序章:キング・オブ・ミニバン、16年ぶりの衝撃復活へ
長らくモデルチェンジが待ち望まれていた日産のフラッグシップミニバン、新型エルグランドが、ついにその全貌を現します。現行の3代目エルグランド(E52型)が2010年にデビューして以来、15年以上の時を経て、新型は実に16年ぶりとなるフルモデルチェンジ(E53型)として2026年度の発売を予定しています。
日産は、2025年10月9日に「ジャパンモビリティショー2025(JMS)」の出展概要を発表し、この新型エルグランドを世界初公開することを明言しました。このニュースは、SNS上で「本当に出るんだ!」「早く見たい」「存続怪しかったけど良かった」といった熱狂的な期待の声を生んでいます。
新型エルグランドは、そのDNAである「運転の愉しさ」を電動化によってさらにレベルアップさせ、「長距離でも快適で上質な移動空間を提供するプレミアムツーリングモビリティ」として仕上げられます。本記事では、JMSでの公開を前に判明している、新型エルグランドの革新的なパワートレイン、先進技術、そしてライバルを凌駕するポテンシャルを、業界関係者の視点から徹底解説します。
第1章:復活の狼煙!ジャパンモビリティショー(JMS)での世界初公開と期待感
新型エルグランドの世界初公開は、**ジャパンモビリティショー2025(JMS)**のプレスデーである10月29日、午前10時40分から10時55分に開催されるプレスカンファレンスで予定されています。一般公開は10月31日から11月9日まで東京ビッグサイトで開催されます。
この16年ぶりのフルモデルチェンジは、単なる新型車の投入というだけでなく、日産にとって「日産ブランドの復活と高価格帯戦略の象徴」、「起死回生」を狙う、極めて重要な意味を持つモデルです。日産は2025年4月に発表した中期経営計画「The Arc」において、2026年度までに日本市場で4車種の新型車を投入する方針を示しており、その中核を担うのが新型エルグランドなのです。
かつての栄光と低迷の時代
現行モデルは、かつて「キングオブミニバン」として高級ミニバン市場を開拓しました。初代と2代目エルグランドは、FRレイアウトを採用することで、走行性能と上質な乗り心地を両立させ、トヨタ・アルファードの登場以前は高級ミニバン市場を席巻していました。
しかし、3代目ではFFベースへの移行や、ライバルであるトヨタ・アルファード/ヴェルファイアの好調な販売により、その存在感を薄めていました。2024年の販売台数は約1,300台と、同年のアルファード(約79,374台)との差は60倍以上という厳しい状況でした。
ティザー画像が示す新時代
今回JMSで公開される新型エルグランドは、その地位を取り戻すべく、最新技術が惜しみなく投入されています。既に公開されているティザー画像では、右フロントのデイタイムランニングライトのドット部分やゴールドの装飾が「ゴージャス!」な印象を与え、SNSでは「内装が気になりすぎる」など、ファンからの期待が最高潮に達しています。
ティザー画像を詳細に分析すると、フロントのドット柄はグリル全体で使われており、ロアアンダーグリルにまで及んでいます。太い一文字タイプのテールランプもドット柄の集合のように見え、その下段中央には「NISSAN」の文字が配置されているようです。また、バックドア右下には2段の英字が確認でき、上段は「e-POWER」、下段は「e-4ORCE」と推測されます。
第2章:圧巻のパワートレイン戦略:第3世代e-POWERの核心
新型エルグランドの最大の進化ポイントは、日産独自のシリーズハイブリッドシステム「第3世代e-POWER」を初採用することです。これは、単にハイブリッド化するだけでなく、大型ミニバン向けに最適化されたシステムであり、従来の課題を大きく改善しています。
新開発!発電専用ZR15DDTeエンジンと世界初技術の結集
新型e-POWERの心臓部となるのは、新開発の**1.5L直列3気筒ターボエンジン(型式:ZR15DDTe)**です。このエンジンは、従来のガソリン車のような駆動力を担うことはなく、完全に発電専用として設計されています。
発電特化設計の革新性
- STARCコンセプトによる42%の熱効率達成:
