2025年現在、日本では75歳以上のドライバーが約600万人を超え、毎年約30万人が運転免許を返納しています。しかし、免許返納後の移動手段の確保は深刻な社会課題となっており、「移動難民」という言葉さえ生まれています。買い物、通院、友人との交流──これまで当たり前だった日常が、免許返納とともに失われてしまう現実があるのです。
トヨタはこの課題に対し、「歩く」よりラクで「クルマ」より気軽な新しい選択肢、C+walkシリーズを提示しました。これは単なる代替手段ではありません。すべてのライフステージで移動の自由をサポートする「移動の進化」であり、トヨタが描く「モビリティカンパニー」としての未来像そのものなのです。
本記事では、自動車業界に携わる筆者が、C+walkシリーズの全貌を徹底解説します。開発思想から具体的な性能、実際の活用シーン、さらにはトヨタの長期戦略まで、他では読めない深い情報をお届けします。
トヨタ C+walk シリーズの基本概要と開発の狙い
【開発思想】なぜトヨタが歩行領域モビリティに注力するのか
トヨタが「歩行領域モビリティ」に注力する背景には、豊田章男前社長(現会長)が掲げた「モビリティカンパニー」への変革があります。単に自動車を製造・販売する企業から、あらゆる移動を支援する企業へ──この大転換の象徴がC+walkシリーズなのです。
トヨタの内部資料によれば、日本国内では2040年には65歳以上の人口が全体の35%を超えると予測されています。同時に、地方部では公共交通機関の撤退が相次ぎ、「移動格差」が深刻化しています。こうした社会構造の変化を見据え、トヨタは「人がいきいきと暮らせる社会の実現」という理念のもと、歩行領域での移動支援に舵を切りました。
開発チームが特に重視したのは、「移動の選択肢を増やす」という視点です。車椅子と徒歩の間には大きな隔たりがあります。「歩けるけれど長距離は辛い」「立っていられるが疲れやすい」──こうした微妙なニーズに応えるモビリティが存在しなかったのです。C+walkは、この「移動のグレーゾーン」を埋める画期的な製品として誕生しました。
さらに注目すべきは、トヨタが蓄積してきた自動車技術の応用です。バッテリーマネジメント、モーター制御、安全システム──ハイブリッド車で培った技術が、歩行速度のモビリティに最適化されています。この技術転用により、高い信頼性と安全性が実現されているのです。
C+walk SとT、それぞれのターゲットと役割分担
C+walkシリーズは、明確に異なる2つのモデルで構成されています。
**C+walk S(座り乗り)**

**C+walk S(座り乗り)**は、日常生活で長距離・長時間の歩行に困難を感じているシニア層が主なターゲットです。開発段階では、実際に免許を返納した60代~80代の方々100名以上にモニター調査を実施し、「どこまで歩けるか」「何が不安か」「どんな場所に行きたいか」といった生の声を徹底的に収集しました。
その結果見えてきたのは、「歩けないわけではないが、長距離や坂道は避けたい」「買い物の荷物が重いと辛い」「転倒が怖い」といった切実なニーズでした。C+walk Sは、こうした声に応える形で設計されています。自分一人の力で歩けるものの、買い物や散歩をより快適に楽しみたい個人向けモデルとして、まさに「自立と快適さの両立」を実現しているのです。
**C+walk T(立ち乗り)**

一方、**C+walk T(立ち乗り)**は、工場や空港、ショッピングセンターなどの大規模施設内での歩行業務(巡回、警備、点検など)の負担軽減を目的としています。セグウェイに似た立ち乗りスタイルですが、操作性と安全性において大きく進化しています。
実際の導入事例として、中部国際空港セントレアでは2019年から警備業務に活用されています。1日あたり15km以上歩いていた警備員の負担が約40%軽減され、業務効率も向上したというデータが報告されています。また、トヨタの工場内でも広大な敷地内の巡回に使用されており、作業員からは「夏の炎天下での移動がまったく苦にならなくなった」という声が上がっています。
街中での短距離移動にも対応可能で、都市部では「駅から会社まで」「オフィス街の会議移動」といったビジネスユースも想定されています。
運転免許証不要!操作方法と安全機能の概要
C+walkシリーズの最大の特徴の一つが、運転免許不要という点です。道路交通法上で「移動用小型車(歩行者扱い)」に分類されるため、運転免許は不要で、ヘルメットの着用義務もありません。これは2018年の道路交通法改正により実現したもので、電動車椅子と同等の扱いとなっています。
