マツダのラージ商品群第一弾として2022年に登場したCX-60。直列6気筒エンジンやFRプラットフォームといった野心的な設計で大きな注目を集める一方、初期型では乗り心地やトランスミッションの挙動に厳しい声があったのも事実です。
しかし、2025年2月の足回り大改良に続き、2026年3月19日に断行された今回の一部改良は、単なる「お化粧直し」では断じてありません。マツダが社運を賭けて、車の根幹から再設計に近いレベルでメスを入れた「真の完成形」と言える仕上がりになっています。業界関係者の視点から、その驚くべき進化の詳細を徹底解説します。

■ まず押さえておきたい:2026年改良の位置づけと改良の歴史

CX-60の「改良の歴史」を知ることは、今回の一部改良の意義をより深く理解する上で欠かせません。2022年の発売直後から、初期型に対して「乗り心地が硬い」「ATのギクシャク感が気になる」という声が上がりはじめました。これは欧州の高速道路を主戦場に設計されたサスペンションセッティングが、日本の路面環境と噛み合っていなかったことが主因です。
そこでマツダは腰を据えてこの課題と向き合い、2025年2月21日の第1弾改良では足回りを根本から作り直すという、異例の大手術を実施しました。そして今回、2026年3月19日に実施された第2弾の一部改良では、CX-80で先行採用されていた最新の機能・安全装備をCX-60へと一斉投入するとともに、内外装のデザインを刷新。2段階の大改良を経て、ついにCX-60は「マツダが当初目指していた理想の姿」へと到達しました。
【2026年3月改良の主な変更ポイント(概要)】
■ 乗り心地は改良でどう変わったか—足回り大手術の全貌

今回の2026年3月改良を語る前に、その土台となった2025年2月の足回り大改良の内容を詳しく理解しておく必要があります。なぜなら、2026年モデルの「走りの気持ちよさ」は、この第1弾改良があってこそ成立しているからです。
衝撃の「リアスタビライザー撤去」という英断
最も大胆な変更点は、リアスタビライザーの撤去(重量級のPHEVを除く一部グレード)です。通常、CX-60のような背の高いSUVではロールを抑えるために必須とされる装備ですが、あえて外すことで左右輪の連結を意図的に解除しました。これにより、片輪が段差を踏んだ際の衝撃が反対側に伝わりにくくなり、路面への追従性が飛躍的に向上しています。
「スタビライザーを外してコーナリング性能は大丈夫なのか?」という疑問を持つ方もいるでしょう。しかしマツダの開発陣はここで終わりませんでした。スタビライザーを取り除くという「引き算」と引き換えに、足回り全体を精密に再チューニングするという「足し算」を組み合わせることで、むしろ高次元のバランスを実現しているのです。
足回りのトータルリセッティング——数字で見る改善幅

