はじめに:日本のクラウン誕生70周年を飾る、シリーズ完成の第四弾
トヨタは、クラウン誕生70周年を記念した特別仕様車として、新型クラウンエステートに**「クラウンエステート RS”THE 70th”」および「クラウンエステート Z”THE 70th”」**を設定し、2025年11月20日に発売しました。
この特別仕様車は、1955年の初代クラウン誕生から70周年を迎える記念すべきモデルであり、先に発表されたクラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、クラウンセダンに続く第4弾として登場しました。これにより、新世代クラウンシリーズの記念モデルラインアップがシリーズとして完成したことになります。
価格帯は、6,420,000円から8,200,000円と設定されています。この「THE 70th」は、クラウンの「革新と挑戦」のDNAを宿す16代目クラウンシリーズの中で、70年の歴史を象徴する記念モデルとしての特別な位置づけを担っています。

クラウンエステートの系譜:18年ぶりの復活を遂げた伝統
クラウンエステートという名称は、実は今回が二度目の登場です。初代クラウンエステートは1999年12月に11代目クラウンをベースに誕生し、2007年6月まで生産されました。歴代クラウンには2代目から11代目まで「カスタム」や「ステーションワゴン」としてワゴンボディが継続的に設定されており、その最終モデルが「エステート」と改名されたのです。
初代エステートは、直列6気筒エンジンを搭載した堂々たるFRレイアウトのステーションワゴンで、特にスポーティグレード「アスリートV」には最高出力280psを発生する2.5Lターボが搭載され、高級ワゴンとしての地位を確立していました。しかし、ステーションワゴン需要の減少により2007年に生産終了となり、18年間にわたって空白期間が続いていたのです。
そして2025年3月、新世代クラウンシリーズの第4弾として現行型クラウンエステートが復活。今回はワゴンとSUVを融合させた新しいデザインコンセプトで、FFベースの4WDハイブリッドシステムを採用するという、過去のエステートとは全く異なる進化を遂げています。
「THE 70th」の存在意義:特別感と格式が宿る専用デザイン
新型クラウンエステート「THE 70th」は、「世界に誇る日本のクラウン」を表現した専用の仕様が随所に施されており、所有する歓びを最大限に高めます。
圧巻のエクステリア:日本の風景との調和
外装デザインの核となるのは、**「日本の風景との調和」**を表現した特別なバイトーン(2トーン)のボディカラーです。
特別設定バイトーンカラー(メーカーオプション):

これらのバイトーンカラーは、本特別仕様車のみのメーカーオプションとして設定されています。また、バイトーンボディカラーを選択した場合、ドアベルトモールディングとルーフレールはブラックに統一されます。
足元には、上質な走りに調和するマットブラック塗装の21インチアルミホイール(235/45R21タイヤ&21×8.5Jアルミホイール)が標準装備されます。ダーク系加飾を施すことで、上質感と引き締まった印象が両立され、特別なスタイリングを生み出しています。
さらに、さらなる特別感を演出するアイテムとして、「THE 70th」ロゴをあしらった専用のサイドデカールがメーカーオプションとして用意されています。
重厚で上質なインテリア:特別内装色ブラックラスター
室内空間は、70周年記念モデルらしい重厚で上質な雰囲気を演出するために、特別内装色として**「ブラックラスター」**が設定されました。

この静かな輝きを放つ空間には、クラウンの伝統の証を刻んだ専用アイテムが多数配置されています。
「THE 70th」ロゴ入りアイテム:
RS “THE 70th”とZ “THE 70th”の徹底比較と価格詳細

特別仕様車「THE 70th」は、ハイブリッドモデルの「Z」とプラグインハイブリッド(PHEV)モデルの「RS」をベースに設定されています。ベースグレードからの価格上昇は、ハイブリッド車で+7万円、PHEV車で+10万円となっており、専用装備の価値を考えるとプレミアムな価格設定と言えます。

RS “THE 70th”専用のスポーティアイテム
最上級の「RS “THE 70th”」には、PHEVモデルとしての高い走行性能をさらに引き出すための専用スポーティアイテムが追加されています。