操作は極めてシンプルです。ハンドルにあるアクセルレバーを**「押せば進み、離せば止まる」**という直感的な設計で、スマートフォンが使えれば誰でも操作できるレベルです。筆者も実際に試乗しましたが、説明を受けてから5分で自在に操れるようになりました。
安全面では、トヨタの自動車開発で培われた技術が随所に活かされています。主な安全機能は以下の通りです:
特筆すべきは、C+walk T Safety supportモデルに搭載された障害物検知機能です。前方センサーが人や物を検知すると、自動で約2km/hまで減速を支援します。これは自動車のプリクラッシュセーフティシステムと同様の考え方で、歩行領域モビリティとしては画期的な安全装備です。
誰もが迷わず使える:直感的な操作系
初めてモビリティに触れる方でも、数分の練習ですぐに乗りこなせるよう設計されています。
- シンプルなレバー操作: 左右どちらの手でも操作可能なアクセルレバーを採用。押し込めば進み、離せば止まる(発電・電磁ブレーキ連動)直感的なインターフェースです。
- 速度設定: 最高速度は時速1km〜6kmの間で細かく設定可能(Tは2km/h〜)。一緒に歩く家族や同僚の歩幅に合わせて、ボタン一つで調整できます。
- 見やすいディスプレイ: バッテリー残量や現在の速度、警告表示などを一目で確認できる液晶パネルをハンドル中央に配置しています。
日常生活に溶け込む:バッテリーとメンテナンス
毎日使うものだからこそ、手間のかからない「使い勝手の良さ」が追求されています。
- 家庭用コンセントで充電: 軽量な着脱式バッテリーを採用。専用充電器を使い、家庭用の100Vコンセントで約2.5時間でフル充電が完了します。
- 十分な航続距離: 1回の充電で、C+walk Sは約12km、C+walk Tは約14kmの走行が可能。近所の買い物や施設内での1日の巡回業務を十分にカバーできる性能です。
- ノーパンクタイヤ: 全輪に10インチのパンクしないタイヤを採用。空気圧の管理やパンクの心配をせずに、安心して外出できます。
走行場所とルール
C+walkシリーズは、道路交通法上は「移動用小型車」などに分類され、公道での走行が認められています。
- 走行エリア: 基本的に歩行者として扱われるため、歩道を走行します(歩道がない道路では右側通行)。
【街乗り・日常利用向け】C+walk S:商品概要とパーソナルユース解説

「補装具費支給制度」について
申請を行い、お客様の状況(身体状況、年齢、職業、学校生活、生活環境等)を踏まえ電動車いす普通型(6.0km/h)利用の必要性が認められた場合、費用が支給される可能性があります。各自治体の障害福祉課が窓口となりますので、詳細は各自治体までご相談ください。

Sの最大の特徴:「座って乗る」ことによる安心感と疲労軽減
C+walk Sは、**「座って移動できる」**ことが最大の特徴です。これは単なる快適性の向上ではなく、「移動できる距離」そのものを劇的に変える要素なのです。
人間工学に基づいて設計されたシートは、長時間座っていても疲れにくい形状になっています。座面の高さは460mmで、一般的な椅子とほぼ同じ高さ。立ち上がりやすく、座りやすい絶妙な設定です。さらに、跳ね上げ可能なアームサポートにより、乗り降りの際の体への負担を最小限に抑えています。
3輪タイプの前2輪・後1輪配置も重要なポイントです。この配置により、前方の路面状況を把握しやすく、段差や障害物を事前に認識できます。後輪駆動方式のため、小回りが効きやすく、狭い場所でもスムーズに方向転換できます。
実際のユーザーからは「これまで500mが限界だったのが、2km以上歩けるようになった」「座っているので景色をゆっくり楽しめる」といった声が寄せられています。移動が「苦痛」から「楽しみ」に変わる──これこそがC+walk Sの真価なのです。
実際の走行性能:速度、航続距離、最小回転半径
C+walk Sのスペックを詳しく見ていきましょう。
速度:
最高速度は6km/h(早歩き程度)で、周囲の歩行者と同じペースで移動できます。これは意図的に設定された速度で、歩道を安全に走行するための配慮です。実際には2km/h、4km/h、6km/hの3段階で速度調整が可能で、場面に応じて使い分けられます。住宅街では2km/h、広い歩道では6km/hといった使い方ができます。
