BMW 7シリーズ/i7 改良モデルが2026年10月29日に発売、11月から納車開始
BMWジャパンは2026年10月29日、フラッグシップセダン「7シリーズ」と電気自動車「i7」の改良モデルを全国の正規ディーラーで発売しました。価格は740が1,683万円、i7 60 xDriveが1,852万円、そして頂点のi7 M70 xDriveが2,330万円(いずれも税込)で、納車は11月から始まる予定です。
46年間この業界に身を置いてきた業界関係者として、今回の改良ははっきり申し上げて「マイナーチェンジ」という言葉では収まらない内容だと感じています。顔つき、室内の画面構成、ソフトウェア、運転支援までが入れ替わり、BMW自身も次世代モデル群「ノイエ・クラッセ」の技術を取り込んだモデルと位置づけています。日本では7月に導入されたiX3に続く、ノイエ・クラッセ技術の第2弾という扱いです。
この記事は、1,500万円を超える高級セダンを本気で検討されている方に向けて書いています。カタログを並べるだけでは見えてこない、次のような点を掘り下げます。
数字は各社の公式発表と、それを報じた複数の自動車メディアの記事で照合しています。そのうえで、長年現場を見てきた立場からの見立てを加えていきます。
今回の改良の全体像:中身は「次世代機への載せ替え」に近い
現行の7代目(G70型)は2022年に日本へ導入されました。今回はそのモデルライフ中盤の改良にあたりますが、業界関係者の目で見ると、外観の化粧直しというより「頭脳と操作系の世代交代」と捉えるのが正確です。
変更点の要約
- フロントフェイスの刷新:
新形状のキドニーグリルに、輪郭を光らせる「BMWアイコニック・グロー」と、新設計のクリスタル・ヘッドライトを組み合わせました - BMWパノラミックiDrive:
フロントガラス下を端から端まで走る43.3インチの「パノラミック・ビジョン」、17.9インチのセンターディスプレイ、3Dヘッドアップ・ディスプレイを全車標準化 - BMWオペレーティング・システムX:
ノイエ・クラッセ世代の新OSへ移行 - BMW初の助手席専用画面:
14.6インチの「パッセンジャー・スクリーン」を全車標準装備 - 後席シアター・スクリーンの進化:
31.3インチ・8Kの天井格納式画面が地上波テレビ視聴に対応 - ハイウェイ・アシスト標準装備:
高速道路で120km/hまでのハンズオフ走行(2026年11月以降に利用開始予定) - パワートレインの整理:
エンジン車はガソリンの740に一本化し、i7は3グレード構成へ拡大
ラインアップから消えたもの
改良前はガソリンの740iとディーゼルの740d xDriveの2本立てでしたが、改良後のエンジン車は740のみです。改良前の740iと740d xDriveは2026年6月で生産を終え、現在は在庫車の販売のみとなっています。
これは見逃せないポイントです。7シリーズで4WDを求める方は、改良後はi7を選ぶしかなくなりました。740は後輪駆動です。雪道を走る機会が多い地域の方、あるいは長距離をディーゼルの燃料代で走りたかった方にとって、選択肢の構図は大きく変わったと言えます。
業界関係者の見立て:なぜここまで手を入れたのか
高級セダン市場では、ここ数年で「どれだけ速いか」より「車内でどれだけ快適に、便利に過ごせるか」が商品力を左右するようになりました。後席で仕事をする、助手席の同乗者が移動時間を楽しむ、という使われ方が当たり前になっています。
競合のSクラスも2026年に約2,700点を見直す大改良を受け、自社開発OS「MB.OS」を載せてきました。フラッグシップ同士の競争軸がソフトウェアと画面体験へ移った中で、BMWは7シリーズを中盤のうちに最新世代へ引き上げる判断をした、というのが私の見方です。
裏を返すと、改良前の7シリーズを検討していた方は、今回の改良後モデルとの装備差がかなり大きいことを踏まえて比較されたほうがよいでしょう。在庫車の条件が良くても、画面と運転支援の世代差は後から埋められません。
グレード構成と価格:740は1,683万円、i7 M70は2,330万円
日本仕様は5グレード、すべて右ハンドルです。