スタビライザー撤去に伴い、以下の緻密なチューニングが施されました。
- リアスプリングのソフト化:
バネ定数を約20%低減し、路面の凹凸をいなすしなやかさを確保。日本の一般道にありがちな細かい段差や継ぎ目も、スッと吸収するフィーリングを実現しています。 - 伸び側減衰力の強化:
柔らかくなったバネをきちんと抑えるため、ダンパーの伸び側を強化。揺れをピタッと収束させる「フラットライド感」が実現し、荷重変動が少ない安心感のある走りにつながっています。 - バンプストッパーの刷新:
ストローク量を増やし、大きな段差を乗り越えた際の「ゴツン」という底付き感を大幅に低減。後席に乗る家族からの苦情が最も多かった部分に、ピンポイントで手が入りました。
ATのギクシャク感もほぼ解消——CX-80フィードバックの成果
CX-60が搭載する「トルクコンバーターレス8速AT」は、そのダイレクト感と燃費効率の高さが魅力である一方、初期型では低速域でのギクシャク感や発進時の微妙なもたつきが指摘されていました。
今回の改良では、後発モデルであるCX-80で培われた最新の制御ロジックをCX-60へフィードバック。発進時のクラッチ制御や減速時のシフトダウンが洗練され、初期型で感じられた低速域のギクシャク感や異音がほぼ解消されました。さらに電動パワーステアリングやAWDの制御も最適化され、走行中の騒音・振動対策も織り込まれています。
実際に改良モデルに試乗した自動車専門家やジャーナリストからは、「まるで別の車になった」「しっとりとした高級車らしい乗り味」と絶賛する声が相次いでいます。Car Watchをはじめとする複数の専門メディアでも、改良後のCX-60の完成度の高さが高く評価されています。
■ 2026年3月改良で加わった機能・安全装備の全貌
足回りの劇的な進化を土台に、2026年3月の改良ではCX-80で先行採用されていた最先端装備をCX-60へ一斉移植するという、大幅なアップデートが行われました。
マツダコネクトの操作性改善——タッチで使えるCarPlay
これまでCX-60のApple CarPlay / Android Autoは、センターコンソールのコマンダーノブを使った操作のみに対応していました。今回の改良で全機種においてタッチパネル操作が可能になり、スマートフォン感覚でそのまま地図やナビを操作できるようになりました。直感的な操作性はドライブのストレスを大きく減らしてくれます。
フロントドアガラスを遮音ガラスに変更——静粛性の劇的向上
フロントドアガラスを遮音ガラスに変更することで、高速走行時に気になる風切り音を大幅に抑制。長距離ドライブ時の疲労軽減に直結する改善であり、SUVの主要な使用シーンである高速道路での快適性が一段と向上しました。同時にこの変更は、後述するAmazon Alexaとの音声対話をより正確かつストレスフリーに行うための環境整備としても機能しています。
Amazon Alexa搭載で実現する「声だけドライブ」

今回の改良の目玉のひとつが、Amazon Alexaの搭載です。車載通信機を利用するため、スマートフォンのテザリングなしでも多彩な操作が声だけで可能になります。
車両装備の音声コントロール
- エアコンの温度調整
- シートヒーター・ステアリングヒーターのON/OFF
- シートベンチレーション・リアデフロスターの操作
- マツダオンラインナビと連動した目的地設定
エンターテインメント・スマートホーム連携
- 音楽再生・ニュース・天気情報の取得
- ショッピングリストやリマインダーの管理
- 帰宅前に自宅のエアコンや照明を操作するスマートホーム連携
「運転しながら両手をふさがずに操作できる」というのは、安全性という観点からも非常に重要な進化です。マツダオンラインナビも新たに追加されており、コネクティッドサービスとの親和性がさらに高まりました。
CX-80から移植された先進安全装備3点セット

安全性においても、CX-80で先行採用されていた3つの装備がCX-60へ追加されました。
| 装備名 | 機能内容 |
|---|---|
| クルージング&トラフィック・サポート(CTS) | 緊急停止支援機能付き(ドライバー・モニタリング連動)。ドライバーの異常を検知した際に自動で安全停止をサポート。 |
| 緊急時車線維持支援(ELK) | 対向車両衝突回避アシスト機能を新たに追加。側方危険回避・ロードキープアシストは従来より設定済み。 |
| スマート・ブレーキ・サポート(SBS) | 対向車衝突被害軽減機能を追加。センターラインをオーバーした対向車との衝突被害を軽減する。 |
特にCTSの「緊急停止支援機能」はドライバーモニタリングシステムと連動し、居眠りや急病で操作不能になった場合にも自動停止をサポートするもの。家族を乗せる機会の多いSUVに求められる安全装備として、これ以上ないものといえます。
その他の利便性向上装備
- リアシートアラート:降車時に後席への置き忘れを警告する機能。チャイルドシートを使うファミリー層には特に心強い装備です。
- 360°ビュー・モニター(トレーラーヒッチビュー):トレーラー牽引時の安全確認に役立つビューモードが追加。アウトドア用途での利便性がさらに広がりました。
■ デザイン刷新——バーガンディ内装と新色追加が生み出す世界観

