はじめに:16年ぶりの自民党国交相が意味すること
2025年10月、高市内閣が発足し、国土交通大臣に金子恭之氏が就任しました。実に16年ぶりの自民党出身国交相の誕生です。記者会見で明らかになった高市総理からの指示内容を見ると、私たち自動車ディーラーの現場にも大きな影響が予想される政策転換の兆しが見えてきました。

現場で日々お客様と接している立場から、この政権交代が自動車業界、そして私たちディーラーのビジネスにどのような変化をもたらすのか、詳しく解説していきます。
高市総理から金子国交相への5つの重要指示
記者会見で金子大臣が明らかにした、高市総理からの個別指示は以下の通りです:
- 災害に強い地域づくり・インフラ老朽化対策の加速化(防災・減災、国土強靱化)
- 地方を含めた交通・物流インフラ整備
- 観光振興を通じた地域活性化とオーバーツーリズム対策
- インフラシステムの海外展開
- 2027年国際園芸博覧会に向けた準備・運営
一見すると自動車業界と直接関係ないように見えるかもしれませんが、実はこれらすべてが私たちディーラーのビジネス環境を大きく左右する重要な方針なのです。
記者会見で金子大臣が明らかにした、高市総理からの個別指示は以下の通りです:
- 災害に強い地域づくり・インフラ老朽化対策の加速化(防災・減災、国土強靱化)
- 地方を含めた交通・物流インフラ整備
- 観光振興を通じた地域活性化とオーバーツーリズム対策
- インフラシステムの海外展開
- 2027年国際園芸博覧会に向けた準備・運営
一見すると自動車業界と直接関係ないように見えるかもしれませんが、実はこれらすべてが私たちディーラーのビジネス環境を大きく左右する重要な方針なのです。
【方針①】災害に強いインフラ整備が自動車販売に与える影響
道路インフラ整備の加速が意味すること
金子大臣は熊本地震や令和2年7月豪雨の経験から、「事前防災にしっかり取り組むことが必要」と強調しました。これは道路や橋梁の耐震化、老朽化対策が加速することを意味します。
ディーラーへの影響:
- 商用車・トラック需要の増加:建設業界の活況により、工事車両や資材運搬用トラックの需要が高まります
- 4WD・SUV人気の継続:災害に強い車両へのニーズが定着化
- メンテナンスパック販売のチャンス:悪路走行機会の増加により、定期点検の重要性を訴求しやすい環境に
特に地方のディーラーにとっては、インフラ整備事業者との法人営業を強化する絶好の機会です。建設会社や土木業者向けに、作業車両のリース提案や一括購入プランを用意しておくことが重要になります。
EVインフラ整備との連動可能性
国土強靱化と同時に進むのが、次世代インフラの整備です。道路改修時にEV充電ステーションの設置が加速する可能性があります。
これは私たちディーラーにとって:
- EV販売時の「充電不安」解消の追い風
- 充電インフラ提携ビジネスの機会拡大
- サービスエリアでの充電待ち時間を活用した新たな顧客接点の創出
【方針②】地方の交通・物流インフラ整備が生む商機
JR北海道支援に見る「地方交通維持」の本気度
会見では、JR北海道への支援継続についても言及がありました。これは地方の公共交通維持に国が本腰を入れるというメッセージです。
自動車業界への影響:
一見、鉄道強化は自動車にマイナスに見えますが、実は逆です。
- ラストワンマイル需要の増加:駅から自宅までの移動手段として軽自動車やコンパクトカーの需要増
- 観光レンタカー需要の拡大:鉄道で地方に来た観光客向けのレンタカービジネス
- パークアンドライド施設整備:駅前駐車場の充実により、自家用車+公共交通の組み合わせ利用が増加
実際、北海道の一部ディーラーでは、すでに駅近くにサテライト店舗を設置し、公共交通利用者向けの試乗・商談サービスを展開し始めています。
物流2024年問題への対応加速
「物流インフラ整備」という言葉には、トラックドライバー不足への対応も含まれます。
商用車販売への影響:
- 高効率トラックへの買い替え需要:燃費性能や積載効率の高い車両への更新
- 中型免許対応車両の需要増:ドライバー確保のため、普通免許で運転できる車両へのシフト
- 運行管理システム搭載車両:デジタコ・ドラレコ標準装備モデルの人気上昇
私の店舗でも、物流業者からの相談が前年比30%増となっており、「ドライバー1人当たりの生産性を上げる車両」への関心が非常に高まっています。
【方針③】観光振興とオーバーツーリズム対策の両立が生む新市場
地方観光活性化とレンタカー需要
金子大臣は「観光振興を通じた地域活性化」を重点政策に掲げました。これはインバウンド観光の地方分散を意味します。
ディーラーへの新ビジネスチャンス:
- レンタカー・カーシェア事業への参入:地方観光地での需要増に対応
- 多言語対応カーナビ搭載車両:外国人観光客向けサービスの差別化
- 観光施設との提携営業:ホテルや観光協会との連携による送客
特に注目すべきは、「オーバーツーリズム対策」との両立です。これは京都や鎌倉などの観光地での自家用車流入規制強化を意味する可能性があります。
規制強化がもたらす新たな需要