| グレード | パワートレイン | 駆 動 | 標準ホイール | 価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| 740 Excellence | 3.0L直6ガソリン+48Vハイブリッド | 後輪駆動 | 20インチ(スタイリング905) | 1,683万円 |
| 740 M Sport | 3.0L直6ガソリン+48Vハイブリッド | 後輪駆動 | 20インチ(スタイリング907M) | 1,683万円 |
| i7 60 xDrive Excellence | 電気自動車(前後2モーター) | 4WD | 20インチ(スタイリング905) | 1,852万円 |
| i7 60 xDrive M Sport | 電気自動車(前後2モーター) | 4WD | 20インチ(スタイリング907M) | 1,852万円 |
| i7 M70 xDrive | 電気自動車(前後2モーター) | 4WD | 21インチ(スタイリング1098M) | 2,330万円 |
改良前からの値上げ幅は17万円
改良前の740iは1,666万円でしたので、740は17万円の値上げです。パノラミックiDrive、助手席スクリーン、ハイウェイ・アシストが全車標準になったことを考えると、業界関係者の感覚としては「実質的には据え置き、むしろ装備分は割安」と評価できる値付けです。輸入車全体で値上げが続いてきた流れの中では、かなり踏みとどまった価格設定だと感じます。
ExcellenceとM Sportは同価格:選び方の考え方
740とi7 60 xDriveは、それぞれExcellenceとM Sportが同じ価格です。性能差はなく、違いは仕立てと見た目です。
Excellenceが向いている方
- 後席に人を乗せる機会が多く、落ち着いた佇まいを重視する方
- クロームやウッドを生かした、正統派の高級セダンらしさを好む方
- 法人の役員車として、威圧感より品格を優先したい方
M Sportが向いている方
- ご自身でハンドルを握る時間が長いオーナードライバーの方
- 引き締まったエアロや足元の印象を好む方
- 将来の売却時を意識される方(一般に、BMWではM Sport系の外観を好む中古車需要が根強い傾向があります)
売却時の評価は市場環境で変わりますので断定はできませんが、同価格で選べるなら、ご自身の使い方と好みを優先して後悔はないはずです。
740とi7 60 xDriveの価格差169万円をどう見るか
740とi7 60 xDriveの差は169万円です。この169万円で手に入るのは、4WD、544PS・745Nmの出力、エンジン音のない静粛性、そしてWLTCモード706kmの航続距離です。
一方で、標準状態の車両重量は600kg増え、自宅の充電設備も必要になります。差額だけで判断せず、後半で触れる駐車場と充電環境を先に確認されることを強くおすすめします。
i7 M70 xDriveの2,330万円は何に対する価格か
i7 M70 xDriveは、740より647万円、i7 60 xDriveより478万円高い最上位です。680PS・1,015Nmの動力性能に加え、31.3インチの後席シアター・スクリーンを含む「リヤ・シート・エンターテインメント・エクスペリエンス」が標準装備になります。740とi7 60 xDriveではこれが有料オプションです。
つまりM70は「速さ」だけでなく、後席エンターテインメントを最初から積んだショーファー兼ドライバーズカーという性格です。下位グレードにシアター・スクリーンや上級オプションを積み上げていくと、見積もり総額は想像以上にM70へ近づきます。商談の際は、オプション込みの総額で比較されるのが鉄則です。
エクステリア:存在感はそのままに、整理された新しい顔
フロント:光るキドニーグリルとクリスタル・ヘッドライト
改良前のG70は、大型グリルと上下分割ライトの強烈な顔つきで評価が分かれたモデルでした。改良後はキドニーグリルの形状を一新し、輪郭を発光させるアイコニック・グローと、細く鋭いクリスタル・ヘッドライトの組み合わせになりました。押し出しの強さは残しつつ、線が整理されて落ち着いた印象に変わっています。
サイド・リア:面を整理した水平基調
側面は面の凹凸を減らし、キャラクターラインを絞り込んだ構成です。リアは水平基調のデザインで、細いテールライトが車幅いっぱいに伸び、マフラー出口は目立たない位置に収められました。全長5.4m近い車体を、すっきりと長く見せる意匠です。