日産が2021年に発表したSTARC(Strong Tumble & Appropriately stretched Robust ignition Channel)コンセプトを採用し、シリンダー内燃焼の安定化を実現。これにより、業界トップクラスの熱効率42%を達成しました。将来的には50%を目指す開発が進行中です。 - 世界初のコールドスプレー工法バルブシート:
日産は自動車用エンジンとして世界初となるコールドスプレー工法を用いたバルブシートを採用しました。この革新的な技術により、吸気ポートから燃焼室へ入る空気流の乱れを極限まで抑え、強いタンブル流(縦渦)を形成することが可能になりました。従来の焼結材バルブシートでは実現できなかった理想的な吸気ポート形状を実現し、燃焼効率を飛躍的に向上させています。 - 超リーンバーン技術:
吸気流に「タンブル流」を発生させる設計により、少ない燃料で効率よく燃焼を行う超リーンバーンが可能となりました。多量のEGR(排気ガス再循環)を取り入れても、安定した燃焼を維持できるのがSTARCコンセプトの強みです。 - 静粛性と低フリクション:
エンジン回転を低回転域で安定させることで、エンジン音や振動を極力抑制する仕様です。ピストンリングの張力やバルブスプリングの反力を小さく設計し、低フリクション化を徹底。さらに、潤滑油には0W-16を採用し、エンジン内部の抵抗を大幅に低減しています。
革新的な「5-in-1」モジュール
さらに、電動パワートレインの主要部品を一体化した「5-in-1」モジュールが採用されています。これは、モーター、インバーター、減速機、発電機、増速機の5つの部品を統合することで、小型化・軽量化が図られ、ミニバンに最適なレイアウトが可能となりました。
このモジュール化により、以下の技術的メリットが実現されています:
- ユニット内部の回転物(モーターや歯車)の軸構造を最適化し、回転軸の振れ公差を小さくすることで、ユニット自体の振動を抑制
- ユニット全体の高剛性化により、車体の共振点とユニットの共振点の干渉を避けることで、車体に伝わる振動特性を改善
- EVとe-POWERで主要部品の更なる共用化を進め、2026年までにエンジン車同等のコストを実現
この統合システムにより、旧型e-POWERで課題とされていた高速域の燃費や騒音が大きく改善されています。欧州で先行発売された第3世代e-POWER搭載の新型キャシュカイでは、ADAC(ドイツ自動車連盟)の独立試験において、実走行条件で最大16%、高速道路では14%もの燃費向上が確認されています。
燃費性能と出力(予測)
大型ミニバンでありながら、新型エルグランドは高い燃費性能を目指しています。
- 燃費目標:WLTCモードで18km/L前後。これは、現行エルグランドのガソリン車(約10.0km/L)から大幅な改善となります。高速道路では特に効果が顕著で、従来のe-POWERの弱点であった高速燃費が劇的に向上しています。
- モーター出力:駆動はモーターが行い、その出力は約200ps / 最大トルク約300Nm(推定)と予測されています。このスペックは、現行型の2.5L以上3.5L未満に相当し、モーター特有の即応トルクで力強い加速を実現します。
他社ハイブリッドとの比較優位性
第3世代e-POWERの真価は、シリーズ方式ハイブリッドの常識を覆した点にあります。従来、シリーズ方式は「街乗りには強いが高速では燃費が伸びにくい」という弱点がありました。しかし、新型エルグランドに搭載される第3世代e-POWERは、この弱点を完全に克服しています。
大型タービンの採用により高速走行時のエンジン回転数を約200rpm低減し、騒音の抑制にも寄与。さらに、最終減速比の変更により、効率を最大化しています。これにより、高速燃費では競合するホンダのi-MMDシステムを上回る性能を実現したと評価されています。
オイルメンテナンス距離も15,000kmから20,000kmに延長され、維持コストの面でもユーザーにメリットをもたらします。
第3章:走行性能の常識を覆す「e-4ORCE」と「運転の愉しさ」
新型エルグランドは、e-POWERと先進の電動四輪駆動技術「e-4ORCE(イーフォース)」を組み合わせることで、ミニバンの常識を覆す走行性能を実現します。
