未来が現実に!スロバキア発・空飛ぶクルマ「AirCar」とは?価格や実用化の鍵を徹底解説

新車情報

子供の頃、誰もが一度は夢見た「空飛ぶクルマ」。SF映画の世界だったその乗り物が、今、現実のものとなろうとしています。その先頭を走る一社が、スロバキアの「Klein Vision」社です。

「AirCar」は、単なるコンセプトカーではありません。実際に空を飛び、地上を走り、そして世界で初めて「耐空証明」を取得した、まさに未来を予感させる一台です。

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「AirCar」とは? – 車が翼を広げる瞬間

「AirCar」は、見た目はスタイリッシュなスポーツカー、しかしボタン一つでわずか3分以内に翼と尾翼を広げ、飛行機へと姿を変える、まさに夢のハイブリッドマシンです。

開発元はスロバキアの「Klein Vision」

AirCarを開発したのは、スロバキアに拠点を置く「Klein Vision」社。創設者であるシュテファン・クライン氏は、長年にわたり空飛ぶクルマの研究開発に情熱を注いできた人物です。彼のビジョンと技術力が結集し、AirCarは誕生しました。

驚きの変形プロセスと性能

AirCarの最大の特徴は、そのスムーズな変形プロセスです。

  1. ボタン操作: ドライバーはボタンを押すだけ。
  2. 変形開始: 車体後部がスライドし、折りたたまれた翼が現れます。
  3. 翼の展開: 翼が自動的に展開され、尾翼も所定の位置にセットされます。
  4. 飛行モードへ: 約3分で、スポーツカーは空を飛ぶ準備が整った飛行機へと変身します。

その性能も驚異的です。

  • 定員: 2名
  • エンジン: BMW製エンジン搭載(ハイオクガソリン使用可)
  • 飛行速度: 巡航速度 約225km/h ~ 290km/h
  • 航続距離: 約1000km
  • 離陸滑走距離: 約300m~350m
  • 変形時間: 3分以内

世界初の「耐空証明」取得 – 安全性の証明

AirCarは、単に飛べるだけではありません。2022年1月、スロバキア運輸局から**「耐空証明」**を取得しました。これは、欧州航空安全機関(EASA)の基準*1に準拠したもので、航空機としての安全性と信頼性が公的に認められたことを意味します。

この証明取得のために、70時間以上の飛行試験と200回以上の離着陸テストが繰り返されました。2021年には、実際にニトラ空港から首都ブラチスラヴァ空港までの都市間飛行(約35分)にも成功しており、その実用性を証明しています。

「AirCar」が拓く未来 – 移動は次のステージへ

AirCarの実用化は、私たちの移動に革命をもたらす可能性を秘めています。

  • 交通渋滞からの解放: 地上の渋滞を避け、空路で目的地へ一直線。移動時間が劇的に短縮されます。
  • 新たな移動体験: ドライブの延長線上で、気軽に空の旅を楽しめるようになります。
  • 多様な活用シーン: 個人利用はもちろん、エアタクシー、救急輸送、災害時の物資輸送など、幅広い分野での活躍が期待されます。

すでに2024年には、中国企業へ技術ライセンスが供与されるなど、グローバルな展開も始まっています。

気になる価格と実用化へのハードル

夢のようなAirCarですが、実用化にはまだいくつかの課題があります。

  • 価格: 一部の報道によると、価格は約1億1500万円からとされており、現時点では富裕層向けの乗り物となりそうです。量産化によるコストダウンが今後の普及の鍵となります。
  • 法整備: 各国で空飛ぶクルマに関する法規制や、運航ルールの整備が必要です。AirCarはEASA基準に準拠していますが、世界中で飛行するためには各国の認証取得が不可欠です。
  • インフラ整備: 離着陸に必要な滑走路や、空の交通管制システムの構築が求められます。ガソリンスタンドで給油できる点は大きなメリットですが、専用の離着陸ポート(バーティポート)の整備も議論されています。
  • 社会的受容性: 空飛ぶクルマが日常的に空を飛ぶことに対する社会の理解や、騒音問題への対策も必要となります。