塗装:量産車で世界初をうたうデュアル・フィニッシュ
BMWインディビジュアルの2トーン・ペイントに加え、車体上部を高光沢、下部をマットに仕上げる「デュアル・フィニッシュ」が選べるようになりました。BMWは量産車でこうした仕上げを選べるのは世界初としています。
業界関係者からの注意点:マット仕上げの扱い
マット塗装は、一般的に磨き傷の補修や部分塗装の色合わせが難しく、洗車機やコンパウンドの使用にも制約が出ることが多い仕上げです。選ぶ前に、洗車方法、コーティングの可否、万一の板金時の対応を販売担当に確認されることをおすすめします。見た目の満足度が高い分、扱いを知ったうえで選ぶのが後悔しないコツです。
インテリア:画面が主役の室内へ
BMWパノラミックiDriveとOS X
運転席まわりは、43.3インチのパノラミック・ビジョン、17.9インチのセンターディスプレイ、3Dヘッドアップ・ディスプレイの3層構成になりました。改良前の「BMWカーブド・ディスプレイ」から、視線移動を減らす思想の配置へ変わっています。ステアリングは、使える機能のボタンだけが光る考え方で設計された新デザインです。
14.6インチの助手席専用スクリーン
BMW初となる14.6インチのパッセンジャー・スクリーンが全車標準です。地上波テレビや対応アプリでの映画・音楽・ゲームに加え、車内カメラを使ったオンライン会議にも対応します。ドライバーが運転中にこの画面を見ると、車内カメラが検知して表示を一時的に制限する仕組みも備えています。
後席:31.3インチ・8Kのシアター・スクリーン
天井から降りてくる31.3インチ・8Kのシアター・スクリーンは、改良で地上波テレビ視聴に対応しました。HDMI入力は後席中央コンソールへ移り、左右のリアドアには5.5インチのタッチ・コマンドが付きます。
知っておきたい細かな仕様
- 地上波テレビを再生できるのは車内のいずれか1画面で、複数画面での同時再生には対応しません
- 「BMWデジタル・プレミアム」は新車購入後3年間無償で、以後の継続利用は有料です
- コンテンツによっては、別途アカウント作成や有料契約が必要です
後席で家族が地上波を見ながら、助手席でも別の番組を、という使い方はできない点は、事前に知っておくべきでしょう。
素材と演出
レザー、アルカンターラ、ウッド、クリスタル・ガラス、メタルを組み合わせられ、ライト・ストリップや前席ヘッドレストの照明も備わります。スカイ・ラウンジ・パノラマ・ガラス・サンルーフはモデルによって有料装備です。オートマチック・ドアは、各ドアのスイッチやセンターディスプレイのアプリからも開閉できるようになりました。
パワートレインとスペック
主要スペック比較
| 項目 | 740 | i7 60 xDrive | i7 M70 xDrive |
|---|---|---|---|
| 動力 | B58型 2,997cc直6+48Vハイブリッド | 前後2モーター | 前後2モーター |
| 駆動方式 | 後輪駆動(8速AT) | 4WD | 4WD |
| システム最高出力 | 294kW(400PS) | 400kW(544PS) | 500kW(680PS) |
| システム最大トルク | 580Nm | 745Nm | 1,015Nm |
| 0-100km/h(欧州仕様) | 未公表 | 4.8秒 | 3.8秒 |
| 燃費/電費(WLTC) | 12.9km/L | 184Wh/km | 188Wh/km |
| 一充電走行距離(WLTC) | ― | 706km | 686km |
| バッテリー総電力量 | ― | 113kWh | 113kWh |
| 車両重量 | 2,140kg | 2,740kg | 2,820kg |
| トランク容量 | 540L | 500L | 500L |
i7 M70 xDriveの最高出力は最大値で、スタート・アップ・モード時は442kW(601PS)です。740とi7 60 xDriveは後席マルチファンクション・シート装着で各30kg増えます。
740:直6の滑らかさを48Vで磨いた現実解
740は改良前の740i(381PS・540Nm)から、出力が19PS、トルクが40Nm上がりました。エンジン単体の最大トルクは540Nmで、48Vモーターの補助を加えたシステム値が580Nmです。