e-4ORCEの技術的優位性
e-4ORCEは、前後のモーターを電子制御で独立制御するシステムであり、その制御レスポンスは、従来のガソリン4WDとは異なり、極めて速いのが特徴です。
優れた安定性と制御性能
- 瞬時のトルク配分制御:
雪道や雨天時、カーブなど滑りやすい路面でも、モーターによる瞬時のトルク配分により車体がブレにくく、高い直進安定性と挙動制御を実現します。従来のメカニカル4WDでは実現不可能だったミリ秒単位の精密な制御が可能です。 - ピッチング/ローリング制御:
加速時にはフロントの駆動力を増やし、減速時にはリアの回生ブレーキを積極的に使うことで、車体の前後方向の揺れ(ピッチング)を抑制。コーナリング時には左右のトルク配分も最適化し、ローリング(横揺れ)も低減します。
低重心化によるハンドリング革命
床下にバッテリーを配置することで重心が低くなり、ミニバンでありながらスポーティなハンドリングが可能になります。e-4ORCEによる姿勢制御と相まって、その走行フィールはワゴンのような安定感を持つと予想されています。
特に、高級ミニバンの課題であった「高重心による不安定な挙動」を完全に解消。カーブでのロール量を抑え、レーンチェンジ時の安定性も大幅に向上しています。
快適な移動環境の実現
モーター駆動による「静かで力強い」「滑らかで快適」な走りは、高級ミニバンにふさわしい乗り味です。高速巡航時もエンジン回転が安定するため、長時間のドライブでも疲れにくい移動環境を提供します。
第3世代e-POWERでは、最も熱効率の良いエンジンの動作点を高トルク側に設定できるようになったため、エンジン回転数を一定に維持したまま走行できる車速域が高速側まで拡大。これにより、広い車速域でエンジン音が静かになり、「本当にエンジンが動いているの?」と感じるほどの静粛性を実現しています。
日産は、「エルグランドのDNAである『運転の愉しさ』を電動化によってさらにレベルアップさせる」ことを強調しており、重量級ミニバンの弱点を克服し、高級セダンに匹敵する安心感を提供することを目指しています。
第4章:威風堂々のエクステリアデザイン:ハイパーツアラーが示す未来
新型エルグランドの外観は、従来の落ち着いた高級感から一新し、よりシャープで近未来的なデザインへと刷新されます。これは、2023年のジャパンモビリティショーに出展されたEVミニバンコンセプト「ニッサン ハイパーツアラー」の意匠がベースになると見られています。
迫力あるフロントマスク
大胆な大型Vモーショングリルが採用され、力強さと存在感を演出します。横長LEDライトやシームレスラインが視覚的な幅広さを演出し、ライバルであるアルファード/ヴェルファイアに対抗するスポーティさと威厳を両立した外観です。
自発光する日産エンブレムや、ドットを並べて構成されたフロントグリルといった、近未来的なデザイン要素が鮮明に見て取れます。この「ドットマトリクス」デザインは、夜間の視認性と先進性を同時にアピールする効果があります。
ボクシーなシルエットと実用性
新型は従来モデルよりも高さがあるボックススタイルの外観に変更され、より堂々とした存在感を放ちます。
サイズスペック(予測)
- 全長:4,980mm〜5,000mm
- 全幅:1,850mm〜1,900mm
- 全高:1,850mm超(従来比で+50mm以上)
- ホイールベース:3,000mm前後
このサイズ設定により、Lクラスミニバンとしての堂々たる存在感と、室内空間の広さを確保しています。全高の増加は、特に3列目シートの居住性向上に貢献します。
ディテールの上質さとデザイン哲学
光沢感のあるメッキパーツやブラックパーツを組み合わせることでラグジュアリー感を演出。シャープな面構成と細部の丁寧な仕上げにより、高級セダン的な上質さが漂う仕上がりとなっています。
サイドマッドガードにはメッキモールが配され、上級グレードでは19インチの大径ホイールもオプション設定される見込みです。これにより、全高が1,945mmとなり、より迫力のある佇まいを実現します。
第5章:プレミアムな移動空間:インテリアと先進装備の徹底解析
新型エルグランドは、単に走りだけでなく、乗員全員に快適な「移動するリビング」を提供するため、インテリアと装備も大幅に進化します。
