネスを展開したい企業にとっての絶好の接点です。
- 国際コンファレンス:国内外のキーパーソンが登壇し、航空法改正や新たなロードマップ、最新のマーケット動向についてのセッションが21枠以上準備されています。専門展でしか聴けない「一次情報」が集まる場です。
■ Japan Drone & AAM Awards
審査員と来場者の投票によって、出展者の中から分野ごとに「年間ベストドローン」を表彰するアワードも開催。業界のトレンドを俯瞰するバロメーターとして注目度が高く、受賞企業の露出効果は計り知れません。
■ 出展対象分野——自動車サプライヤーが参入できる領域はここだ
出展対象分野を見ると、自動車業界とのシナジーが一目瞭然です。
- 無人航空装置及びプラットフォーム
- 推進装置&パワーシステム(モーター・バッテリー)
- 半導体など材料・製造・記憶装置
- 制御システム
- ナビゲーション&ガイダンスシステム
- カメラ&イメージングシステム
- データ&通信
- ロボティクス技術
- シミュレーション
「推進装置・パワーシステム」「制御システム」「材料・製造」——これらは、EVや自動運転開発で培ってきた日本の自動車サプライヤーの強みが直接活きるフィールドです。経済産業省の調査レポートでも、「電動化部品は自動車産業で電動化を推進するプレイヤーが参入を進めており、自動車で先行した知見を流用した強み形成が可能な領域」と明記されています。
【次世代エアモビリティEXPO 2026】自動車業界が最も注目すべきエリアの全貌
同時開催される「第5回 次世代エアモビリティEXPO 2026」は、自動車業界の関係者にとって最も注目すべきエリアです。テーマは「空飛ぶクルマ(AAM)の新たな挑戦 〜イノベーションが離陸する〜」。ここでは、自動車の延長線上にある「空の移動」の未来が提示されます。
■「空飛ぶクルマ(eVTOL)」とは何か——改めて整理する
「空飛ぶクルマ」とは、一般的に「電動(Electric)・自動(Autonomous)・垂直離着陸(VTOL: Vertical Take-Off and Landing)」の3要素を持つ次世代モビリティのことです。国際的にはeVTOLやUAM(Urban Air Mobility:都市型航空モビリティ)とも呼ばれます。
滑走路が不要で、ヘリコプターよりも整備コストが低くなる可能性があり、都市部の渋滞を立体的に解消する手段として世界各国で研究開発・実証実験が進められています。日本では国土交通省が「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」の特徴を持つ機体として定義しており、都市部や離島・山間部での新たな移動手段、さらには災害時の救急搬送・物資輸送への活用も期待されています。
■ 政府が示した最新ロードマップ——商用化は2027〜28年
2026年3月27日、経済産業省と国土交通省は「空の移動革命に向けたロードマップ」を改訂し、eVTOLの商用運航開始目標を2027年〜2028年と明記しました。当初は2025年の大阪・関西万博での商用化が期待されていましたが、機体開発やルール整備の遅れから万博ではデモフライトにとどまり、事実上の仕切り直しとなりました。
それでも、この万博での実証はけっして無駄ではありませんでした。運航管理システム(AATM)の有効性検証が行われ、制度・インフラ面の課題が具体的に顕在化されたことで、次のフェーズへの道筋が鮮明になったのです。運航当初は操縦者が乗り込んだ遊覧飛行などの限定的な利用を想定し、2030年代前半にかけて都市間の輸送や空港アクセスなどに用途を広げていく計画です。
この「2027〜28年商用化」というカウントダウンこそ、本EXPOが「今すぐ行動すべき展示会」である最大の理由です。
■ グローバルでも離陸が始まった——市場規模の衝撃
eVTOL市場は今、世界規模で爆発的な成長局面にあります。各調査機関のデータを見ると、その将来性の規模感が見えてきます。
