はじめに:統計が示す「若者の車離れ」の本質
「若者の車離れ」という言葉は、もはや業界関係者の間では常套句となっています。しかし、この現象を単なる世代間の嗜好の変化として片付けることはできません。最新の調査データが明らかにするのは、若者が車を「欲しくない」のではなく、「持てない」という経済的現実です。
本記事では、ソニー損害保険が実施した「2026年 20歳のカーライフ意識調査」を中心に、複数の統計データと市場動向を総合的に分析し、現代の若者とマイカーの関係性を多角的に掘り下げていきます。自動車業界に身を置く方々にこそ知っていただきたい、マーケティング戦略の根本を揺るがす重要な事実が、そこには隠されています。
<参考資料:ソニー損保株式会社>

若者のカーライフの現状──理想と現実の深刻な乖離
カーライフに必要な月収は平均31.8万円──前年比3.6万円増の衝撃
現代の20歳にとって、車を所有する「カーライフ」は、かつてのような憧れだけでは語れない、極めてシビアな経済的判断の対象となっています。
調査によると、車がある生活(カーライフ)を送るために必要だと考える手取り月収は、平均31.8万円に達しています。これは前年調査の28.2万円から3.6万円も大幅に増加しており、若者が「車を持つなら相応の収入が不可欠である」と、生活基盤に対してより慎重な構えを見せていることが分かります。
この31.8万円という数字を、現実の労働市場と照らし合わせてみましょう。2024年の大卒初任給の平均は約23万円前後、これに各種手当を加えても手取りで25万円程度です。つまり、新卒1年目でカーライフを送ることは、収支計算上ほぼ不可能に近い状況なのです。
実際の支出はわずか月16,753円──削られ続ける車関連予算

一方で、実際にカーライフにかけられる1ヵ月あたりの金額は平均16,753円にとどまり、こちらは2年連続で減少しています。理想とする月収のハードルが上がる一方で、実際に車に回せる予算は削られているという、**「理想と現実の乖離」**が鮮明になっています。
この月16,753円という金額は、実は車を維持する上で必要最低限のコストにも満たない可能性があります。後述する維持費の詳細分析でも触れますが、軽自動車でさえ年間維持費は30万円前後、月額換算で25,000円程度が必要です。つまり、若者が考える予算と実際の維持費の間にも、大きなギャップが存在しているのです。
46.9%が「経済的余裕がない」──マイカーは贅沢品へ
20歳の若者の約半数(46.9%)が「車を所有する経済的な余裕がない」と回答していることからも、マイカー所有が一種の贅沢品へと変貌しつつある実態が伺えます。
かつて車は「社会人になったら持つもの」という社会的通過儀礼の一部でした。しかし今や、「経済的に余裕ができたら検討するもの」へと位置づけが変化しているのです。この意識変化は、自動車業界のマーケティング戦略における根本的な前提を覆すものです。
物価上昇が若者のカーライフに与えた深刻な影響
購入予算と実際の購入額に55万円の開き──理想と現実のギャップ拡大
長引く物価上昇は、若者の車に対する購買意欲や維持コストの捉え方に暗い影を落としています。
前述の通り、必要だと思う月収額が跳ね上がった背景には、近年の物価高騰の影響で生活費全体の見積もりが増大したことがあると考えられます。自分の車を所有していない層が考える車の購入予算は平均227.8万円ですが、実際に車を持っている人が購入した金額は平均172.3万円と、約55万円もの開きがあります。
この55万円の差は何を意味するのでしょうか。理想と現実のギャップであると同時に、多くの若者が「妥協」を強いられている証左でもあります。欲しい車種ではなく、買える車種を選ばざるを得ない状況が、ここから読み取れます。
2025年の維持費高騰──若者を直撃する複合的コスト増
2025年に入り、若者のカーライフを取り巻く経済環境はさらに厳しさを増しています。
ガソリン価格の推移
2025年9月時点でのレギュラーガソリン価格は平均175.2円/L、ハイオクは185.9円/Lとなっています。満タン(40~50L)にするだけで7,000~9,000円程度かかる計算です。ただし、2025年12月には補助金拡充により158.0円/Lまで下がっています。それでも、2020年代前半と比較すれば依然として高水準です。