観光地での車両規制は、一見マイナスですが:
- 小型EV・超小型モビリティの需要:規制対象外の環境配慮車両へのシフト
- シェアリングサービス用車両の需要:観光地内での短距離移動用
- 予約制入域システム対応車両:ETC2.0など高度な通信機能搭載車の価値向上
実際、一部の観光地では既に**「環境配慮車両のみ入域可能」というルール**が試験導入されており、私たちディーラーはこうした情報を先取りして、お客様に提案していく必要があります。
【方針④】インフラシステム海外展開と日本車の未来
「パッケージ輸出」が日本車に有利な理由
金子大臣は「インフラシステムの海外展開」にも言及しました。これは道路、橋、港湾などを日本の技術でパッケージ輸出する戦略です。
日本車業界への追い風:
インフラ輸出と自動車輸出は密接に関連します:
- 右側通行国への輸出拡大:日本式交通システム導入国では日本車が標準に
- アフターサービス網の同時展開:インフラ整備と共にディーラー網も構築
- 日本車の「信頼性」が制度設計に組み込まれる:安全基準や環境基準が日本車仕様に
過去にも、ベトナムやインドネシアでの高速道路建設に合わせて、日本車のシェアが拡大した実例があります。
国内ディーラーへの間接的影響
「海外展開なんて自分には関係ない」と思うかもしれませんが:
- 海外での成功事例が国内営業の説得材料に:「世界で選ばれる日本車」の訴求力向上
- 海外赴任者向け車両販売:インフラ事業に携わる日本人技術者への営業機会
- リセールバリューの向上:海外での日本車人気が国内中古車価格を下支え
グローバル市場での日本車の地位向上は、確実に私たち国内ディーラーのビジネス環境を改善します。
【方針⑤】2027年園芸博と大型イベント対応車両需要
国際イベント開催が生み出す特需
2027年の国際園芸博覧会開催に向けた準備も、金子大臣の重要任務です。大型国際イベントは自動車業界にとって大きなビジネスチャンスです。
予想される需要:
- シャトルバス・送迎車両:環境配慮型の大型車両需要
- VIP送迎用高級車:国賓・要人向けショーファーカー
- スタッフ移動用車両:イベント運営に必要な業務用車両
- レンタカー・カーシェア:来場者向け移動手段
過去の大阪万博(1970年)、愛知万博(2005年)でも、イベント前後に自動車販売が大きく伸びた実績があります。
イベント後のレガシー需要も見逃せない
さらに重要なのはイベント終了後です:
- 使用済み車両の中古車市場流入:程度の良い業務用車両の供給
- イベント用インフラの民間転用:駐車場施設などの活用
- 次のイベントへの期待感:2030年代の大型イベント誘致への布石
私たちディーラーは、2027年に向けて法人営業を強化し、イベント関連需要を確実に取り込む準備を今から始めるべきです。
補足:外国人土地取得規制強化の影響
会見では、自民党と維新の合意により「外国人及び外国による土地取得規制を強化する法案」についても触れられました。
自動車業界への間接的影響:
- 外資系自動車メーカーの工場・施設設置への影響:規制対象地域での事業展開制約
- 中古車輸出ビジネスへの影響:外国企業の国内拠点設置が困難になる可能性
- リース・レンタカー事業への影響:外資系企業の参入障壁上昇
一方で、日本メーカー・日本ディーラーにとっては競争環境の安定化というメリットもあります。
まとめ:ディーラーが今すぐ取るべき3つのアクション
高市新政権・金子国交相体制での政策方針を踏まえ、私たち自動車ディーラーが今すぐ始めるべきことは:
法人営業の強化体制構築
- 建設・土木業者へのアプローチ
- 物流業者の課題ヒアリング
- 観光関連事業者との提携検討
次世代車両の提案力向上
- EV充電インフラ情報の収集
- 環境配慮車両のラインナップ強化
- 小型モビリティの取り扱い検討
地域密着型サービスの差別化
- 地方交通課題への具体的ソリューション提案
- 災害時対応サービスの充実
- 公共交通連携プランの開発
おわりに:変化をチャンスに変える
16年ぶりの自民党国交相就任、そして高市新政権の始動。一見すると政治の話に思えますが、私たち自動車ディーラーの日々の営業活動に直結する重要な変化が始まっています。
インフラ整備の加速、物流改革、観光振興、国際展開──これらすべてが、自動車需要を生み出し、私たちのビジネスチャンスを広げる要因です。
変化を恐れるのではなく、変化を先読みし、お客様に新しい価値を提案できるディーラーが、これからの時代を勝ち抜いていけるはずです。
現場の最前線にいる私たちだからこそ、政策の方向性を理解し、いち早く行動に移すことができます。この記事が、皆さんの営業戦略を考えるヒントになれば幸いです。
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【この記事を書いた人】 現役自動車ディーラー勤務。営業他実務経験45年。地方都市での販売現場から、業界の最新動向と実践的な営業ノウハウを発信中。
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