日本カー・オブ・ザ・イヤー2026-2027 大賞予想 ― 10ベストを現場目線で採点

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はじめに ― 「賞を取る車」と「売れる車」は、同じではありません

2026年11月2日、第47回となる「日本カー・オブ・ザ・イヤー2026-2027」の10ベストカーが発表されました。ノミネート33台の中から、自動車評論家・ジャーナリストを中心とする選考委員58名の投票で選ばれた10台です。12月3日の最終選考会で、いよいよ「今年の1台」が決まります。

毎年この時期になると、各メディアに「大賞予想」が並びます。走りの質感、技術の新しさ、デザインの革新性。どれも大切な評価軸ですし、選考委員の方々の見識には敬意を払っています。

ただ、46年間この業界に身を置いてきた業界関係者として、ずっと感じてきたことがあります。それは、審査員が語る評価軸と、販売の現場で本当に問われる評価軸は、かなりの部分で重ならないということです。

現場が見ているのは「その後の5年」です

試乗会のクルマは、どれも新車の一番いい状態です。一方で、私たち業界の人間が向き合うのは、お客様がそのクルマを買ってから手放すまでの数年間です。

  • そのクルマは、説明が少なくても「欲しい」と言っていただけるか
  • 注文をいただいてから、約束どおりの時期にお届けできるか
  • 3年後・5年後に乗り換えるとき、下取り価格でお客様をがっかりさせないか
  • 点検や修理で入庫したとき、整備の現場が困らないか
  • 万一トラブルが起きたとき、販売・サービス網で受け止められるか

こうした項目は、カタログにもジャーナリストの試乗記にもほとんど出てきません。しかし、お客様の満足度を最終的に左右するのは、実はこちらの方だと私は考えています。

この記事でお伝えすること

本記事では、10ベストカー全車について、次の二つの目線から採点を行います。

  1. 賞レース目線:
    選考委員がどこを評価しそうか、過去の受賞傾向からの読み
  2. 販売現場目線:
    売りやすさ、下取り・リセールの強さ、供給と納期、整備・アフター体制、客層の広さ

そのうえで、大賞・インポート・カー・オブ・ザ・イヤー・デザイン賞・テクノロジー賞の予想をお示しし、最後に「売れる車と賞を取る車の違い」について、現場の経験から掘り下げます。

なお、各車の価格や諸元は2026年11月上旬時点で公表されている情報にもとづいています。下取りやリセールに関する見立ては、過去の市場動向と現場感覚にもとづく筆者の予想であり、将来の相場を保証するものではありません。この点はあらかじめご了承ください。