- スポーツシート(スポーツレザー[本革]/レッドステッチ付):緻密に調整されたホールド性能で、クルマとの一体感を高めます。
- 3本スポークステアリングホイール:ディンプル加工が施された本革巻きで、ライトグレーのかがり縫いステッチが入ります。
- アルミペダル(アクセル・ブレーキ):ドライビングへの情熱を呼び覚ますディティールです。
クラウンエステートの土台となる革新的メカニズムと走行性能
「THE 70th」を支えるクラウンエステートの基本設計も、新世代クラウンシリーズの「革新と挑戦」のコンセプトに基づいており、非常に高い水準にあります。
パワートレイン:全車4WDと強化された高出力ユニット
クラウンエステートの駆動方式は、全車ハイブリッドの4WD「E-Four」とされています。
ハイブリッド(HV)モデル: 直列4気筒2.5Lハイブリッドシステムを搭載。
特に注目すべきは、フロントモーター出力が「クラウンクロスオーバー」や「クラウンスポーツ」から約5割向上し、182ps/27.5kgm(ベースは120ps/20.6kgm)となっている点です。これにより、エステート特有の多量の荷物を積んだ際でも、ストレスなく加速できる余裕のある走りを実現しています。
プラグインハイブリッド(PHEV)モデル: 直列4気筒2.5Lと電気モーター×2を組み合わせます。
EV航続距離は89kmが確保されており、日常の走行では余裕のあるEV走行が可能です。
E-Fourシステムは前後駆動力を100:0から20:80の間で可変させ、高い走行性能を獲得しています。
ボディサイズと走行安定性:ワイド&ローな上級ステーションワゴン
新型クラウンエステートは、FFベースの最新プラットフォームを採用し、キャビンを前側に拡大することで広い室内空間を確保しています。