ラグジュアリーな室内空間とシートアレンジ
新型の室内空間は、高天井化により3列目まで快適に座れるラグジュアリーな空間となっています。乗車定員は7人乗りと8人乗りの2パターンが設定される見込みです。
キャプテンシートの進化
上級グレードの7人乗り仕様では、2列目にオットマン付きキャプテンシートが標準装備され、300mmのロングスライド機能も採用されます。マッサージ機能やベンチレーション(送風機能)も搭載される見込みで、まるで飛行機のビジネスクラスを思わせる快適さです。
リクライニングと合わせれば足を投げ出してくつろげるほどの空間が確保され、「動くラウンジ」と呼ぶにふさわしい進化を遂げています。
荷室の柔軟性と実用性
3列目シートは、セレナと同様の跳ね上げ式シートを採用予定であり、荷室スペースの自由度が大きく向上します。使用しないときは左右に跳ね上げることで、広大なラゲッジスペースが出現。大型の荷物も余裕で積載できます。
快適性装備の充実
デジタル化されたコックピットとナビゲーション
デジタル化とインフォテインメント機能も大きく進化します。
大型モニターと操作性
- 12.3インチフルデジタルメーター:運転情報を見やすく表示
- 15インチ大型タッチスクリーンディスプレイ:このクラス最大級となる大型ディスプレイを採用し、ナビ・オーディオ・車両設定を一体操作できます
連携機能の充実
- Apple CarPlay/Android Autoのワイヤレス対応:スマホとの連携もスムーズ
- クラウド経由での最新地図データアクセス:常に最新の道路情報を取得可能
- Amazon Alexa音声アシスタント機能:音声操作で各種機能をハンズフリーで操作
後席エンターテイメント
一部グレードではリアモニター(11インチ×2基)も搭載され、後席乗員へのエンターテイメント提供にも対応。長距離移動が一気にエンタメ空間へと変わります。
業界をリードする運転支援技術「プロパイロット2.0」
新型エルグランドは、最新の運転支援システム「プロパイロット2.0」を搭載します。この次世代プロパイロットは、新型エルグランドが大型ミニバンとして搭載第1号になると予想されており、その高度な自動運転技術は業界関係者からも注目されています。
プロパイロット2.0の革新性
プロパイロット2.0は、2019年にスカイラインへの搭載で世界初となる「高速道路でのハンズオフ走行」を実現した、日産が誇る先進運転支援システムです。現在はアリアにも搭載されていますが、大型ミニバンへの採用は新型エルグランドが初となる見込みです。
主な機能:
- ハンズオフ走行:
高速道路の同一車線内で、ドライバーが前方を注視している限り、ハンドルから手を離した状態での走行が可能。時間制限なく利用でき、長距離移動時のドライバーの負担を大幅に軽減します。ただし、対面通行路、トンネル内、急なカーブ路、料金所・合流地点及びその手前などでは、ハンズオフできません。 - 高度な認識能力:
- 7個の光学式カメラ(トライカム含む)5個のミリ波レーダー12個の超音波ソナーGPS(全地球測位システム)3D高精度地図データ(HDマップ)
- ナビ連動ルート走行機能:
ナビゲーションシステムで設定したルートに沿って、高速道路の本線合流から出口までの間で、追い越しや分岐、必要な車線変更を支援します。 - 車線変更支援:
前方車の速度に応じて、システムが追い越しを提案。ドライバーがハンドルに手を添えてスイッチを押すだけで、安全に車線変更を実行します。 - 準天頂衛星「みちびき」対応:
新型エルグランドでは、日本独自の測位衛星「みちびき」からのCLAS信号を受信し、より高精度な自車位置測位を実現すると予想されます。
360°セーフティアシストの充実
プロパイロット2.0に加え、7種類の先進運転支援システムから構成される「360°セーフティアシスト」も標準搭載されます。
- インテリジェントエマージェンシーブレーキ:歩行者・自転車検知機能付き
- 踏み間違い衝突防止アシスト:前後方向の誤発進を防止
- インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)
- インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)
- インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)
- 標識検知機能
- インテリジェントアラウンドビューモニター
駐車支援システムも進化
上位グレードには、スマートフォンアプリによって車外から遠隔で駐車・出庫の操作ができる「アドバンストパーク(リモート機能付き)」も搭載される可能性があります。縦列・並列に加え、斜め駐車にも対応し、狭い駐車場でもストレスなく駐車できます。
第6章:価格と展望:アルファード追撃、日産の「起死回生」戦略
新型エルグランドの発売は2026年度を予定しており、価格帯は550万円〜800万円台を想定した、利益率の高い高級モデルとなる見込みです。
価格設定の戦略とスペック予測
新型エルグランドは、e-POWER専用車として登場するため、現行モデルのベースグレード(約408万円)と比較して約140万円程度の価格上昇が見込まれています。
予想価格帯
- エントリーグレード(X):550万円前後
- 中級グレード(G):650万円〜700万円
- 上級グレード(Z Premium):750万円〜800万円
- 最上級グレード(Executive Lounge):850万円以上
この価格設定は、主なライバル車種であるトヨタ アルファードやヴェルファイアと同等、あるいはやや上回る水準です。アルファード40系は、エントリーグレード「X」が510万円、最上級グレード「Spacious Lounge」が1,480万円と、実に970万円もの価格差があります。
新型エルグランドも、幅広い価格帯をカバーすることで、多様なニーズに対応する戦略と見られます。
予想されるスペック一覧

強敵アルファード/ヴェルファイアへの挑戦
現行エルグランドは、近年販売台数が低迷しており、2024年の販売台数は約1,300台と、好調なアルファード(約79,374台/2024年)との差は歴然としています。ヴェルファイアを含めたトヨタ勢の高級ミニバンは、2024年に約10万台以上を販売しており、圧倒的な市場シェアを誇っています。
しかし、新型エルグランドは、e-POWERによる優れた燃費性能と静粛性、そしてプロパイロット2.0による高度な自動運転技術という、明確な武器を持ってライバルに挑みます。特に電動駆動の滑らかな走りやe-4ORCEによる安定性は、ガソリン車特有の乗り味とは一線を画します。
競合比較:新型エルグランドの優位点
vs トヨタ アルファード/ヴェルファイア(40系)
vs ホンダ オデッセイ(生産終了)
かつてのライバルであったホンダ オデッセイは2021年末に生産終了し、現在ホンダの高級ミニバンラインナップには空白が生じています。新型エルグランドは、この「オデッセイロス」を感じるユーザーの受け皿となる可能性も秘めています。
目標販売台数と市場戦略
日産は新型エルグランドについて、年間販売目標を約5,000台〜8,000台と設定していると見られます。これは現行モデルの4倍以上ですが、アルファードと真正面から台数で競うのではなく、高付加価値戦略による収益性の向上を重視した数字です。
ターゲットユーザー層
- ファミリー層(40〜50代の富裕層):子育て世代で、週末のレジャーや帰省時に快適な移動空間を求めるユーザー
- 法人需要:役員送迎車や商談用車両として、アルファードと並ぶ選択肢を提供
- 旧エルグランドオーナー:初代・2代目の「走り」を重視したエルグランドに惚れ込んだファンの回帰
- 環境意識の高いユーザー:電動化による環境性能を重視し、かつ実用性も妥協したくないユーザー
将来を見据えた電動化の展望
新型エルグランドは、まず第3世代e-POWER専用車となりますが、将来的にはEV化を見据えたプラットフォームを導入し、**プラグインハイブリッド(PHEV)**モデルの展開も視野に入れています。
日産の経営計画「The Arc」では、2030年度までに電動車(EV・e-POWER・PHEV)の販売比率を60%以上に引き上げる目標を掲げており、エルグランドはそのフラッグシップモデルとして重要な役割を担います。
PHEV版の可能性
2027年〜2028年頃には、e-POWERにプラグイン機能を追加した「e-POWER PHEV」の投入も噂されています。これが実現すれば、以下のようなメリットが期待できます:
