日産自動車は2025年12月22日、フラッグシップ電気自動車(EV)SUVである「アリア」のマイナーチェンジモデルを正式に発表しました。今回の改良は、単なる年次改良の枠を超え、デザイン、デジタル体験、そして実用性のすべてにおいて「次世代EVの新基準」を打ち立てる内容となっています。
この記事では、業界関係者の視点から、新型アリアがなぜ「今、迷わず買うべき一台」なのか、競合車種との比較も交えながら、その全貌を徹底解説します。
【2026年発売】注目のスケジュールとグレード構成

新型アリアは、標準モデルとハイパフォーマンスモデルの「NISMO」で発売日が異なります。
- 標準モデル発売日:2026年2月20日
- アリアNISMO発売日:2026年3月19日
すでに2025年末から先行予約や事前商談が本格化しており、補助金や決算期のタイミングを考慮すると、早めの検討が推奨されるスケジュール感となっています。ジャパンモビリティショー2025(2025年10月29日~11月9日)での世界初公開を経て、市場の反応を確認した上での投入という、日産の慎重かつ戦略的なアプローチが伺えます。
グレードラインナップ
バッテリー容量は、実用的な**66kWh(B6)と、長距離移動に最適な91kWh(B9)**の2本立てを継続しています。
- B6(2WD / e-4ORCE)
- B9(2WD / e-4ORCE)
- アリアNISMO(B6 / B9)
なお、今回の改良に伴い「B9 e-4ORCE プレミア」グレードは廃止されました。これにより、ラインナップがより明快になり、顧客が選びやすくなっています。
エクステリア:洗練を極めた「新しい日産の顔」

新型アリアの外観は、「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」というコンセプトをさらに深化させました。最も注目すべきは、2025年10月8日に発表された新世代「リーフ」と共通の新デザインコンセプトを採用している点です。これは日産のEV全体に統一感を持たせ、「日産のEVと一目でわかる」ブランドアイデンティティを確立する戦略の一環です。
主な変更点
- フロントデザインの刷新:
従来の黒いVモーション風パネルを廃止し、グリル部分をボディ同色化しました。これにより、よりクリーンでシームレスな、次世代EVらしい存在感を放っています。長年日産のアイデンティティとして採用されてきたVモーショングリルですが、EV時代の到来とともに、その役割を終えつつあります。 - 外側配置のVモーション:
象徴的なVモーションを車両の外側に配置し、シンプルながらも力強いワイド感を演出しています。従来のヘッドライト内側から伸びる細めのVモーションから、ライトの外縁から流れるワイドなデジタルVモーションに進化し、ドシッとした安定感と先進性を両立させたデザインとなっています。 - 新デザイン20インチホイール:
アルミと樹脂のコンビネーション構造を採用し、繊細なデザインが車両全体の洗練さを際立たせます。NISMO仕様では、軽量で高剛性なエンケイ製20インチアルミホイールを装着します。 - 新色「翡翠乃光(ヒスイノヒカリ)」:
オーロラの光に着想を得た「プラズマグリーン」と「ミッドナイトブラック」の2トーンカラーが新設定されました。EVならではの静寂さと未来感を象徴するカラーリングです。インテリアカラーにも新色「ホワイト/グリーン」が追加されています。
デジタル変革:Google搭載で「スマホの使い勝手」を車内に

今回のマイナーチェンジで最もインパクトが大きい進化の一つが、Google搭載NissanConnectインフォテインメントシステムの採用です。これは2025年9月にマイナーチェンジした「エクストレイル」や、2026年度発売予定の新型「エルグランド」にも採用される最新システムで、日産のデジタル戦略の核となる技術です。
Google 3大機能の統合

- Googleマップ:
スマホと同期し、お気に入りの場所や保存したルートをそのまま表示。リアルタイム交通情報も反映されます。 - Googleアシスタント:
音声だけでナビ設定や音楽再生をハンズフリー操作。「OK Google」と呼びかけるだけで、様々な操作が可能になります。 - Google Play:
音楽ストリーミングやポッドキャストなど、多彩なアプリをダウンロード可能。スマートフォン感覚で使える操作性が魅力です。
EV専用機能の充実
- EV専用のルート提案:
バッテリー残量を考慮し、必要な充電スポットを予測した最適なルートを自動で提案します。これは長距離ドライブにおける「航続距離不安」を大幅に軽減する機能です。 - ドアtoドアナビ:
乗車前にスマホで設定したルートを車に共有でき、乗り込んですぐに出発できるスマートな体験を提供します。目的地をスマホからクルマへ共有する機能など、日常の利便性が大幅に向上しています。
インテリアのデザイン
アリアの内装は、12.3インチのフルデジタル液晶メーターに連続するタブレットのように操作できる12.3インチのセンターディスプレイが特徴です。センターディスプレイを右へスワイプすれば、その画面の内容がメーターに反映されるといった先進感ある使い勝手も魅力的。ナビゲーションを見る視線移動量も最小限に抑えられており、安全性も高められています。
実用性の極致:V2L機能と日本専用チューニング