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  1. 2026-2027年度の選考スケジュールと10ベストの顔ぶれ
    1. 選考スケジュール
    2. 10ベストカー一覧(ノミネート順)
    3. 今年の10ベストから読み取れる三つの傾向
      1. 傾向1:BEVが過半数、しかも「軽EV」が2台
      2. 傾向2:国産はe-POWERとハイブリッドが厚い
      3. 傾向3:輸入車は「フラッグシップ」と「新しい使い方」
    4. 過去の受賞傾向もおさらい
  2. 採点のものさし ― 審査員の軸と、販売現場の軸
    1. 審査員(選考委員)が重視しやすい軸
    2. 販売現場が本当に見ている5つの軸
      1. ① 売りやすさ(説明コストの低さ)
      2. ② 下取り・リセールの強さ
      3. ③ 供給と納期
      4. ④ 整備性とアフター体制
      5. ⑤ 客層の広さ
    3. 二つのものさしは、なぜズレるのか
  3. 国産6台を現場目線で採点
    1. スズキ e SKY ― 「EVである前に軽自動車」を貫いた等身大のEV
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    2. トヨタ RAV4 ― 完成度は文句なし、最大の弱点は「買えないこと」
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    3. 日産 エルグランド ― 16年ぶりの挑戦、相手は「王者」
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    4. 日産 キックス ― 300万円を切る第3世代e-POWERという「入口」
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    5. ホンダ Super-ONE ― 理屈抜きで「欲しい」と言わせるEV
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    6. マツダ CX-5 ― 「330万円から」が持つ破壊力
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
  4. 輸入4台を現場目線で採点
    1. BMW iX3 ― 航続906km、次の100年を告げる技術の旗艦
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    2. BYD ラッコ ― 黒船は「軽のど真ん中」に来た
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    3. Kia PV5 ― 乗用と商用の境界を溶かす「プラットフォーム」
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
    4. ボルボ ES90 ― セダンでもSUVでもない、新しいフラッグシップの形
      1. 概要
      2. 審査員が評価しそうなポイント
      3. 販売現場から見た評価
      4. 整備の現場から一言
      5. 採点
  5. 採点結果一覧と、業界関係者の大賞予想
    1. 10台の採点一覧(現場評価の高い順)
    2. 選考の仕組みから読む「勝ち方」
    3. 日本カー・オブ・ザ・イヤー(大賞)予想
      1. 本命:ホンダ Super-ONE
      2. 対抗:トヨタ RAV4
      3. 単穴:スズキ e SKY
      4. 大穴:BYD ラッコ
    4. インポート・カー・オブ・ザ・イヤー予想
    5. デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー予想
    6. テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー予想
  6. 売れる車と賞を取る車は、どこが違うのか
    1. 違い1:評価の「時間軸」が違う
    2. 違い2:「新しさ」は、現場では「説明の手間」になる
    3. 違い3:「下取り」は、次の1台を決める見えない価格
    4. 違い4:「供給」は、どんな名車も止めてしまう
    5. 違い5:販売・サービス網の「近さ」
    6. それでも、賞には大きな意味がある
  7. まとめ ― 12月3日は「二つの目線」で楽しんでください
    1. 本記事のポイント
    2. これからクルマを選ぶ方へ
  8. 参考資料

2026-2027年度の選考スケジュールと10ベストの顔ぶれ

今年の10ベストは「電気自動車が6台」という、過去に例のない構成になりました。まずは前提となる情報を整理しておきます。

選考スケジュール

項 目内 容
対象期間2025年11月1日~2026年10月31日に国内で発表・発売された乗用車
ノミネート33台(国産12台・輸入21台)
選考委員58名
10ベスト発表2026年11月2日
10ベストカー取材会2026年11月18日(袖ケ浦フォレストレースウェイ)
最終選考会2026年12月3日(木)14時~(横浜市都筑区・ボッシュホール)、公式YouTubeで配信予定
決定する賞●日本カー・オブ・ザ・イヤー●インポート・カー・オブ・ザ・イヤー●デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー、●テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー

10ベストカー一覧(ノミネート順)

車 名日本発売車両本体価格(税込)パワートレイン
スズキ e SKY2026年11月16日212万~279万円BEV(軽)
トヨタ RAV4HEV 2025年12月/PHEV 2026年3月450万~630万円HEV・PHEV
日産 エルグランド2026年7月16日689万7000円~e-POWER(全車e-4ORCE)
日産 キックス2026年6月18日299万9700円~424万8200円e-POWER
ホンダ Super-ONE2026年5月22日339万200円BEV(小型)
マツダ CX-52026年5月21日330万~430万6500円2.5L+マイルドHV
BMW iX32026年7月22日982万~1034万円BEV
BYD ラッコ2026年7月28日214万5000円~249万7000円BEV(軽)
Kia PV52026年5月(乗用はパッセンジャー)679万~769万円(パッセンジャー)BEV
ボルボ ES902026年7月8日979万~1229万円BEV