CX-60の魅力である「上質なインテリア」と「美しいエクステリア」も、今回の一部改良でさらに深化しました。
待望の「バーガンディ内装」——新グレード「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」
今回の改良における内装面の最大のトピックが、「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」の新設です。スポーティな走りを強調する赤内装を採用したこのグレードは、国内でもCX-70に採用されて高い評価を得ていた「バーガンディ」カラーをCX-60へ初投入するものです。
- 洗練された大人の赤:
単なる鮮やかな赤ではなく、ナッパレザーの質感と相まって、ドイツ系プレミアムSUVに比肩する圧倒的な高級感を演出します。 - シフトパネル・ドアトリムの刷新:
対象グレードのシフトパネル/コンソールとドアトリムの加飾が「メッシュメタル:シルバーベゼル」から「マットブラックヘアライン:シルバーベゼル」へ変更され、よりシャープで現代的な印象になりました。 - エグゾーストガーニッシュのブラック化:
XD機種のエグゾーストガーニッシュがクロームメッキからブラックメタリックへ変更され、リアビューの統一感と質感が向上しました。
スポーティさを引き立てる新色・カラー展開の刷新
ボディカラーにも戦略的な変更が加えられました。
- ポリメタルグレーメタリックの新規追加:
マツダらしいスポーティでモダンな色合いが全機種で選択可能となり、CX-60の筋肉質な造形を際立たせます。マツダ3やCX-30でも人気を博した色だけに、CX-60への採用を待ち望んでいたファンも多かったでしょう。 - ジルコンサンドメタリックのレギュラー化:
従来、特別仕様車「Trekker」の専用色だった人気カラーが、今回ついに全グレードへ拡大。未塗装樹脂のフェンダーアーチとの相性が抜群で、SUVらしい「ギア感」を強調できます。アウトドアシーンとの親和性も高く、ひとつのアイデンティティを生み出す色といえます。 - ソニックシルバーメタリックを廃止:
ラインナップの整理とともに、よりCX-60らしい個性的なカラー体系へと移行しています。
■ 機種体系の刷新——廃止・追加グレードを徹底整理
今回の改良では、機種体系も大きく見直されました。選択肢が増えた一方で、一部グレードが廃止されています。購入を検討している方は、現在の最新ラインナップを確認しておきましょう。
■ガソリン

■ディーゼル

■ハイブリッド(ディーゼル)

■プラグインハイブリッド

機種別詳細は下記公式WEBよりご確認ください!
新たに追加されたグレード(CX-60)
- XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package(バーガンディ内装・新設)
- XD-HYBRID Drive Edition Nappa Leather Package
廃止されたグレード(CX-60)
【注意】検討中の方は「欲しかったグレードが廃止されていないか」を必ず最新の公式サイトで確認することをおすすめします。なお、2026年3月19日時点での価格帯は382万8,000円〜649万5,500円となっています(マツダ公式発表)。
■ CX-60の「圧倒的コスパ」を輸入車と比較する
業界の人間として、CX-60の価値を客観的な視点で論じてみたいと思います。直列6気筒エンジン+縦置きFRプラットフォームという設計思想は、もともと欧州のプレミアムブランドが「上質さの証明」として用いてきた手法です。
同様のコンセプトを持つライバル車を並べてみると、その価格差の大きさに驚かされます。
| 車種 | 主なパワートレイン | 価格帯(概算) |
|---|---|---|
| MAZDA CX-60 XD-HYBRID | 3.3L 直6ディーゼルMHEV | 約430万〜650万円 |
| BMW X3 xDrive20d | 2.0L 直4ディーゼル | 約780万〜900万円 |
| メルセデス・ベンツ GLC 220d | 2.0L 直4ディーゼル | 約870万〜1,000万円以上 |
| ボルボ XC60 B5 AWD | 2.0L 直4 マイルドハイブリッド | 約800万〜950万円 |
欧州プレミアム勢が「2.0L 直4」をメインパワーユニットとして800万円超の価格を設定している一方、CX-60は「3.3L 直列6気筒」という一格上のエンジンを430万円台から提供しています。かつてモーターファン誌などの専門誌が「欧州プレミアムに匹敵する高い完成度」と評価したことも、このコスパの高さを物語っています。
もちろん、ブランドイメージや購入後のリセールバリューといった観点では差が出る場面もありますが、「走りの質」「内装の作り込み」「搭載エンジンのグレード」という純粋なスペックで勝負すれば、CX-60は国産車の枠を超えた存在感を持っています。
■ 実際に乗ったらどう感じる?——プロ目線の試乗インプレッション