- eVTOLスタートアップへの世界の投資総額は、2016年の約40億円規模から2025年には約1兆円超に増加(GII調査)
- 空飛ぶクルマ・eVTOLモビリティ市場は、2026年の約27億ドルから2031年には121億ドルへ(CAGR約35%)成長見込み(市場調査レポート)
- モルガン・スタンレーは長期的に、2040年までのTAM(総市場規模)が5兆ドルに達する可能性を試算
米Joby Aviationは、日本ではANAと提携し、東京都の「eVTOL実装プロジェクト」フェーズⅠに選定されました。Jobyの機体開発にはトヨタが出資し、量産化の知見を提供しています。まさに、自動車産業とエアモビリティ産業の境界線が消えつつある現実がここにあります。
■ 自動車業界との深い親和性——なぜ日刊自動車新聞社が特別協力なのか
特筆すべきは、本EXPOの特別協力として株式会社日刊自動車新聞社が名を連ねている点です。これは偶然ではありません。次世代エアモビリティが自動車産業の技術やサプライチェーンと密接に関係していることを、業界全体に向けて象徴的に示すメッセージです。
では、なぜ自動車産業の技術がeVTOLに活きるのか。経産省・国交省の調査レポートは明確に指摘しています。
- 電動化部品(モーター・インバーター・バッテリー):EVで先行した日本の自動車サプライヤーの知見がそのまま転用可能
- 軽量化素材(CFRP等):航空機産業との接点に加え、自動車の軽量化技術とも重複する領域
- 安全制御・自動運転技術:ADAS(先進運転支援システム)や自律飛行制御の親和性が高い
- 品質管理・量産化プロセス:航空機品質の厳格さと、自動車産業の量産ノウハウを組み合わせる必要がある
デンソーやニデックといった自動車系サプライヤーがeVTOL機体メーカーのサプライヤーとして名乗りを上げているのも、こうした技術的シナジーの必然的な結果です。
■ 有人飛行の新たなロードマップとインフラ整備の最前線
本EXPOでは、「空飛ぶクルマ」の有人飛行実現に向けた新たなロードマップや、安全性・インフラ整備に関する最新情報が共有されます。
特に注目なのが「バーティポート(Vertiport)」の整備動向です。空飛ぶクルマが普及するためには、離着陸場となるバーティポートの整備が不可欠であり、現在、不動産デベロッパーや建設会社との連携による設置検討が全国で並行して進んでいます。本EXPOには「Vポート・ドローンポートメーカー」や「地域開発デベロッパー」「建設・建築関連企業」も出展対象となっており、モビリティインフラ全体の設計図が示される場となっています。
スマートシティ構想における移動手段として、地上と空がシームレスにつながる新しい社会の姿——MaaSの次のステージとして「空のMaaS」が現実のものとなるビジョンが、ここで語られるのです。
【ビジネス活用】出展者・来場者それぞれの具体的メリット
「面白そうだけど、うちの会社に直接関係あるの?」——そう思った方のために、このイベントが提供するビジネス上の価値を整理しておきます。
■ 出展者にとってのメリット:決裁権者との直接交渉の場
本イベントはBtoBの展示商談会として非常に高い価値を提供します。
- 質の高いリード獲得:
来場者は商談意欲や目的意識が高く、特に経営層や管理職など決裁権を持つ層が多いのが特徴です。通常の飛び込み営業や展示会では接触が難しい「本当のキーパーソン」と向き合える場です。 - ネットワークの拡大:
国内220社・団体に加え、昨年は10ヶ国・地域41社の海外企業が出展。異業種・異国との予期せぬ出会いが、新事業の種になることは珍しくありません。 - マーケティングリサーチ:
発売前の製品・サービスに対するアンケートや意見交換を通じ、貴重な市場の生の声を直接収集できます。展示会というリアルな場だからこそ得られるフィードバックは、デジタルリサーチでは代替できません。 - 多角的なメディア露出:
多数の専門紙やWEBメディア、さらにはテレビなどの一般メディアも注目しており、ここで得た露出は業界内でのプレゼンス向上に直結します。