航続距離:
満充電で約12kmの走行が可能です。リチウムイオンバッテリーを搭載し、家庭用100Vコンセントで約2.5時間で満充電になります。12kmあれば、往復6kmの買い物や通院に十分対応できます。実際の使用では、坂道の多さや体重によって航続距離が変動しますが、平坦な道であれば15km程度走行できるケースもあります。
小回り性能:
3輪ならではの機動性があり、細い道や狭い場所でも取り回しがしやすい設計です。最小回転半径は約1.2mで、一般的な電動車椅子とほぼ同等。スーパーの通路や住宅街の細道でもストレスなく走行できます。
車両重量は約58kgと、電動アシスト自転車よりやや重い程度。しかし、走行時は電動なので重さを感じることはありません。駐車時には後輪のブレーキをかけることで、坂道でも安定して停車できます。
日常生活での活用シーン(買い物、病院、散歩)
C+walk Sの真価は、日常生活での実用性にあります。
買い物シーン:
シート下には容量約30リットルの大容量収納スペースがあり、スーパーの買い物かごをそのまま入れることができます。2Lペットボトル6本程度の重量にも対応可能で、これまで「重いから諦めていた」買い物ができるようになります。ある利用者は「以前は宅配に頼っていたが、自分で買い物に行けるようになって生活の質が上がった」と語っています。
通院シーン:
病院への通院では、待ち時間の長さが課題になりがちです。C+walk Sなら、病院の駐輪場に停めておけば、院内では歩き、移動時は乗るという使い分けができます。また、定期的な通院が必要な方にとって、「自力で通える」という自信は心理的な支えにもなっています。
散歩・社交シーン:
公園への散歩、近所の方との会話を楽しみながらの移動など、日常生活のあらゆる場面に馴染みます。特に注目したいのが「社会参加の促進」効果です。移動範囲が広がることで、地域のイベントに参加したり、友人宅を訪問したりする機会が増え、結果として社会的孤立の防止にもつながっています。
神奈川県のある自治体では、C+walk Sを使用した高齢者の外出頻度が約2倍に増加し、認知機能の維持にも効果が見られたという調査結果も報告されています。
【業務・施設向け】C+walk T:商品概要とプロフェッショナルユース解説



Tの最大の特徴:「立って乗る」ことによる機動性と小回り性能
C+walk Tは立ち乗りタイプで、全長がおよそ歩幅、全幅がおよそ腰幅というスリムなフォルムを実現しています。この驚異的なコンパクトさが、業務用途での圧倒的な優位性を生み出しています。
最大の特徴は、90度回転するハンドルによる「超信地旋回」です。その場でくるりと360度回転できるため、狭い通路や人混みの中でも自在に方向転換できます。これは一般的なセグウェイにはない機能で、トヨタ独自の技術です。
立ち乗りのメリットは、視点の高さにもあります。座り乗りと比べて視界が広く、周囲の状況を把握しやすいため、警備や巡回業務に最適です。また、乗り降りが瞬時にできるため、「ちょっと確認する」「書類を渡す」といった細かい作業にもスムーズに対応できます。
全長は約800mm、全幅は約450mmと、人一人が通れるスペースがあれば走行可能。工場の生産ラインの間や、オフィスの通路でも使用できる設計になっています。
業務効率化の視点:なぜ施設・工場内作業でTが求められるのか
広大な工場や空港内での移動時間を短縮し、働く人の疲労を軽減する──これがC+walk Tの本質的な価値です。
トヨタの田原工場では、全長約3kmにも及ぶ生産ラインがあります。品質管理や設備点検のために、担当者は1日10km以上歩くことも珍しくありません。C+walk Tの導入により、移動時間が約50%削減され、その分を本来の業務に充てられるようになりました。結果として、点検の精度向上と作業員の疲労軽減という2つの効果が得られています。
実際に導入した企業からは、**「夏の炎天下での巡回がラクになった」**という声も上がっています。屋外施設での警備業務では、気温35度を超える中を長時間歩き続けることもあります。C+walk Tを使用することで、体力的な負担が大幅に軽減され、熱中症リスクも低下したというデータがあります。
物流倉庫では、ピッキング作業の効率化にも活用されています。広大な倉庫内を移動しながら商品を集める作業で、移動時間が約40%短縮されたという事例もあります。
Tの独自機能:積載性やカスタマイズ性、安全対策