月間走行距離を仮に500kmとし、燃費15km/Lの車両で計算すると、月間のガソリン代は約5,800円。年間では約70,000円にものぼります。
自動車保険料の値上げラッシュ
2025年1月から大手損害保険会社各社が自動車保険料を3~5%値上げしました。さらに一部保険会社では2025年10月に8.5%の大幅値上げを実施。保険会社によっては年に2回の値上げとなり、契約者の負担は10%以上増加する可能性があります。
値上げの背景には、コロナ禍明けによる交通量回復に伴う事故件数の増加、物価高騰による修理費用の高騰、自然災害の激甚化による車両保険金の増加などがあります。特に、衝突被害軽減ブレーキなどの安全運転支援システムには高価なセンサーが搭載されており、事故時の修理費用が高額になる傾向があります。
20代の若年層の場合、任意保険料は年間6~10万円程度かかるケースが多く、これだけで月額5,000~8,000円の負担となります。
軽自動車の料率クラス拡大による影響
2025年1月から、軽自動車の型式別料率クラスが従来の3クラスから7クラスに拡大されました。最大と最小の較差は1.2倍から約1.7倍に拡大。これにより、車種によっては保険料が大幅に上昇するケースも発生しています。
維持費への不安が車離れを加速──22.0%が「維持費の高さ」を理由に挙げる
車を購入しない理由として「車以外のことにお金を使いたい」(25.0%)と同率で、**「維持費が高いから」(22.0%)**という経済的コストへの懸念が上位に挙がっています。
維持費の高騰に対する不安は、月々の自由な支出を圧迫しており、「車に回すお金があるなら他の趣味や生活に充てたい」という若者の防衛本能を刺激していると言えるでしょう。
実際の維持費を詳しく見てみましょう。軽自動車の場合、年間維持費の内訳は概ね以下の通りです:
これらを合計すると、地方在住でも年間約25~35万円、都市部では40~60万円にもなります。月額換算では地方で約2~3万円、都市部で3~5万円です。若者が考える予算16,753円では、地方でギリギリ、都市部ではまったく足りないことが分かります。
居住地域と親の援助──二極化する若者のカーライフ
都市部と地方で6.0ポイントの免許保有率格差
若者のカーライフは、住んでいる場所や家族からのバックアップの有無によって、その実態が大きく二極化しています。
運転免許保有率を見ると、都市部では46.8%であるのに対し、地方では52.8%と6.0ポイントの差があります。この差は、公共交通機関の利便性の違いによるものです。
都市部では「公共交通機関で十分」という回答が約3割(29.2%)に達し、マイカーの必要性が相対的に低いことが分かります。Z世代を対象とした別の調査では、都内在住のZ世代の**72.8%**が「若者のクルマ離れを自覚している」と回答しており、2024年比で21.5ポイントも上昇しています。
逆に地方では、公共交通機関の不足により車が「生活必需品」となっているケースが多く、免許取得率も車の保有率も高い傾向にあります。
車の購入額も地域で差──都市部181.1万円 vs 地方169.6万円
実際の車の購入額も、都市部(181.1万円)の方が地方(169.6万円)より11.5万円高くなっています。これは一見矛盾しているように思えますが、駐車場代などの維持コストを含めた負担の差が、購入できる車両の選択にも影響を与えている可能性があります。
都市部では駐車場代が月1~3万円かかるため、その分車両購入予算を抑えたいところですが、実際には都市部の方が所得水準が高いこと、中古車市場が充実していることなどから、やや高めの車両を購入できる傾向があるようです。
親の援助という「生命線」──平均68.3万円の格差
マイカーを持つための資金調達において、親や親戚の存在は無視できません。
車を持っていない層が希望する援助額の平均は106.4万円であるのに対し、実際に所有している人が受けた援助額の平均は68.3万円でした。希望と現実の間には約38万円の開きがあります。
援助額の分布を見ると、約4割(43.9%)が「10万円以下」の援助に留まっているものの、**51万円~100万円もの高額援助を受けている層も20.5%**存在しており、親の経済力が若者のマイカー所有を左右する決定的な要因の一つとなっている現実が透けて見えます。