■ 来場者にとってのメリット:ビジネスの種とパートナー探し
- 最新動向の一次情報入手:
国際コンファレンスを通じて、専門展でしか聴くことのできない最新のテクノロジー、規制、マーケット動向を把握できます。航空法改正や政府ロードマップの最新情報は、ここで最速でキャッチアップできます。 - サプライヤー・パートナー候補の発掘:
機体、部品、素材、ソフトウェア、インフラ、コンサルティングまで、eVTOL産業の全レイヤーが集結します。「うちの技術を活かせる先はないか」という探索をするには最高の環境です。 - 人材確保の機会:
併催企画として「就職・転職フェア」も開催されます。国家資格取得者3万人・民間資格取得者10万人のマッチングを活性化させるため、今回初開催となるこの企画は、ドローン人材を求める企業にとって見逃せないコンテンツです。ドローンパイロットや整備士は、将来的にeVTOL運航に関わる人材にも直結します。 - 競合・市場動向のベンチマーキング:
自社の立ち位置を業界全体のなかで俯瞰する機会としても、この規模の専門展示会は格別です。
【自動車業界への直言】この潮流を「対岸の火事」にしてはいけない理由
最後に、自動車業界に身を置く者として、少し踏み込んだ話をさせてください。
「空飛ぶクルマは夢の話」「自分たちには関係ない」——そう感じている方も多いかもしれません。しかし、歴史を振り返ると、「自分たちには関係ない」と思っていた技術が、気づけば本業を根底から揺るがしていた事例には事欠きません。
■ 自動車産業の技術が「空の移動革命」を動かす
eVTOLに使われるコア技術を改めて見てみてください。電動モーター、リチウムイオンバッテリー、パワーエレクトロニクス、ADAS(先進運転支援)技術、ソフトウェア定義型制御——これは現代のEVや自動運転車の構成要素とほぼ同じです。
経産省の調査では、「電動化で先行する自動車産業の技術が、AAM(次世代エアモビリティ)のサプライチェーンにおいて強み形成につながる」と明確に位置づけられています。日本の自動車サプライヤーは、この新市場に参入するための「切り札」をすでに手の中に持っているのです。
■ 2027〜28年の商用化は「準備期間」の終わりを告げる
政府が2027〜28年の商用運航開始を示した今、逆算すれば2026年は「準備の最終年」です。機体メーカーがサプライヤーを決定し、量産体制の構築を進めるのは今まさにこの時期。サプライチェーンの入り口は、一度閉まれば容易には開きません。
「様子を見てから」では遅い——2026年6月の幕張は、その現実を突きつけてくれる場でもあります。
■ Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPOは「業界の羅針盤」
総務省・経産省・国交省・デジタル庁といった主要省庁すべてが後援につき、国内トップの自動車・航空・IT各社が一堂に会するこのイベントは、単なる展示会ではありません。日本のエアモビリティ産業の方向性そのものが決まる「官民協議の場」としての性格を持っています。
ここに足を運ぶことは、次の10年のビジネス地図を先読みするための、最も費用対効果の高い投資の一つだと私は確信しています。
【まとめ】移動の概念が変わる——その現場が2026年6月、幕張メッセにある
「第11回 Japan Drone 2026」と「第5回 次世代エアモビリティEXPO 2026」——このイベントが示すのは、ドローンや空飛ぶクルマというデバイスの話だけではありません。それは、モビリティの概念が地上から空へと拡張される、人類の移動の歴史における新章の始まりです。
自動車業界の100年の蓄積は、この変革において確かな競争優位性になり得ます。電動化・自動化・データ活用——地上で磨いてきた技術と発想が、空の世界で新たな価値を生む。そのヒントと出会い、そしてアクションのきっかけが、2026年6月3日〜5日、幕張メッセに集結します。
ぜひ会場に足を運び、次の時代の息吹を自分の目で確かめてください。