まとめ

スロバキアのKlein Visionが開発した「AirCar」は、車から飛行機へと変身する、まさに未来の乗り物です。すでに耐空証明を取得し、都市間飛行にも成功するなど、実用化に向けて着実に歩を進めています。

価格や法整備、インフラなどの課題は残るものの、AirCarがもたらす移動革命への期待は高まるばかりです。渋滞のない空を自由に移動できる日が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。今後のAirCarの動向から目が離せません。

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*1欧州航空安全機関(EASA)の基準

欧州航空安全機関(EASA)とは? – 欧州の空の安全を守る番人

欧州航空安全機関(EASA: European Union Aviation Safety Agency)は、欧州連合(EU)における民間航空分野の安全と環境保護に関する規制と執行を担当する専門機関です。ドイツのケルンに本部を置き、欧州の空における高い安全基準を確立し、維持することを主な目的としています。

EASAの主な役割

EASAは、航空に関するあらゆる側面をカバーする、非常に広範な役割を担っています。

  1. 規則の策定: 航空機の設計、製造、保守、運用、パイロットのライセンス、航空管制など、航空安全に関する**統一された規則(基準)**を作成します。これらの規則はEU加盟国で法的拘束力を持ちます。
  2. 認証(Certification): 航空機(Airbusなど)、エンジン、プロペラ、その他の部品が、定められた安全基準(耐空基準)を満たしていることを証明する**「型式証明」**を発行します。Klein Vision社の「AirCar」が取得した耐空証明も、EASAの基準に基づいてスロバキア当局が発行したものです。
  3. 監督と監査: EU加盟国の航空当局や、航空関連企業(航空会社、整備工場、製造業者など)が、EASAの規則を適切に遵守しているかを**監視し、検査(監査)**します。
  4. 外国事業者の認可: EU域内に乗り入れる第三国の航空会社などに対する安全評価と認可を行います。
  5. 調査と研究: 航空事故の防止や安全性の向上のため、技術的な調査や研究活動を行います。
  6. 国際協力: 米国連邦航空局(FAA)など、世界中の航空当局と協力し、国際的な安全基準の調和を図ります。
EASA基準の重要性

EASAが定める基準は、世界で最も厳しいものの一つとして知られています。

  • 高い安全性: EASAの基準を満たすことは、その航空機やシステムが非常に高いレベルの安全性を確保していることを意味します。
  • 国際的な信頼性: EASAの認証は世界的に広く認知されており、EASAの基準をクリアすることは、国際市場での信頼性と競争力を高める上で非常に重要です。
  • 統一された市場: EU域内で統一された基準を設けることで、航空機や部品、サービスの自由な流通を促進し、欧州の航空産業全体の発展に貢献しています。
新しい技術への対応(空飛ぶクルマなど)

近年、EASAは「空飛ぶクルマ」やドローン(UAS)といった新しい航空モビリティの登場にも積極的に対応しています。これらの新しい技術に対しても、安全性を確保するための特別な認証基準や運用規則の策定を進めており、AirCarのような機体が安全に空を飛ぶための道筋をつけています。

簡単に言えば、EASAは「欧州の空の安全に関するルールを作り、それが守られているかをチェックし、新しい乗り物にも対応する、信頼できる機関」であり、その基準は世界の航空安全の指標となっています。

日本の空飛ぶクルマの現状

大阪万博で披露されている「空飛ぶクルマ」。今回故障によるトラブルが発生し話題になっています。

スロバキアの「Klein Vision」社は大阪万博の空飛ぶクルマは、「空飛ぶクルマと言うには程遠いではないか」と否定的な意見をのべています。

日本に於いて安全性や公共性、日常的に活用するという目的として考えるならば、遥かにドローンのような滑走路を必要としない省スペースで運用できる移動手段を「クルマ」と仮定することができます。真の「空飛ぶクルマ」は日本で開発されているような形態が近未来に於いてもふさわしいのでないかと考えます。