BMWの直列6気筒は、構造的に振動が打ち消し合いやすく、回転の滑らかさに定評があります。そこへ48Vのモーター補助が加わることで、発進時やアイドリングストップからの再始動がより穏やかになります。給油だけで日本全国どこへでも行ける気軽さを含め、高級セダンとしての「失敗しにくさ」は740が上です。
i7 60 xDrive:静粛性と航続距離を両立した本命EV
113kWhのバッテリーで、WLTCモード706kmを実現しています。電費は市街地183Wh/km、郊外178Wh/km、高速道路191Wh/kmと公表されています。
業界関係者として付け加えると、WLTC値はあくまで試験条件での数値です。冬場の暖房使用や高速巡航が続くと、実航続距離は目に見えて短くなるのがEVの一般的な特性です。それでも、カタログ値の6〜7割程度を目安に計画しても、日常から長距離移動まで十分に余裕のある容量と言えます。
i7 M70 xDrive:2.8トンを3.8秒で加速させるM
680PS・1,015Nmで、車重2,820kgの車体を0-100km/h加速3.8秒(欧州仕様)で走らせます。Mスポーツ・ブレーキや専用サスペンションを備え、7シリーズでもっともスポーティな位置づけです。
シャシー:全車エアサス、後輪操舵で取り回しを補う
全車エアサスペンションを採用し、前輪はダブルウィッシュボーン式、後輪はマルチリンク式です。後輪を最大3.5度切る「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」が、全長5,395mmの車体の小回りを助けます。
整備の視点から:エアサスと重量級EVの足まわり
エアサスペンションは乗り心地の要ですが、エアスプリングやコンプレッサーは年数と走行距離に応じて劣化が進む部品です。長く乗る予定の方は、保証期間やメンテナンスプログラムでどこまでカバーされるかを確認しておくと安心です。
また、2.7トンを超えるi7は、大径タイヤへの負担が大きくなります。一般的にEVはエンジン車よりタイヤの摩耗が早い傾向があり、20〜21インチの前後異径タイヤは交換費用もそれなりにかかります。一方で、回生ブレーキが減速の多くを担うため、ブレーキパッドの減りは穏やかになる傾向です。維持費の内訳が、エンジン車とは入れ替わると考えてください。
運転支援:ハイウェイ・アシストを全車標準装備
120km/hまでのハンズオフ走行
ドライビング・アシスト・プラスとハイウェイ・アシストが全車標準です。ハイウェイ・アシストは、高速自動車国道と指定都市高速道路で一定の条件を満たすと、120km/hまでステアリングから手を離して走行できます。
システムが車線変更を提案し、ドライバーがドアミラーを見る動作で実行する「レーン・チェンジ・アシスト」も含まれます。
利用条件と費用で押さえるべき3点
- 利用開始は2026年11月以降の予定で、ソフトウェア更新が必要な場合があります
- 新車購入後3年間は無償で、以後は有料のサブスクリプション契約が必要です
- SAEレベル2相当の運転支援で、常に前方注視と即時のハンドル操作復帰が求められ、運転の責任はドライバーにあります
「自動運転」と誤解されがちですが、あくまで疲労を減らすための支援機能です。長距離移動の多い方ほど恩恵は大きく、その分3年目以降のサブスクリプション費用も所有コストとして見込んでおく必要があります。
その他の主な支援機能
- パーキング・アシスト・プロフェッショナル(駐車ルートを最大10個まで記録して自動入庫)
- BMWデジタル・キー・プラス(スマートフォンで施錠・解錠や始動)
メルセデス・ベンツ Sクラスとの比較:同価格帯で性格はまったく違う
1,600万〜2,400万円のフラッグシップセダンを検討される方の多くは、最後に7シリーズとSクラスを並べて悩まれます。Sクラスも2026年に約2,700点を見直す大改良を受け、6月にS 450 d、9月にS 500を追加して現在のラインアップが揃いました。両車とも最新世代同士の比較になる、まさに今がもっとも比べがいのあるタイミングです。
価格帯の重なり方
| 7シリーズ/i7 | 価格(税込) | 近い価格のSクラス | 価格(税込) | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 740 | 1,683万円 | S 450 d 4MATIC | 1,598万円 | Sが85万円安い |