- EV走行距離60〜80km:
日常の通勤や買い物はほぼ電気のみで走行可能 - 災害時の非常用電源:
V2H(Vehicle to Home)機能により、家庭への給電が可能 - 補助金の適用:
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の対象となり、購入時の負担を軽減
フルEV版の展望
さらに2029年以降には、完全なEV版「エルグランド EV」の投入も検討されているとの情報があります。日産は既に商用EV「e-NV200」の後継として「バネットEV」を市場投入しており、大型車両の電動化技術は着実に蓄積されています。
エルグランド EVが実現すれば、100kWh級の大容量バッテリーを搭載し、航続距離500km以上、0-100km/h加速5秒台という、スポーツカー並みのパフォーマンスを持つプレミアムミニバンが誕生する可能性があります。
日産復活の切り札として
新型エルグランドの成功は、日産にとって単なる新型車の投入以上の意味を持ちます。2024年度の日産は、軽自動車「サクラ」の好調な販売や、新型「キックス」の投入などで明るい兆しも見えていますが、利益率の改善と高価格帯市場での存在感強化が急務となっています。
エルグランドで獲得した高級ミニバンの技術とブランド価値は、今後の日産車全体への波及効果も期待されます。e-4ORCEの制御ノウハウ、プロパイロット2.0の大型車への適用、そして第3世代e-POWERの実証など、フラッグシップモデルならではの「技術のショーケース」としての役割も担っているのです。
第7章:業界視点から見た新型エルグランドの意義と課題
自動車業界に身を置く者として、新型エルグランドには大きな期待と同時に、いくつかの課題も見えてきます。
技術的アドバンテージの持続可能性
第3世代e-POWERとe-4ORCEの組み合わせは、現時点では確かに競合優位性があります。しかし、トヨタも2025年中に新型プリウスで披露した「第5世代ハイブリッドシステム」を、今後アルファード/ヴェルファイアにも展開する可能性があります。
また、ホンダも「i-MMD」の進化版を開発中であり、電動化競争は今後さらに激化するでしょう。日産は、この技術的リードを維持するため、継続的な改良とアップデートが求められます。
生産体制と供給安定性
現行エルグランドは、日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)で生産されていますが、新型も同工場での生産が濃厚です。ただし、半導体不足や部品供給の問題は、自動車業界全体で依然として課題となっています。
特にプロパイロット2.0に必要な高性能チップや、3D高精度地図データの継続的な更新など、ソフトウェア面でのサポート体制も重要になります。発売後の納期遅延を最小限に抑え、顧客満足度を維持できるかが成功の鍵となるでしょう。
アフターサービスと中古車市場への影響
高級ミニバンは、新車購入だけでなく、中古車市場でも人気のセグメントです。アルファード/ヴェルファイアは中古車でも高いリセールバリューを維持しており、これが新車購入の後押しにもなっています。
新型エルグランドも、同等以上のリセールバリューを確保するためには、
- 充実した保証とメンテナンスプログラム
- 下取り・買取価格の積極的なサポート
- CPO(認定中古車)制度の充実
などの施策が必要です。日産は既に「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」の一環として、包括的なアフターサポートを展開していますが、プレミアムカーとしてのブランド価値維持には、より一層の努力が求められます。
グローバル展開の可能性
現行エルグランドは日本専売モデルですが、新型は輸出も視野に入れている可能性があります。特に中国市場では、高級ミニバンの需要が急拡大しており、アルファード/ヴェルファイアも好調な販売を記録しています。
北米市場では、日産は既にクエストやNV(商用バン)で撤退した経緯がありますが、近年のミニバン需要の復活を受け、再参入の可能性もゼロではありません。新型エルグランドが国際市場で成功すれば、日産のグローバル戦略にも大きな影響を与えるでしょう。