今年の10ベストから読み取れる三つの傾向

傾向1:BEVが過半数、しかも「軽EV」が2台

10台のうち6台がBEVです。しかもスズキ e SKYとBYD ラッコという、国内メーカーと海外メーカーの軽EVが同時に名を連ねました。ラッコは、海外メーカーが日本の軽規格に合わせて専用設計したEVとして初の市販車です。軽自動車という「日本だけのカテゴリー」が、電動化の主戦場になりつつあることを象徴する顔ぶれだと言えます。

傾向2:国産はe-POWERとハイブリッドが厚い

国産6台のうち、日産はエルグランドとキックスの2台を送り込み、どちらも第3世代e-POWERを搭載しています。トヨタRAV4は新世代のPHEVを、マツダCX-5はマイルドハイブリッドを採用しました。「BEVだけが答えではない」という日本メーカーの現実解が、きちんと評価されていると感じます。

傾向3:輸入車は「フラッグシップ」と「新しい使い方」

輸入4台は、BMW iX3(ノイエ・クラッセ第1弾)、ボルボ ES90(新世代フラッグシップ)という技術の旗艦と、BYD ラッコ、Kia PV5という「日本市場の使われ方」に合わせた提案型のクルマに分かれました。Kiaは双日との合弁会社を通じた日本再参入であり、PV5は商用・乗用の両方を展開する多目的EVです。

過去の受賞傾向もおさらい

予想の材料として、直近の大賞受賞車を振り返っておきます。

  • 2025-2026:スバル フォレスター(インポート賞・デザイン賞はVW ID.Buzz、テクノロジー賞はポルシェ911カレラGTS)
  • 2024-2025:ホンダ フリード
  • 2023-2024:トヨタ プリウス
  • 2022-2023:日産 サクラ/三菱 eKクロス EV
  • 2021-2022:日産 ノート/ノート オーラ
  • 2020-2021:スバル レヴォーグ

並べてみると、国産の量販モデルで、技術的な新しさと生活に根ざした実用性を兼ね備えたクルマが強いことが分かります。軽EVのサクラが大賞を取った2022年の前例は、今年のe SKYやラッコの評価を考えるうえでも重要な材料になります。

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採点のものさし ― 審査員の軸と、販売現場の軸

本記事では、各車を「賞レース期待度」と「現場評価」の二本立てで採点します。最初に、それぞれのものさしが何を測っているのかをご説明します。

審査員(選考委員)が重視しやすい軸

選考委員の方々は、短い期間に数十台のクルマを乗り比べ、その年を代表する1台を選びます。必然的に、次のような点が評価の中心になります。

  • 技術の新規性:
    新しいプラットフォーム、新しい電動化技術、ソフトウェアの進化
  • 走りと乗り心地の質:
    試乗で体感できる完成度
  • デザインの訴求力:
    そのクルマが時代をどう表現しているか
  • 社会的な意義:
    電動化の普及、日本市場への適合、価格の戦略性
  • ストーリー性:
    「スズキ初」「16年ぶり」「海外メーカー初」といった物語

いずれも正当な評価軸です。ただし、これらは「新車の状態で、プロが乗って分かること」が中心であることに注意が必要です。

販売現場が本当に見ている5つの軸

こちらが本記事の独自採点の中心です。各5点満点、合計25点で評価します。

① 売りやすさ(説明コストの低さ)

お客様が「これください」と言うまでに、どれだけの説明が必要かという指標です。

  • 車名とカテゴリーだけで価値が伝わるクルマは、商談が短く、成約率も高くなります
  • BEVの場合、充電環境の確認、補助金の申請手続き、電費や航続距離の現実的な説明など、どうしても商談の工程が増えます
  • 輸入車や新規参入ブランドは、ブランドへの信頼をつくるところから始める必要があります

② 下取り・リセールの強さ

乗り換えの時に、いくらで引き取れるか。お客様が次のクルマを買えるかどうかは、ここで決まると言っても過言ではありません。

  • 輸出需要があるか(海外で人気のあるモデルは中古相場が底堅い傾向があります)
  • 中古車市場で「指名買い」されるか
  • 電池の劣化不安、技術の陳腐化リスクを抱えていないか
  • 値引きや登録済み未使用車の大量流通で、相場が崩れていないか