「走る蓄電池」としての価値が大幅に高まりました。
V2L(車外給電)機能の追加

AC外部給電コネクターを使用することで、最大1,500Wの電力供給が可能になりました。キャンプでの調理器具の使用はもちろん、災害時の非常用電源としても活用でき、ドアロック中も給電を継続できる安心設計です。
従来からV2H(家庭への給電)機能は備わっていましたが、新型では車外機器への電力供給が可能となります。キャンプやレジャー、災害時など、電源の確保が難しい環境でもアリアを電源として活用でき、「走る蓄電池」としての価値が一気に高まるアップデートです。
日本市場専用サスペンション
今回のマイナーチェンジでは、日本の路面環境に合わせ、乗り心地を重視したセッティングに変更されました。路面からの入力によるクルマの動きを減らし、乗員が感じる揺れを軽減することで、長時間のドライブでも快適な移動体験を提供します。
初期モデルでは乗り心地に変なボコつきがあったという指摘もありましたが、新型のサスペンションはいたってしなやかで、静粛かつエレガントにすいすい走ることが期待されます。日本の道路環境において快適な乗り心地を実現するため、サスペンションのチューニングを実施しており、国産EVならではの強みと言えるでしょう。
インテリジェント ディスタンスコントロール
一般道での加減速をサポートし、先行車との車間距離を一定に保つ新機能により、ドライバーの負担を最小限に抑えます。すでに高速道路でのハンズオフ走行にも対応可能な「プロパイロット2.0」を搭載していますが、一般道での使い勝手もさらに向上しています。
走行性能とバッテリー:長距離も安心のスペック