改良後のCX-60に実際に試乗したモータージャーナリストたちの声を総括すると、共通して評価されているポイントが浮かび上がってきます。
「乗り心地」と「走りの楽しさ」の両立
Car Watchの試乗記(2025年12月)では、「XD-HYBRID プレミアムスポーツ」グレードに試乗したレポートの中で、運転席に座った瞬間からしっくりとなじむポジションのよさと、縦置き後輪駆動ならではの素直なハンドリングが高く評価されています。路面への追従性が向上した足回りは「スポーティでありながら同乗者への配慮も忘れない」という表現で紹介されており、ドライバーと同乗者の双方が納得できる仕上がりになったことがうかがえます。
直列6気筒ディーゼルの官能性
CX-60最大の個性である「3.3L 直列6気筒ディーゼルエンジン」は、改良後も変わらず絶大な魅力を放っています。低回転域から湧き出るトルクによる力強い加速、そしてスポーツモードで開花する直6ならではのエンジンサウンドは、ドライブをエンタテインメントに変えてくれます。ロングドライブでの燃費性能の高さも、このエンジンが持つ大きなアドバンテージです。
インテリアの質感——「RXと勝負できるクオリティ」
価格.comのユーザーレビューにも「この車にインテリアの質感で勝てるモデルはそうそうない」「レクサスRXと勝負できるクオリティ」といった声が見られます。特にバーガンディやタンといった個性的な内装色の選択肢が広がったことで、所有する喜びがさらに高まっています。
■ どのグレードを選ぶべき?——業界プロが考えるベストバイ

豊富なグレード展開を持つCX-60の中から、どれを選ぶべきか。自動車業界の立場から、シーン別のおすすめを整理します。
スポーティさと個性を重視するなら
「XD SP」(XD S Package後継):ブラックのハニカムグリルや20インチブラックホイール、シグネチャーウィングのブラッククロームなど、ビジュアルを引き締めたスポーティ仕様。INLINE6バッジも装着され、所有する喜びが高いグレードです。
プレミアムな内装で差をつけたいなら
「XD-HYBRID Drive Edition Burgundy Leather Package」:バーガンディのナッパレザーとマットブラックヘアラインのインテリアが織りなす大人の空間は唯一無二。ディーラーで現物を見れば、その高級感に惚れ込むはずです。
家族での使い勝手とオールラウンド性を求めるなら
「XD-HYBRID Premium Sports」(574万7,500円):専門誌の試乗記でも頻繁に取り上げられるこのグレードは、ディーゼルMHEVの経済性と先進装備のバランスに優れた、最も汎用性の高い選択肢です。2026年改良で追加された安全装備もフルに活用できます。
結論:CX-60 一部改良モデルは「今こそ買い」のベストバイ

今回の一部改良は、初期型で課題とされた「乗り心地」と「快適性」の弱点を完璧に潰し、Amazon Alexa・先進安全装備・タッチ式CarPlay・遮音ガラスといった「最新テクノロジー」を一気に注入した、まさにマツダの執念の結晶です。2025年2月の足回り大改良と今回の2026年3月改良、この2段階の進化を経てCX-60はついに「マツダが描いた理想の完成形」へと到達しました。
特に直列6気筒ディーゼルとFRベースの贅沢なパッケージングは、輸入車であれば倍以上の価格を覚悟しなければならないレベルです。この圧倒的なコストパフォーマンスと、熟成された「人馬一体」の走り。過去のネット上の評判を見てCX-60を候補から外していた方がいれば、今すぐその先入観を捨ててください。
ぜひお近くのディーラーで、この劇的な変貌を遂げた「本物のCX-60」を体感してみてください。ステアリングを握った瞬間、その別次元の仕上がりに驚かれることを保証します。