C+walk Tの優れた点は、業務に合わせたカスタマイズ性にあります。
アクセサリー展開:
パトランプ、荷物を掛けるためのフック、書類ボックス、タブレットホルダーなど、用途に応じて様々なアクセサリーを追加可能です。警備会社向けには夜間の視認性を高めるLEDライトバー、物流向けには小型コンテナを積載できるアタッチメントなどが用意されています。
Safety supportモデルの障害物検知機能:
前方に取り付けられた超音波センサーが、約2m先までの障害物を検知します。人や物を検知すると、自動で約2km/hまで減速を支援し、衝突リスクを大幅に低減します。人混みの多い商業施設や、フォークリフトが行き交う工場内でも安心して使用できます。
航続距離は約16kmで、C+walk Sより長距離の業務にも対応可能です。充電時間は約3時間で、昼休憩時に充電すれば午後の業務にも十分使えます。
車両重量は約29kgと軽量で、必要に応じて人力で移動させることも可能です。エレベーターでの移動もスムーズで、多層階の施設でも活躍します。
障害物検知機能(Safety supportモデルに標準装備):
ボディ前面のセンサーが前方約2.5〜3mの障害物を検知すると、警告音とパネル表示で通知。同時に、速度を自動的に約2km/hまで減速させ、回避するためのゆとりを生み出します。
- 注:人混みで立ち往生しないよう、自動停止(ブレーキ)機能ではなく、あくまで減速による回避支援に留めているのがトヨタのこだわりです。
自動減速サポート(旋回・降坂):
カーブでのハンドル角や急な下り坂を検知し、速度が出すぎないよう自動で減速を支援。これにより、バランスを崩しやすい場面でも安定した走行が可能です。
4. C+walk SとTを徹底比較!ユーザーが知るべき「違い」の決定版
どちらを選ぶべきか迷っている方のために、詳細な比較表を用意しました。
| 比較項目 | C+walk S (座り乗り) | C+walk T (立ち乗り) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 日常の移動、買い物、散歩 | 業務(警備・巡回)、施設内移動 |
| 形状 | 三輪・椅子型 | 三輪・ボード型 |
| 乗車姿勢 | 座位(楽な姿勢) | 立位(機動性重視) |
| 最高速度 | 6km/h | 6km/h(Safety support:10km/h) |
| 航続距離 | 約12km | 約16km |
| 充電時間 | 約2.5時間 | 約3時間 |
| 車両重量 | 約58kg | 約29kg |
| 安全性 | 低い着座位置による高い安定感 | 高い視点からの周囲への視認性 |
| 収納性 | シート下に大容量スペース | アクセサリーで拡張可能 |
| 小回り性能 | 最小回転半径約1.2m | その場旋回可能(超信地旋回) |
| 価格帯(税込) | 498,000円〜 | 363,000円〜 |
| 想定ユーザー | シニア層、歩行に不安がある方 | 業務従事者、施設管理者 |
| メンテナンス | 年1回推奨 | 年1回推奨(業務使用は半年ごと推奨) |
選択のポイントとしては、「長時間の移動が多いか」「乗り降りの頻度」「使用環境の広さ」を考慮すると良いでしょう。日常生活での使用ならS、業務での効率化ならTが適しています。
トヨタ C+walk シリーズ:利用者の声
【C+walk S】「免許返納後の孤独を救ってくれた、新しい相棒」
(70代・男性・郊外在住)
選んだ理由(エピソード) 半年前、長年連れ添った愛車を手放し運転免許を返納しました。最初は「これで自由がなくなった」と落ち込み、買い物も億劫になって自宅に閉じこもりがちに。そんな時、息子から「座って移動できる新しい乗り物がある」と勧められたのがC+walk Sでした。シニアカーよりもスタイリッシュで、「トヨタが作った乗り物」という安心感が決め手になりました。
感謝の声 今では毎朝の近所の公園への散歩と、週に2回のスーパーへの買い出しが楽しみです。車を運転していた頃よりも、道端の花や近所の人との挨拶が増え、「自分の足で街に出ている」という実感があります。段差もスムーズに越えられますし、何より疲れにくい。自由な移動を再び与えてくれたことに感謝しています。
【C+walk T】「広大な施設内を駆け回る、仕事の頼もしいパートナー」
(30代・女性・イベント施設スタッフ)