これは、若者のマイカー所有が「個人の経済力」だけでなく「世帯の経済力」に大きく依存していることを示しています。親からの援助が得られない層は、マイカー所有のハードルがさらに高くなるという「格差の固定化」が進行している可能性があります。
免許保有率51.3%の意味──3年連続下降が示す構造的変化

「免許離れ」は本当に起きているのか
「若者の車離れ」という言葉は、もはや単なる流行語ではなく、統計的な事実として現れています。運転免許保有率は**51.3%**と、3年連続で下降を続けています。
しかし、この数字をどう解釈すべきでしょうか。Z世代を対象とした調査では、約7割が普通自動車免許を取得しているという結果もあります。20歳時点での51.3%という数字は、まだ免許取得年齢に達したばかりであることを考えれば、決して低すぎる数字ではないかもしれません。
実際、別の調査では20歳の免許保有状況について、56.2%が既に保有、6.2%が教習所に通って取得最中、22.4%が時期は未定だが免許を取る予定があるとしており、免許を取るつもりが無い人は15.2%にとどまっています。
「免許離れ」ではなく「取得時期の後ろ倒し」
参議院の調査研究によれば、若者の免許取得率は減少傾向にあるものの、これは必ずしも「免許離れ」を意味しません。むしろ「取得年齢の後ろ倒し」が起きている可能性が指摘されています。
2020年と2001年を比較すると、16~19歳の男性では免許取得率が14ポイント以上減少していますが、30代になると90%以上が免許を保有しています。これは、経済的理由や必要性の欠如により、高校卒業直後ではなく、就職してから、あるいは結婚・出産などのライフイベントに合わせて免許を取得する傾向が強まっていることを示唆しています。
オートマ限定免許の増加──3/4強がAT限定
免許の種類にも変化が見られます。2023年の調査では、普通自動車運転免許保有者全体の3/4強がオートマ限定、2割強がマニュアルとなっています。特に女性では圧倒的にオートマ限定の傾向が強くなっています。
これは自動車の「白物家電化」とも表現される現象で、車が「運転を楽しむ対象」から「移動のための道具」へと位置づけが変わったことを示しています。業界関係者が直面すべき重要な意識変化です。
車は「道具」へ──価値観の変容とステータスシンボルの終焉

51.5%が「単なる移動手段」と回答──自己表現の対象ではなくなった車
業界関係者が直面すべき最大の課題は、若者が車を「自己表現の手段」や「ステータスシンボル(8.4%)」ではなく、**「単なる移動手段としての道具(51.5%)」**と割り切って捉えている点です。
かつて車は、個性やライフスタイルを表現する重要なアイテムでした。「どんな車に乗っているか」が、その人のセンスや経済力を示すバロメーターとされた時代もありました。しかし現代の若者にとって、車はスマートフォンやファッション、趣味などと比べて、自己表現の優先順位が大きく下がっています。
それでも「若者向けの車」への期待は40.0%
一方で、メーカーに対しては「もっと若者向けの車を作ってほしい(40.0%)」という期待や、「サステナブルな車は格好いい(36.1%)」といった新しい価値観への関心も見られます。
これは重要な示唆です。若者は車そのものに興味を失ったわけではなく、「今の車が自分たちのニーズや価値観に合っていない」と感じているのです。経済的に購入可能で、環境にも配慮した、デザイン性の高い車であれば、若者の心を掴む可能性は十分にあります。
購入資金調達の現実──「自分でローン購入」が主流
車を持っている人の購入資金調達方法を見ると、「自分でローン購入」が主流(34.8%)です。一方、購入予定者の**15.8%**が注目しているのが「残価設定クレジット(残クレ)」です。
残クレは、車両価格から数年後の予想残価を差し引いた金額を分割払いする方式で、月々の支払いを抑えられるメリットがあります。初期費用や月々の負担を抑える柔軟な提案が、若者のマイカー所有のハードルを下げる鍵となります。
不安要素トップは「交通事故」──安全性重視の傾向
25.0%が「交通事故が怖い」と回答
購入しない理由の第1位は「交通事故が怖い(25.0%)」です。さらに意識調査では「危険運転に遭遇しないか不安(59.4%)」が挙がっており、若者の安全意識の高さが伺えます。