| 740 | 1,683万円 | S 500 4MATIC | 1,708万円 | Sが25万円高い |
| i7 60 xDrive | 1,852万円 | S 500 4MATIC long | 2,136万円 | Sが284万円高い |
| i7 M70 xDrive | 2,330万円 | S 580 4MATIC long | 2,365万円 | Sが35万円高い |
入口価格はSクラスのディーゼル、S 450 dが85万円安く設定されています。ただし、直6ガソリン同士の740とS 500で比べると、価格はほぼ互角です。最上位のi7 M70とS 580 longも35万円差で、両ブランドが真正面からぶつかる価格設計になっています。
ボディサイズ:7シリーズは「全車ロング」と考える
| 項目 | 740 | S 450 d/S 500 | S 500 long/S 580 long |
|---|---|---|---|
| 全長 | 5,395mm | 5,195mm | 5,305mm |
| 全幅 | 1,950mm | 1,920mm | 1,920mm |
| 全高 | 1,550mm | 1,505mm | 1,505mm |
| 車両重量 | 2,140kg | 2,200kg/2,140kg | 2,220kg/2,300kg |
ここは業界関係者として特に強調したい点です。7シリーズの全長5,395mmは、Sクラスの標準ボディより200mm、ロングボディよりも90mm長いのです。日本仕様の7シリーズには標準ボディの設定がなく、実質的に全車がロングボディ相当と考えてください。
つまり、後席の広さを求めてSクラスのロングを検討している方にとって、7シリーズは標準価格のままその広さが手に入る選択肢になります。逆に、ご自身で運転して都市部の駐車場を使う方には、Sクラスの標準ボディのほうが全長で200mm、全幅で30mm扱いやすい、という見方もできます。
パワートレインの選択肢
7シリーズ
- ガソリン:3.0L直6+48V(740、後輪駆動)
- 電気自動車:i7 60 xDrive、i7 M70 xDrive(4WD)
- ディーゼルとPHEVは日本仕様に設定なし
Sクラス
- ディーゼル:3.0L直6(S 450 d、4WD)
- ガソリン:3.0L直6(S 500、S 500 long、4WD)
- ガソリン:4.0L V8(S 580 long、4WD)
- 全車4MATIC(4WD)で、ステアリング位置は左右を選択可能
Sクラスは全車4WDで、ディーゼルとV8を持つのが強みです。冬季に雪道を走る方、燃料代を抑えて長距離を走りたい方、V8の余裕を求める方にとって、Sクラスのほうが選択肢は広いと言えます。左ハンドルを選べる点も、こだわる方には見逃せない違いです。
一方の7シリーズは、Sクラスの現行日本ラインアップにない「同じ車体の電気自動車」を選べるのが決定的な違いです。エンジン車と同じ7シリーズの姿のまま、EVの静粛性を手にできます。
燃費の比較(WLTCモード)
同じ直6ガソリン同士なら、後輪駆動の740がS 500より燃費で優位です。燃料単価の安い軽油を使うS 450 dは、ランニングコストでは最も有利な部類に入ります。
デジタル体験:思想の違いがはっきり出る
| 項 目 | 7シリーズ/i7 | Sクラス |
|---|---|---|
| OS | BMWオペレーティング・システムX | MB.OSベースの第4世代MBUX |
| センター画面 | 17.9インチ | 14.4インチ |
| 助手席画面 | 14.6インチ(全車標準) | 12.3インチ(標準) |
| 運転席前方 | 43.3インチのパノラミック・ビジョン+3D HUD | ドライバーディスプレイ |
| 後席 | 31.3インチ・8K天井格納式(M70標準、他はOP) | 後席エンターテインメント(仕様は要確認) |
| 運転支援 | ハイウェイ・アシスト(120km/hまでハンズオフ、3年無償) | MB.DRIVE |
Sクラスの第4世代MBUXは、Google Mapsベースのナビや、ChatGPT・Microsoft Bing・Google Geminiを統合した音声アシスタントを売りにしています。会話で車を操る体験を重視する方には魅力的です。