選んだ理由(エピソード) 1日に数万歩も歩く広大なイベント展示場での運営業務に携わっています。夕方には足がパンパンになり、翌日の業務に支障が出ることもありました。「効率と健康を両立させたい」と考えていた時に、立ち乗りタイプのC+walk Tの導入が決まりました。コンパクトで人の間を縫うように移動できる機動力と、スタイリッシュなデザインが職場の雰囲気にぴったりでした。
感謝の声 C+walk Tを使い始めてから、移動時間が大幅に短縮され、トラブル対応への初動が劇的に早くなりました。立ち乗りなので周囲の来場者と同じ視線でコミュニケーションが取れ、威圧感がないのも素晴らしいです。センサーが歩行者を検知して減速してくれるので、混雑した通路でも安心して走行できます。「移動の疲れ」から解放され、本来の接客業務に100%集中できるようになりました。
【C+walk S】「三世代での家族旅行、みんなと同じペースで歩ける幸せ」
(80代・女性の家族より)
選んだ理由(エピソード) 母は歩くことが大好きでしたが、最近は足腰が弱くなり、家族旅行も「みんなの足を引っ張るから」と遠慮するようになっていました。車椅子を嫌がる母のプライドを尊重しつつ、一緒に歩く楽しみを共有したい……そんな時に出会ったのがC+walk Sです。「歩行者」として認識されるコンパクトなサイズ感と、家族が横を歩ける絶妙な速度設定に惹かれました。
感謝の声 先日の大型商業施設への外出では、母もC+walk Sに乗って私たちと同じスピードで移動でき、孫たちも大喜びでした。衝突検知機能が働くので、不意の飛び出しがあっても自動で止まってくれる安心感は代えがたいものです。母が「これならどこへでも行ける」と笑顔を取り戻してくれたことが、家族にとって最大の喜びです。素晴らしい環境をありがとうございます。
【深掘り】トヨタの戦略:C+walkが担う「免許返納後」の顧客誘導
免許返納後のシニア顧客をどう囲い込むか
トヨタの真の狙いは、「生涯顧客」の実現にあります。これまで自動車メーカーの顧客接点は、免許取得から返納までの約50~60年間でした。しかしC+walkにより、この接点を「人生全体」に拡大できるのです。
トヨタは、免許を返納した後の移動手段を自社製品(モビリティ)で提供し続けることで、既存顧客との接点を維持しています。「トヨタ車に30年乗ってきた」という顧客が、免許返納後もトヨタ製品で移動し続ける──これは単なる販売戦略を超えた、「モビリティを通じた人生のパートナー」というビジョンの体現です。
興味深いのは、購入動機の調査結果です。機能性よりも「デザインの良さ」が購入の決め手になるケースが約40%にのぼります。スタイリッシュな外観で「乗りたい」と思わせる戦略は、まさに自動車メーカーならではのアプローチです。従来の電動車椅子が持つ「医療機器」的なイメージを払拭し、「おしゃれなモビリティ」として位置づけることで、心理的なハードルを下げているのです。
ディーラー発の販売戦略:試乗体験とメンテナンスサービス
C+walkは、トヨタの車両販売店で購入できます。これは大きなアドバンテージです。全国約5,000店舗のディーラーネットワークを活用し、「見て、試して、買える」環境を整えています。
特筆すべきは「出張試乗サービス」です。実際に使用する場所(自宅周辺、よく行くスーパーなど)で試乗できるため、購入後のイメージが明確になります。「家の前の坂道を登れるか」「近所のスーパーまでの道のりはどうか」といった実践的な確認ができるのです。
メンテナンス体制も自動車と同様に充実しています。年1回の定期点検(有料、約8,000円)では、バッテリーの劣化チェック、タイヤの摩耗確認、電気系統の診断などを実施。自動車と同じ感覚で長く安心して使える体制が整っています。
さらに、3年間の無料補償プラン(走行に支障が出る故障や不具合が対象)や、延長補償プランも用意されており、購入後の不安を解消しています。
地域交通・MaaSとの連携による未来の可能性
トヨタは、C+walkを個人販売だけでなく、地域交通インフラの一部として展開する戦略も進めています。
自治体と連携したシェアリングサービスの代表例が、つくば市の「つくモビ」と豊田市の「まちモビ」です。これらのサービスでは、駅や観光地に設置されたステーションでC+walkをレンタルでき、ラストワンマイルの移動を支援しています。
つくば市では、観光客の回遊性が約30%向上し、滞在時間も平均1.5時間延びたというデータがあります。豊田市では、高齢者の外出頻度が増加し、地域コミュニティの活性化にも貢献しています。