全幅と全高が拡大されたことで、室内空間を重視したリアデザインとなり、同じ新世代クラウンシリーズのSUV「スポーツ」とは差別化されています。
車体には、軽量かつバランスの取れたTNGAプラットフォームによる高剛性ボディを採用。さらに、後輪操舵システム**「ダイナミックリアステアリング(DRS)」**が採用されており、この技術によって、拡大されたボディサイズにもかかわらず、取り回しの良さと高い走行安定性が確保されています。
DRS(ダイナミックリアステアリング)の先進技術
DRSは20年以上前から存在する技術ですが、新型クラウンシリーズでの採用により完成度が飛躍的に向上しています。ハンドル操作と車速に応じて後輪が切れる角度を制御することで、低速走行時の取り回し性、中速走行時の操舵応答性、高速走行時の安定性向上に寄与します。
具体的には、低速域では後輪が前輪と逆相に切れることで最小回転半径が5.5mに抑えられ、駐車やUターンが容易になります。高速域では後輪が前輪と同相に切れることで、レーンチェンジ時の安定性が大幅に向上。従来のDRSにあった挙動の不自然さが完全に解消されており、どこで作動しているのか意識させないほど自然な制御が実現されています。
圧倒的な積載能力と新機構
エステートの最大の魅力の一つが、その積載能力です。ワゴンスタイルのボディにより、ラゲッジスペースは通常時で570L、リヤシート格納時には1470Lという広大な空間を確保しています。
また、トヨタとして初めて、後席折りたたみ時に長さ2mの完全フルフラットスペースを生み出す新機構**「ラゲージルーム拡張ボード」**を採用しました。これにより、レジャーやアウトドアでの活用が格段に高まっています。
多くの車両では後席を倒しても段差や角度が残る「ほぼフルフラット」ですが、クラウンエステートは前席との隙間を埋めるボードにより、真の意味での完全フルフラット空間を実現。車中泊時にマットレスを加工する必要もなく、リアシートを倒すだけで快適な就寝スペースが完成します。
このフルフラットスペースでの過ごし方をより魅力的にするため、引き出し式のデッキチェアやデッキテーブルといったアイテムも採用されています。
さらに、アクセサリーコンセント(AC100V・1500W/非常時給電システム付)が標準装備されており、キャンプなどのアウトドアシーンで炊飯器やホットプレート、ドライヤー、テレビなど様々な家電製品が使用可能です。
環境性能:20km/L超えを実現
ボディサイズが拡大されたにもかかわらず、燃費性能は高い水準を維持しています。
- 2.5Lハイブリッド: 20.3km/L(WLTCモード値)
- 2.5L PHEV: 20.1km/L(ハイブリッドモード時/WLTCモード値)
最新の安全装備と先進的なコックピット技術
新型クラウンエステートには、最先端の安全装備とコネクティッド技術が惜しみなく投入されています。
高度運転支援技術「トヨタチームメイト」
最新の「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」に加え、高度運転支援技術「トヨタチームメイト」が搭載されています。
アドバンストドライブ(渋滞時支援):
0~40km/hの渋滞時において、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシスト作動中に、一定条件を満たすとシステムが作動します。自動追従走行、3分間の停止機能、ステアリングのハンズオフドライブといった高度な支援が可能となっています。
アドバンストパーク(リモート機能付):
スマートフォンを使用しての駐車支援に対応しており、従来のバック駐車に加え、前向き駐車も可能となっています。
プロアクティブドライビングアシスト機能(PDA):
従来の安全システムよりも早く歩行者の横断などの危険性を検知し、事前にステアリングやブレーキにより運転を支援する機能です。
最新のデジタルコックピット
ドライバーの前には、インフォテインメント用の大型12.3インチディスプレイオーディオとヘッドアップディスプレイに加え、新たに12.3インチデジタルメーターが採用されました。これにより、ナビや車両情報、多彩な情報を表示でき、各種コネクティッドサービスとの連携も強化されています。
また、音声認識スイッチにより、運転中にステアリングから手を離すことなく、ドライビングポジションメモリー、パワーウインドゥ、ワイパーなどを操作できるインフォテインメントシステムを搭載しています。
オーディオには、10スピーカー/8chアンプを備えるトヨタプレミアムサウンドシステムが設定されています。
販売店オプションとして、「ナノイーX」搭載のクリーンシーリングライトも新たに設定され、通常グレードにも装着可能となっています。
購入後も進化し続ける:UPGRADE SELECTIONS by KINTO FACTORY
2025年12月初旬から、購入後のクラウンエステートをアップグレードできるサービス「UPGRADE SELECTIONS by KINTO FACTORY」が開始される予定です。
提供されるアップグレードアイテム:
このサービスにより、既にクラウンエステートを所有しているオーナーも後から70周年記念仕様にアップグレードしたり、自分好みのカスタマイズを楽しむことが可能になります。
まとめ:記念モデルが約束する、特別なライフスタイル
1955年の初代誕生以来、「いつかはクラウン」というキャッチコピーに象徴されるように、クラウンは「日本の高級車」として人々の憧れを集めてきました。
この新型クラウンエステート「THE 70th」は、クラウンの歴史を受け継ぐワゴン/エステートの系譜を再解釈した上で、バイトーンの特別な外装色、マットブラックの21インチアルミホイール、そして重厚なブラックラスター内装と70周年記念ロゴアイテムを装備することで、その**「特別な質感」**を際立たせています。
価格は通常グレードに対してわずかなプレミアム設定でありながら、高度な安全技術、高出力化された4WDハイブリッドシステム、そしてトヨタ初のラゲージルーム拡張ボードによる高い利便性を兼ね備えており、伝統と革新、そして自由なライフスタイルを結びつける、まさに70周年にふさわしいシリーズの完成形です。
18年の空白を経て復活したエステートの名は、かつての直列6気筒FRレイアウトから、最新のFFベース4WDハイブリッドシステムへと進化を遂げました。しかし、その本質である「クラウンの格式と実用性の融合」という精神は、脈々と受け継がれています。
この新型クラウンエステート「THE 70th」は、単なる移動手段ではなく、歴史を誇り、最先端技術を享受し、そして週末のアウトドアまでを格別な時間に変えることができる、究極の上級クロスオーバーワゴンとして、強く所有欲を刺激する一台となるでしょう。
【新型クラウンエステート誕生70周年記念特別仕様車の魅力をアナログで理解する】
新型クラウンエステート「THE 70th」は、まるで老舗テーラーが70周年を記念して仕立てた、伝統的なカッティングに最新素材を用いた限定スーツのようなものです。そのスーツは、クラウンというブランドの格式と歴史(伝統的なカッティング)を纏いつつも、PHEVや高度な安全装備(最新素材)によって現代のニーズに完璧に対応しています。さらに、マットブラックのホイールや専用ロゴ(限定の裏地やボタン)が施されることで、そのスーツを着るオーナーだけが特別なプライドを感じられるのです。これは、過去の栄光を再解釈し、未来に向けた挑戦を表明する、特別な存在感を放つ記念碑的なモデルと言えるでしょう。
ESTATE紹介過去記事 ご参照ください!




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