7シリーズは、フロントガラス下を横断するパノラミック・ビジョンと、大型の助手席画面、天井から降りる31.3インチ画面という「画面の大きさと配置」で勝負しています。後席の映像体験という一点では、7シリーズの31.3インチ・8Kは現状この価格帯で突出した装備です。
なお、Sクラスは10台の外部カメラを備えますが、日本仕様では発表時点で2台が未使用とされています。日本の法規や認可に合わせて機能が後から解放されるケースは、どちらのブランドでも今後増えていきます。購入時点の機能だけでなく、ソフトウェア更新で何が追加される見込みかも、商談で確認しておく価値があります。
EV同士で比べるなら:i7 と EQS
i7の直接のライバルはメルセデスのEQSです。EQSは海外で800V化と大容量バッテリーを採用した改良型が発表されていますが、本稿執筆時点で改良型の日本導入時期と価格は確認できていません。EV同士の比較を重視される方は、改良型EQSの日本発表を待ってから判断する、という選択も現実的です。
ただ、i7には「Sクラスと同格のフォーマルなセダン形状のままEVである」という明確な強みがあります。EQSは空力を優先した流線形のボディで、Sクラスとは別の顔をしています。従来型の高級セダンの佇まいでEVに乗りたいなら、現時点ではi7がもっとも分かりやすい答えです。
業界関係者の結論:こういう方にはこちら
7シリーズ/i7を選ぶべき方
- 標準価格で後席の広さ(ロング相当の全長)がほしい方
- エンジン車と同じ佇まいのフォーマルなEVに乗りたい方
- 後席の映像体験や、助手席の同乗者の満足度を重視する方
- 後輪駆動ならではの素直な操縦感覚を楽しみたいオーナードライバーの方
Sクラスを選ぶべき方
- 雪道を走る機会があり、エンジン車で4WDがほしい方
- ディーゼルの経済性、あるいはV8の余裕を求める方
- 都市部の駐車事情から、少しでもコンパクトな全長がほしい方(標準ボディ)
- 左ハンドルを選びたい方、AIアシスタントとの対話型の操作に惹かれる方
どちらが上という話ではありません。7シリーズは「先進性と後席体験の演出」、Sクラスは「選択肢の広さと全天候の安心感」に軸足を置いた、性格の異なる2台です。できれば両方に試乗し、ご自身が運転席と後席、どちらで過ごす時間が長いかを基準に選ばれると、満足度の高い結論にたどり着けるはずです。
購入前に必ず確認したい実務ポイント
ここからは、カタログにはほとんど書かれていないものの、納車後の満足度を大きく左右する点をまとめます。長年、高級車の納車後に「こんなはずでは」というお声を聞いてきた立場から、優先度の高い順に挙げます。
1. 駐車場の寸法と重量制限
7シリーズは全長5,395mm、全幅1,950mmです。i7は車両重量が2,740kg(M70は2,820kg)に達します。
- 機械式駐車場は、全幅1,850mm前後・車両重量2,000kg前後を上限とする設備が多く、7シリーズはそもそも入らないケースが大半です
- 自走式でも、区画の奥行きや柱の位置、スロープの勾配で出し入れに苦労することがあります
- 自宅のカーポートやシャッターは、全長に加えてドアを開ける幅(特にオートマチック・ドア使用時)まで測っておくと安心です
勤務先、よく行く商業施設、ホテルの駐車場まで含めて、事前に確認されることをおすすめします。
2. i7を選ぶなら充電環境が前提
i7の満足度は、自宅に充電設備があるかどうかでほぼ決まると言っても過言ではありません。
- 戸建ての場合:200V普通充電設備の設置工事が必要です。分電盤の容量や配線距離で工事費が変わります
- 集合住宅の場合:管理組合の合意が必要なことが多く、導入まで時間がかかります
- 外出先の急速充電:高速道路のサービスエリアなどで使えますが、混雑や出力の違いで待ち時間が読みにくいことがあります
自宅で充電できる方にとって、i7は「毎朝満充電で出発できる、給油の手間がない高級車」になります。逆に自宅充電ができない場合は、740を選ばれたほうが日々のストレスは少ないでしょう。
3. 税金と維持費の傾向
毎年の自動車税(種別割)は、2019年10月以降に登録された自家用乗用車の場合、排気量2.5L超3.0L以下の740が年額50,000円、電気自動車のi7は最も低い区分の年額25,000円です。新車購入時の重量税や環境性能割も、EVは優遇される仕組みになっています。