BEVのリセールは、現時点ではまだ読みにくいというのが業界の正直な実感です。補助金の金額だけ相場が下がりやすい構造や、次世代電池の登場による陳腐化懸念があるためです。

③ 供給と納期

どれほど魅力的なクルマでも、受注停止や長納期が続けば、現場は「売りたくても売れない」状態になります。お客様の車検時期や家族構成の変化は待ってくれません。

④ 整備性とアフター体制

ここは整備の現場目線も交えて評価します。

  • 販売・サービス拠点の数と、地方での対応力
  • 高電圧システムの整備に対応できる技術者・設備の充実度
  • 先進運転支援システムのカメラやレーダーの調整(エーミング)にかかる手間
  • タイヤや12Vバッテリーなど消耗品の負担
  • 部品の供給スピード

⑤ 客層の広さ

特定の層にしか響かないクルマは、どれほど出来が良くても販売台数が伸びにくくなります。逆に、若い方から高齢の方まで、ファミリーから単身の方まで勧められるクルマは、現場にとって非常に心強い存在です。

二つのものさしは、なぜズレるのか

選考委員は「その年に何が新しかったか」を評価し、販売現場は「そのクルマで何年間お客様を満足させられるか」を評価します。前者はスナップショット、後者は長編映画のようなものです。

このズレこそが、本記事のテーマである「売れる車と賞を取る車の違い」の出発点です。それでは、10台を一台ずつ見ていきましょう。

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国産6台を現場目線で採点

採点表の見方は共通です。「現場評価」は前章の5項目を各5点満点で採点した合計(25点満点)、「賞レース期待度」は選考委員の評価を筆者が読んだ5段階評価です。

スズキ e SKY ― 「EVである前に軽自動車」を貫いた等身大のEV

概要

  • スズキ初の軽乗用EV。2026年10月6日発表、11月16日発売
  • 価格:A 212万円(受注生産)/G 239万円/X 279万円
  • 一充電走行距離:約310km
  • EV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」、油冷式eAxleを採用
  • CEV補助金は全グレード56万8000円(2026年12月31日までの届出分)、補助金適用後の実質負担は約155万円から
  • 月間目標販売台数は1000台

審査員が評価しそうなポイント

開発コンセプトは「Easy to Switch(乗り換えやすさ)」です。今ガソリンの軽に乗っている方が、運転のしかたも使い勝手も変えずにEVへ移れることを目指しています。派手さはありませんが、「電池を必要以上に積まず、軽く・安く・よく走る」というスズキらしい合理性は、選考委員にも響きやすい要素です。

補助金込みで150万円台という価格は、軽EVの「普及」という社会的な意義を最も分かりやすく示しています。ただし、発売が11月16日と選考期間の最終盤であり、選考委員が実車に触れる機会が限られる点は、賞レース上のハンデになり得ます。

販売現場から見た評価

現場目線で最も評価したいのは、ガソリン軽からの乗り換えを「同じ店・同じ担当者」で受け止められる設計であることです。背の高いスライドドア車ではなく、一段低い車体と通常のヒンジドアを選んだことで、重量とコストを抑えています。これは、普段の足として軽を使っている方の生活実感に合った判断です。

一方で、売りやすさには一つ注意点があります。補助金の届出期限が設定されているため、納車時期と補助金のスケジュールを正確に説明しなければなりません。年末をまたぐ商談では、ここを曖昧にするとトラブルの原因になります。

下取りについては、現時点では読み切れません。軽自動車は中古車市場で非常に強いカテゴリーですが、軽EVの中古相場はまだ歴史が浅く、電池の健全性をどう査定に反映するかという業界共通の課題も残っています。