この結果は、煽り運転や高齢者の暴走事故など、交通事故に関するネガティブなニュースが連日報道される社会状況を反映しています。特にSNSの普及により、ドライブレコーダーの映像などが拡散され、事故の恐ろしさが可視化されやすくなっていることも影響しているでしょう。
ドライブレコーダーの必要性64.7%──安全装備への高い関心
この不安に応えるため、ドライブレコーダーの必要性を感じている人は**64.7%**にのぼります。高度な安全支援システムの標準化・アピールが、若者に対する訴求力を高める重要なポイントとなります。
衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロールなど、先進安全技術(ADAS)の搭載車は、保険料の割引対象となる場合もあり、経済面でもメリットがあります。
安全装備の訴求が若者獲得の鍵
メーカーやディーラーは、安全装備の充実をより積極的にアピールすべきです。「この車なら安心して運転できる」という安心感を提供することが、若者の購買意欲を喚起する重要な要素となります。
所有から利用へ──カーシェア・サブスクの台頭
「カーシェアで十分」が24.6%──所有しない選択肢の拡大
「カーシェアで十分(24.6%)」と考える層に対し、所有と利用のハイブリッドな提案や、将来的な購入に繋げる体験機会の創出が求められます。
カーシェア市場は着実に成長を続けています。2024年のデータによれば、主要5社の合計ステーション数は27,000箇所を超え、車両台数は6万台目前、利用者数は約470万人に達しています。2025年第三四半期には、ステーション数31,973箇所、車両台数69,264台と、さらに拡大しています。
カーシェア市場の成長──年間サイト訪問者900万人超
カーシェアサービスの公式サイト訪問者数は、直近1年間で917万人とほぼ横ばいを維持しており、年間のサイト訪問者は900万人以上という大きな市場規模を形成しています。
訪問者の属性を見ると、男性が約65%を占め、年代別では40~50代が最も多いという意外な結果が出ています。若者専用のサービスではなく、幅広い層に利用されていることが分かります。
サイト訪問のピークは夏(8月)と冬(12~2月)で、旅行・レジャー需要に合わせた利用が多いことが示されています。
自動車サブスクリプション市場──2025年に500億円規模
自動車サブスクリプション市場は、2025年度に500億円規模に達すると予測されています。月々定額で車を利用でき、契約期間中に他車種への変更も可能なこのサービスは、様々な自動車を楽しみたい層や、これまで自動車を所有していなかった層にアプローチしています。
KINTOなどの調査によれば、都内在住のZ世代の43.1%がクルマのサブスクサービスを「知っている」と回答し、認知度は年々上昇しています。「検討したい」「やや検討したい」を合わせると83.8%に達し、潜在的な需要の大きさが伺えます。
ただし、J.D. パワーの調査では、サブスクの認知率は56%に達するものの、実際の利用検討にまで踏み切る人は4%にとどまっているという結果も出ています。認知から利用への転換が、今後の課題となります。
グローバル視点──世界のカーシェア市場は年平均11.8%成長
世界的に見ても、カーシェア市場は成長を続けています。2024年の89億ドルから2033年には244億ドルに達し、年平均成長率**11.8%**と予測されています。
都市化による人口集中、駐車場不足、環境意識の高まり、電気自動車の導入などが成長の要因となっています。日本だけでなく、世界中で「所有から利用へ」のシフトが進行しているのです。
ディーラー・メーカーが取り組むべき5つの戦略
調査結果から見えてきた若者のカーライフの実態を踏まえ、ディーラーやメーカーが取り組むべき方向性を提示します。
① 経済的ハードルの低減──柔軟な購入プランの提供
「自分でローン購入」が主流(34.8%)である中、購入予定者の15.8%が注目している「残価設定クレジット(残クレ)」など、初期費用や月々の負担を抑える柔軟な提案が不可欠です。
また、サブスクリプションサービスやカーリースなど、所有ではなく利用という選択肢を提示することで、若者の心理的・経済的ハードルを下げることができます。
② 安全・安心の強調──先進安全技術の標準化
購入しない理由の第1位に「交通事故が怖い(25.0%)」、意識調査では「危険運転に遭遇しないか不安(59.4%)」が挙がっていることから、ドライブレコーダー(必要性64.7%)や高度な安全支援システムの標準化・アピールが重要です。