ただし税制は見直しが議論されており、購入時点の制度を販売担当に必ず確認してください。また、電気自動車向けの国の補助金(CEV補助金)は、車種や年度ごとに対象と金額が決まります。i7が対象になるかどうか、いくら交付されるかは、購入時点の公表内容で確認が必要です。
維持費で見落とされやすい項目
- ハイウェイ・アシストの4年目以降のサブスクリプション費用
- BMWデジタル・プレミアムの4年目以降の継続費用
- 20〜21インチ、前後異径タイヤの交換費用
- 車両価格に比例して高くなる車両保険料
4. 改良前の在庫車を選ぶべきか
改良前の740iや740d xDriveは在庫販売のみとなっています。条件面で魅力的な提示があるかもしれませんが、次の点は後から追加できません。
- パノラミックiDriveと新OS
- 14.6インチの助手席スクリーン
- 120km/hまでのハイウェイ・アシスト
ディーゼルの740d xDriveにこだわる方、4WDのエンジン車が必要な方にとっては、在庫車が最後の選択肢になります。それ以外の方は、改良後モデルとの装備差を価格差でどう評価するか、冷静に見比べてください。
5. 納期と商談のタイミング
納車は2026年11月から始まる予定です。改良直後は、仕様の組み合わせやオプション次第で納期に差が出るのが通例です。特にデュアル・フィニッシュや2トーン・ペイントなど、生産上の手間がかかる仕様は、標準的な仕様より時間がかかる可能性を想定しておくとよいでしょう。
よくある質問
新型7シリーズの発売日と納車時期は?
2026年10月29日に全国のBMW正規ディーラーで発売され、納車は2026年11月からの予定です。
価格はいくらですか?
740 Excellence/M Sportが1,683万円、i7 60 xDrive Excellence/M Sportが1,852万円、i7 M70 xDriveが2,330万円です(いずれも税込)。
ディーゼルや4WDのエンジン車はありますか?
改良後の日本仕様には設定がありません。エンジン車は後輪駆動の740のみで、4WDはi7の各グレードになります。
i7の航続距離は?
WLTCモードで、i7 60 xDriveが706km、i7 M70 xDriveが686kmです。
31.3インチの後席スクリーンは全車標準ですか?
i7 M70 xDriveのみ標準で、740とi7 60 xDriveでは有料オプションです。
Sクラスと比べて大きいのはどちらですか?
7シリーズです。全長はSクラス標準ボディより200mm、ロングボディより90mm長く、全幅も30mm広くなっています。
まとめ:先進性と後席体験で選ぶなら、改良後の7シリーズは最有力
今回の7シリーズ/i7の改良は、顔つき、画面、OS、運転支援まで入れ替えた、実質的な世代更新と言える内容です。それでいて740の値上げは17万円にとどまり、装備内容を考えると価格の説得力はむしろ高まりました。
Sクラスとの比較では、7シリーズは「標準でロング相当の広さ」「同じ姿のまま選べるEV」「突出した後席の映像体験」が強みです。一方、Sクラスは「全車4WD」「ディーゼルとV8の選択肢」「左右ハンドルの選択」で応えます。
業界関係者として最後にお伝えしたいのは、この価格帯の車選びでは、カタログの数字以上に「ご自身の生活にどう収まるか」が満足度を決めるということです。駐車場、充電環境、運転席と後席のどちらで過ごすか。この3点を整理したうえで試乗に臨まれると、2台の違いが驚くほどはっきり見えてくるはずです。
参考情報
- BMW 7シリーズ 改良新型の価格・装備(価格.com 新製品ニュース)
- BMW 改良新型7シリーズ日本発売(TRANS CAR)
- BMW 新型7シリーズ ビッグマイナーチェンジ解説(最新自動車情報)
- BMW「7シリーズ/i7」大幅改良(レスポンスまとめ)
- メルセデス・ベンツ 新型SクラスにS 500追加(Car Watch)
- メルセデス・ベンツ Sクラス グレード別カタログ(グーネット)
※価格・仕様は2026年11月6日時点の公表情報に基づきます。税制、補助金、サブスクリプション料金は変更される場合があるため、購入前に正規ディーラーでご確認ください。