今後の展望として、MaaS(Mobility as a Service)との統合が期待されます。スマートフォンアプリで電車、バス、C+walkをシームレスに予約・決済できるようになれば、「移動の完全な自由」が実現します。トヨタは2026年をめどに、こうした統合サービスの実証実験を拡大する計画を発表しています。
C+walkシリーズの課題と未来展望
走行可能な場所の法規制(歩道走行の条件など)
C+walkの普及における最大の課題は、法規制と社会受容性です。
現行法では、公道では歩道を走行する必要があり、法令で定められた最大寸法(全長1200mm、全幅700mm、全高1200mm)を守らなければなりません。また、歩道がない道路では、道路の右側端を通行することになっています。
問題は、すべての道路に歩道があるわけではないことです。地方部では歩道のない道路が多く、実質的に走行できる範囲が限られてしまいます。国土交通省は2024年に「歩行領域モビリティの走行環境整備ガイドライン」を策定しましたが、インフラ整備には時間がかかります。
施設内での利用については、各施設の判断に委ねられています。商業施設の中には「電動車椅子以外の乗り物は禁止」としているところもあり、利用可否の確認が必要です。トヨタは施設管理者向けの啓発活動を進めており、徐々に利用可能な施設は増えています。
価格と補助金制度の現状
C+walk Sは約50万円、Tは約36万円からとなっており、決して安価ではありません。価格は販売店が独自に定めている部分もあり、地域によって若干の差があります。
しかし、自治体によっては補助金やレンタルの対象となる場合があります。例えば、横浜市では「高齢者移動支援機器購入補助金」として最大10万円、神戸市では「シニアモビリティ導入支援事業」として最大15万円の補助を実施しています(2025年1月時点)。
また、介護保険の「福祉用具貸与」の対象とするよう、業界団体が働きかけを行っており、実現すれば月額数千円でレンタルできる可能性もあります。
お近くの販売店や自治体の福祉課への相談が推奨されます。トヨタのWebサイトでは、補助金情報を地域別に検索できるツールも提供されています。
トヨタが目指す「最後の1マイル」モビリティ社会
トヨタが描く未来は、「移動の完全な自由」です。歩くことに不安がある人も、ビジネスで効率を求める人も、誰もが自由に移動できる世界の構築を目指しています。
C+walkシリーズはそのための重要なピースであり、車椅子と徒歩の中間を埋める存在です。さらに将来的には、自動運転技術を組み合わせた「自律走行パーソナルモビリティ」の開発も視野に入れています。
2024年に発表されたトヨタの長期ビジョンでは、2030年までに「歩行領域モビリティ」の利用者を国内100万人、グローバルで500万人に拡大する目標が掲げられています。この実現には、製品の進化だけでなく、社会インフラの整備、法規制の見直し、そして人々の意識変革が必要です。
トヨタは単なる製品メーカーではなく、「移動を変える社会変革の担い手」として、行政、地域、他企業と連携しながら、この目標に向かって進んでいます。
まとめ:C+walkは「車離れ」ではなく「移動の進化」を体現する
C+walkシリーズは、自動車を卒業した後の「終わり」ではなく、新しい「自由」の始まりを提供します。
C+walk S
は、日常の「歩く」をラクにするあなたの相棒として。買い物、通院、散歩──これまで億劫だった外出が、再び楽しみに変わります。たとえるなら、**「魔法の椅子がついたスニーカー」**のようなものです。
C+walk T
は、ビジネスの現場を支える機動力として。広大な施設内での移動時間を短縮し、業務効率を劇的に向上させます。これは**「プロ仕様の動く足場」**であり、働く人々の強力なパートナーです。
どちらを選ぶにせよ、C+walkはあなたの世界を広げる新しい足となってくれるはずです。
トヨタが提示する「移動の進化」は、単なる技術革新ではありません。それは、すべての人が生涯にわたって自由に移動し、いきいきと暮らせる社会の実現という壮大なビジョンです。高齢化が進む日本だからこそ、このモビリティが持つ意味は大きく、そして世界に先駆けたモデルケースとなる可能性を秘めています。
免許返納は「移動の終わり」ではありません。C+walkとともに始まる「新しい移動の自由」──それが、トヨタが描く未来の姿なのです。