単にスペックを羅列するのではなく、「この装備があなたと家族の命を守ります」という、感情に訴えかける訴求が効果的です。
③ 所有以外の選択肢の提示──体験機会の創出
「カーシェアで十分(24.6%)」と考える層に対し、まずは利用してもらい、車の便利さや楽しさを体感してもらう機会を創出することが重要です。
カーシェアやサブスクで気に入った車種があれば、購入に繋がる可能性もあります。「試乗」の延長として、数日間から数週間単位で車を体験できるプログラムを充実させるべきです。
④ 環境配慮とデザイン性の両立──サステナブル車の魅力
「サステナブルな車は格好いい(36.1%)」という新しい価値観への関心が見られます。環境性能とデザイン性を両立した車両開発が、若者の心を掴む鍵となります。
電気自動車やハイブリッド車は、燃費が良く維持費を抑えられるというメリットもあります。「環境に優しく、お財布にも優しい」という二重のメリットを訴求すべきです。
⑤ 若者向け車両の開発──ニーズに応える製品づくり
「もっと若者向けの車を作ってほしい(40.0%)」という期待に応えるため、若者のライフスタイルに合った車両開発が求められます。
コンパクトで価格が手頃、維持費が安く、デザインが良く、先進安全技術が搭載された車。これが若者が求める理想の車です。既存のラインナップの中にそのような車がないのであれば、新規開発を検討すべきです。
データが示す未来予測──2030年代のカーライフ
運転免許保有者数は2040年まで減少傾向
参議院の調査研究によれば、運転免許保有者数は2022年の約7,925万人から、2040年には約7,274万人へと減少すると予測されています。人口減少の影響が大きいですが、若者の免許取得率の低下も一因です。
ただし、保有率(人口に対する免許保有者の割合)は71.6%から71.7%とほぼ横ばいで推移すると見られており、「免許離れ」という言葉が一人歩きしている現状に警鐘を鳴らしています。実態は「人口減少に伴う母数の縮小」であり、若者が免許を取らなくなったわけではないのです。
しかし、母数が減る以上、自動車市場全体のパイが縮小することは避けられません。2030年代以降のビジネスモデルは、「いかに多くの新車を売るか」から、「一台の車をいかに効率よく、長く、多様な形で活用してもらうか」というLTV(顧客生涯価値)重視の戦略へ転換せざるを得ないでしょう。
二極化するモビリティ社会への対応
都市部ではMaaS(Mobility as a Service)の進展により、自家用車の保有は富裕層や趣味層に限られ、一般層はカーシェアやライドシェアへの依存度を高めていくでしょう。
一方で、公共交通機関の維持が困難になる地方部では、自動運転技術を活用した安価な移動手段や、超小型モビリティの普及が生活の足として不可欠になります。 自動車業界は、この「都市部のサービス化」と「地方部のインフラ維持」という異なる二つの課題に対して、別々のアプローチを用意する必要があります。
おわりに:若者の「車離れ」は「諦め」に近い
業界が提示すべき新たな解 今回の調査データから浮かび上がったのは、「車に興味がない若者」の姿ではなく、「経済的な壁に阻まれ、車を持つことを諦めざるを得ない若者」の姿でした。 「必要月収31.8万円」という理想と、「手取り20万円台前半」という現実。そして「購入予算227万円」という希望と、「実勢価格172万円」という妥協。この埋めがたいギャップこそが、若者の車離れの本質です。
しかし、希望はあります。「若者向けの車を作ってほしい」という40%の声や、サステナブルな車への関心、そして高い免許取得意欲は、彼らが決して車を嫌いになったわけではないことを証明しています。 自動車メーカー、ディーラー、そして関連企業に求められているのは、若者の経済状況に寄り添った「持てる(あるいは使える)仕組み」の再構築です。
- 残価設定ローンのさらなる柔軟化
- 中古車を活用した安価なサブスクリプションの提供
- 安全性能を落とさずにコストを抑えたエントリーモデルの開発
- 所有しなくてもカーライフを楽しめるシェアリングサービスの拡充
これらを組み合わせ、若者と車の接点を途切れさせないこと。それが、20年後、30年後の日本のモビリティ社会を守る唯一の道筋となるはずです。