第8章:オーナー視点で見る新型エルグランドの魅力
技術スペックだけでなく、実際にオーナーとなったときの「所有する喜び」という観点からも、新型エルグランドの魅力を考察します。
日常使いからロングドライブまで
新型エルグランドの真価は、日常の買い物から週末のロングドライブまで、あらゆるシーンで高い満足度を提供できる点にあります。
平日の使い勝手:
- e-POWERの静かでスムーズな発進は、早朝の住宅街でも近所迷惑にならない
- プロパイロット2.0の渋滞追従機能で、通勤ラッシュのストレスが激減
- 3列目シートを跳ね上げれば、大型家電や自転車も楽々積載
週末のレジャー:
- e-4ORCEの雪道性能で、冬のスキー場へも安心してアクセス
- 2列目キャプテンシートで、子供たちは移動中もリラックス
- リアモニターで映画を楽しみながら、目的地まで快適に
長距離ドライブ:
- 18km/Lの燃費性能で、給油回数が減り経済的
- ハンズオフ走行で、高速道路の長距離移動も疲労が少ない
- 静粛性の高さで、会話も音楽も楽しめる車内空間
所有する誇りとブランド価値
新型エルグランドは、単なる移動手段ではなく、「所有する誇り」を感じさせるプレミアムカーです。
初代・2代目エルグランドのオーナーたちは、「キングオブミニバン」というステータスに誇りを持っていました。新型は、その伝統を受け継ぎつつ、最新の電動化技術で進化した「ネオ・キングオブミニバン」として、新たなブランドストーリーを紡ぎます。
駐車場で隣に停まったアルファードとは異なる、「分かる人には分かる」技術的優位性。それこそが、自動車愛好家にとっての真の満足感につながるのです。
環境性能と社会的責任
2025年現在、自動車の環境性能は単なるスペックではなく、社会的責任の一部となっています。新型エルグランドのe-POWERは、大型ミニバンでありながら、
- CO2排出量を従来比で約30%削減
- 騒音レベルの低減で、都市環境への負荷も軽減
- 将来のEV化への橋渡し
という、環境面での優位性を持っています。「家族のために大きなクルマが必要だが、環境にも配慮したい」というユーザーのニーズに、明確な答えを提示しているのです。
第9章:JMS出展内容の予測と注目ポイント
ジャパンモビリティショー2025での新型エルグランドの出展内容について、業界情報を基に予測します。
プレスカンファレンスの内容予測
10月29日のプレスカンファレンスでは、以下の内容が発表される可能性が高いです:
- 新型エルグランドの車両コンセプトとデザイン哲学
- 第3世代e-POWERの技術詳細とデモンストレーション
- プロパイロット2.0の実車デモ(展示会場内または特設コース)
- 発売時期と価格帯の概要
- 限定車や特別仕様車の先行予告
日産の内田誠社長自らがプレゼンテーションを行い、「日産復活の象徴」としてのエルグランドの重要性を強調すると予想されます。
展示ブースの見どころ
一般公開日(10月31日〜11月9日)の展示ブースでは、以下の体験が可能になると予想されます:
実車展示:
- 複数のグレード・カラーバリエーションの展示
- カットモデルによるe-POWERシステムの内部構造公開
- インテリアの詳細確認(全グレードの内装比較)
体験コンテンツ:
- VR/ARを活用したプロパイロット2.0の疑似体験
- e-4ORCEの制御を体験できるシミュレーター
- 3D高精度地図データの可視化デモ
試乗予約:
- JMS終了後の試乗会予約受付(全国の日産販売店での試乗会)
- 先行予約特典の案内
同時発表される可能性のある関連情報
新型エルグランドと同時に、以下の情報も発表される可能性があります:
- 限定車「Autech」バージョン:
日産のカスタムブランド「Autech」による専用エアロパーツやインテリア加飾を施した特別仕様車 - 「NISMO」パーツの展開:
スポーツブランド「NISMO」による、サスペンション強化キットやエアロパーツの純正オプション展開 - コネクテッドサービス:
専用スマホアプリによる遠隔操作(エアコンのプレ空調、ドアロック確認など)や、車両情報のクラウド管理 - 充電インフラとの連携:
将来のPHEV/EV化を見据えた、日産独自の充電ネットワークサービス
終章:新時代を切り拓く「キング・オブ・ミニバン」の帰還
16年ぶりのフルモデルチェンジを果たす新型エルグランド。それは単なる新型車の登場ではなく、日産が「技術の日産」としての誇りを取り戻し、高級ミニバン市場で再び覇権を握るための、まさに「起死回生の一手」です。
第3世代e-POWERによる圧倒的な燃費性能と静粛性、e-4ORCEがもたらす走行安定性、そしてプロパイロット2.0による高度な自動運転支援。これらの技術は、単に数値上のスペックではなく、オーナーの日常に確かな価値をもたらします。
朝の通勤で感じる静かで力強い加速感、週末の家族旅行で実感する疲れにくいロングドライブ、雪道や雨天時の安心感。新型エルグランドは、クルマと過ごすすべての時間を、より豊かで快適なものに変える力を持っています。
業界人として伝えたいこと
自動車業界で働く者として、新型エルグランドには特別な思い入れがあります。それは、このクルマが日本の自動車産業の「技術力」と「ものづくりへの情熱」を体現しているからです。
e-POWERの開発では、何百時間にも及ぶエンジンベンチテスト、何千kmもの実走行テスト、そして無数のシミュレーションが繰り返されました。e-4ORCEの制御プログラムは、北海道の雪道から箱根のワインディングロードまで、あらゆる路面条件でテストされています。
プロパイロット2.0に至っては、3D高精度地図の作成だけでも膨大な時間とコストが投じられており、そのデータは毎月更新され続けています。
これらの技術開発の背景には、「お客様に最高の移動体験を提供したい」という、エンジニアたちの純粋な情熱があります。新型エルグランドは、そうした情熱の結晶なのです。
JMSで確認すべきポイント
ジャパンモビリティショー2025で新型エルグランドをご覧になる際は、ぜひ以下のポイントに注目してください:
- インテリアの質感:写真では伝わりにくい、素材の手触りや色合いの上質さ
- シートの座り心地:特に2列目キャプテンシートの包まれ感とサポート性
- ドアの開閉音:高級車としての静粛性は、ドアを閉めた瞬間に分かります
- インフォテインメントシステムの操作性:実際に触れて、レスポンスの速さを確認
- スタッフへの質問:気になる点は遠慮なく質問を。展示会場のスタッフは詳しい技術情報を持っています
購入を検討される方へ
新型エルグランドは、発売と同時に人気が集中し、納期が延びる可能性が高いです。特に上級グレードや人気カラーは、早期に予約が埋まることが予想されます。
JMSで実車を確認後、早めに販売店で予約することをお勧めします。多くの販売店では、先行予約特典として、
- 純正アクセサリーの割引
- メンテナンスパックの優遇
- 特別金利でのローン提供
などを用意しています。
また、現在エルグランドやアルファード、他のミニバンをお持ちの方は、下取り査定のタイミングも重要です。新型発売前の方が、現行車の下取り価格が高い傾向にあるため、早めの商談がお得になる可能性があります。
最後に:モビリティの未来を体験しよう
新型エルグランドは、単なる「移動手段」ではなく、「移動する喜び」「家族との時間を豊かにする空間」そして「所有する誇り」をすべて満たす、真のプレミアムモビリティです。
ジャパンモビリティショー2025(10月29日プレス発表、10月31日〜11月9日一般公開、会場:東京ビッグサイト)で、その圧倒的な進化を、ぜひご自身の目で、手で、そして心で確かめてください。
「キング・オブ・ミニバン」の帰還を、会場でお待ちしています。
【参考情報】
- 日産自動車公式サイト:https://www.nissan.co.jp/
- ジャパンモビリティショー2025公式サイト:https://www.japan-mobility-show.com/
- 新型エルグランド先行情報ページ(日産):随時更新予定
【免責事項】
本記事の内容は、2025年10月時点での公開情報および業界関係者からの情報を基に作成されています。最終的な仕様、価格、発売時期などは、メーカーの正式発表をご確認ください。
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