アリアの心臓部であるバッテリーと駆動システムも、確実なブラッシュアップを遂げています。
航続距離
B9(2WD)モデルでは**最大640km(WLTCモード)**を実現。東京〜大阪間(約500km)を無充電でカバーできる実力を持っています。競合するトヨタbZ4Xの559~567km、テスラモデルYロングレンジの635kmと比較しても、トップクラスの航続性能を誇ります。
ナビリンクバッテリーコンディショニング
ナビで急速充電スポットを目的地に設定すると、到着までにバッテリー温度を最適化し、充電速度を向上させます。これはバッテリーの温調制御付きのナビ連動エネルギーマネジメント機能で、長距離移動時の充電時間を短縮する画期的なシステムです。
e-4ORCE(4WDモデル)
前後2つのモーターを独立制御し、雪道からワインディングまで圧倒的な安定感を提供します。B9 e-4ORCEの0-100km/h加速は5.1秒と、スポーツカーに匹敵する加速性能を誇ります。
e-4ORCEは路面状況や走行状況に応じてタイヤのグリップを最大化し、モータートルクを自動的に前後輪に最適配分します。減速時には、前後モーターによる回生ブレーキと4輪の油圧ブレーキを組み合わせて協調制御し、フラットな車体姿勢を保ちつつ、スムースで安定したハンドリングを実現します。
価格表:最新技術を反映した価値ある設定
改良により全グレード一律で85,800円のアップとなりましたが、追加された装備内容を考えればコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
| グレード | バッテリー | 駆動方式 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| B6 | 66kWh | 2WD | 6,675,900円 |
| B6 e-4ORCE | 66kWh | 4WD | 7,280,900円 |
| B9 | 91kWh | 2WD | 7,467,900円 |
| B9 e-4ORCE | 91kWh | 4WD | 8,072,900円 |
※アリアNISMOの価格は後日発表予定です。参考までに、現行NISMOモデルはB6 e-4ORCEが8,429,300円、B9 e-4ORCEが9,441,300円となっています。
競合車種との価格比較
- トヨタbZ4X:500万~545万円程度
- テスラモデルY:540万9091~621万7273円
- 日産アリア:667万5900~807万2900円
アリアは競合よりもやや高価格帯に位置していますが、上質な内装、日産の先進運転支援技術「プロパイロット2.0」、そして今回追加されたGoogle搭載システムとV2L機能により、十分な差別化が図られています。
また、EV購入時の補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の活用により、実質的な購入価格はさらに抑えられる可能性があります。2026年度の補助金制度の詳細は未発表ですが、EVの普及を促進する政府の方針を考えれば、一定の支援は継続されると予想されます。
アリアNISMO:EVスポーツの最高峰
走りにこだわるなら、NISMOモデルは外せません。標準モデルから出力を約10%向上させた専用パワートレインを搭載しています。
NISMO専用チューニング
- NISMO tuned e-4ORCE:
鋭いレスポンスと高い旋回性能を実現。2つのモーターを1万分の1秒単位で制御することで、コーナリング中もリアルタイムで細かいトルク配分を変更。2トンを超える車を、コーナリングでアンダーステアがでないように、フロントのトルクを少し抜いてリアを強める制御により、異次元のコーナリングを実現しています。 - 最高出力:
B9 e-4ORCEで320kW(435PS)、最大トルク600Nm。これは「GT-R」に匹敵する数値で、0-100km/hを5秒で達成します。 - 専用EVサウンド:
フォーミュラEマシンのような高揚感あるサウンドを演出します。 - 専用エアロパーツ:
空力性能を高めるフロントスポイラーやリアバンパー、リアスポイラーを装備し、高速安定性を向上。ドラッグを制して生み出すダウンフォースで、比類なきハンドリングとスタビリティを実現します。 - NISMO専用タイヤ:
ミシュラン「パイロットスポーツEV」の新開発タイヤを採用し、グリップ性能を最大化。
開発哲学
「より速く」「気持ちよく」「安心して」運転できることがNISMOの重要な3つのキーワードですが、アリアNISMOでは「安心して」、「速さ」や「気持ちよさ」を提供できるクルマを作るという逆転の発想で開発されました。「思い通りに曲がること」が「安心」につながるという考え方です。
競合車種との徹底比較
トヨタbZ4X・スバルソルテラ
トヨタとスバルの共同開発EV。バッテリー容量71.4kWhで、航続距離は2WDモデルで500km前後。マイナーチェンジで出力アップ、航続距離アップを実現し、グレードによって50万円以上の値下げも実施されました。
アリアの優位性:
- 航続距離(B9で640km vs bZ4Xの559~567km)
- 内装の質感と高級感(試乗比較では「アリアのほうが一枚上」という評価)
- Google搭載システムとV2L機能による差別化
- 日本専用サスペンションチューニングによる乗り心地の良さ
bZ4Xの課題:
- 充電マネジメントの制限(急速充電時の入力を絞る傾向)
- インテリアがビジネスライクで無味乾燥との指摘
- バッテリー残量%(SOC)が表示されないなどの使い勝手の問題
テスラモデルY
世界で最も売れているEV SUV。バッテリー容量75kWhで航続距離635km。最高出力220kWと動力性能に優れます。
アリアの優位性:
- 上質な内装とラウンジのような高級感
- プロパイロット2.0による高度な運転支援
- 日本メーカーならではのきめ細かいサービス
ヒョンデIONIQ 5
韓国メーカーの本格EV。東京から青森までの実走行テストでは、電費や充電性能で優れた結果を示しています。価格面でも競争力があります。
アリアの優位性:
- ブランド力と信頼性
- 日本市場に特化したチューニング
- 充実したディーラーネットワーク
まとめ:新型アリアが「買い」である理由
今回のマイナーチェンジは、EVとしての基礎体力(航続距離やパワー)を維持しつつ、「日常の使い勝手」と「移動の質」を徹底的に磨き上げたアップデートです。Google搭載によるデジタル化、V2Lによるライフスタイルの拡大、そして日本専用の足回りによる極上の乗り心地。
新型アリアは、単なる移動手段としてのEVではなく、あなたの生活に寄り添い、豊かにしてくれる**「走るラウンジ」であり「移動式蓄電池」**へと進化しました。
「スマホを最新機種に買い替えるときのようなワクワク感」を車で味わいたいなら、新型アリアは今、最も選ぶべき一台です。
例えるなら、このマイナーチェンジは「高性能なノートPCに、最新のOSと予備バッテリー、そして最高級のスピーカーを搭載した」ようなものです。これまでは「EVだから」という理由で選んでいた人も、これからは「この車で過ごす時間が最高だから」という理由でアリアを選ぶことになるでしょう。
2026年2月の発売まであとわずか。販売店での事前相談や、試乗予約の確認を早めに行うことをお勧めします。特に人気のグレードやカラーは、発売直後は納期が長くなる可能性があります。上質な移動体験と最先端のテクノロジーを両立させた新型アリアは、今後のEV市場における日産の存在感を決定づける一台となることは間違いありません。