整備の現場から一言

油冷式のeAxleは、モーターの冷却効率を高めて小型化に貢献する技術です。整備の現場としては、冷却オイルの点検・交換サイクルがどう設定されるかを注視しています。また、BEVは駆動用電池とは別に12Vバッテリーを搭載しており、ここが上がるとシステムが起動しません。ガソリン車から乗り換えたお客様が戸惑いやすいポイントなので、納車時の説明が大切です。

採点

項 目点 数
売りやすさ4
下取り・リセール3
供給・納期4
整備性・アフター体制5
客層の広さ4
現場評価 合計20/25
賞レース期待度★★★★☆

トヨタ RAV4 ― 完成度は文句なし、最大の弱点は「買えないこと」

概要

  • 6代目。ハイブリッド(HEV)は2025年12月、PHEVは2026年3月9日発売
  • 価格:Adventure(HEV)450万円/Z(HEV)490万円/Z(PHEV)600万円/GR SPORT(PHEV)630万円
  • HEVは2.5L直4+モーター、システム最高出力177kW(240PS)、駆動はE-Fourのみ
  • 新世代PHEVはシステム最高出力242kW(329PS)、EV走行距離は約150km、最大1500Wの外部給電に対応
  • 新しいソフトウェア基盤「Arene」をトヨタとして初採用

審査員が評価しそうなポイント

「多様化・電動化・知能化」というテーマのもと、Adventure、Z、GR SPORTという3つのスタイルを用意しました。新世代PHEVは、電池容量の拡大とSiC(シリコンカーバイド)半導体の採用で、EV走行距離を先代の約95kmから約150kmへ伸ばしています。ソフトウェア面ではAreneの初採用という大きなトピックもあります。

技術的な見どころは十分にあり、クルマとしての完成度の高さも疑いようがありません。世界戦略車としての存在感も含め、大賞を争う力は十分です。

販売現場から見た評価

売りやすさ、下取りの強さ、整備体制。この三つについては、10台の中でトップクラスです。RAV4は国内外で人気が高く、中古車市場でも指名買いされる車種です。残価設定ローンを組む際にも、残価を高めに設定しやすい部類に入ります。

しかし、最大の課題は供給です。注文が集中した結果、2026年5月時点ではHEVもPHEVも新規受注が停止していると報じられています。どれほど評価が高くても、注文を受けられなければ現場は動けません。これは今年の10ベストで最も象徴的な「賞と販売のズレ」かもしれません。

もう一点、HEVはE-Fourのみ、価格は450万円からという設定です。先代のガソリン2WDのような「手の届く入り口」がなくなったことで、客層はやや上に移りました。

整備の現場から一言

PHEVはエンジンと大容量の駆動用電池の両方を持つため、点検項目はHEVより増えます。外部給電機能はアウトドアや災害時に心強い装備ですが、使い方の説明を丁寧に行わないと、お客様が機能を使わないまま終わってしまいがちです。

採点

項 目点 数
売りやすさ5
下取り・リセール5
供給・納期1
整備性・アフター体制5
客層の広さ4
現場評価 合計20/25
賞レース期待度★★★★☆

日産 エルグランド ― 16年ぶりの挑戦、相手は「王者」

概要

  • 4代目。2026年7月16日発売、約16年ぶりのフルモデルチェンジ
  • 価格:689万7000円から(最上級のVIP e-4ORCEは約870万円)
  • 全車に第3世代e-POWERと電動4輪制御「e-4ORCE」を搭載
  • 発電用エンジンは新開発の1.5L直列3気筒ターボ。モーターなど5つの部品を一体化した「5-in-1」ユニットを採用
  • デザインコンセプトは「The private MAGLEV」
  • 発売前に6000台以上を受注したと報じられています

審査員が評価しそうなポイント

第3世代e-POWERは、エンジンを最も効率の良い回転域で回すことに徹した発電専用システムです。試乗した方の多くが静粛性の高さを指摘しており、Lクラスミニバンに求められる「静かさ」という価値にしっかり応えています。e-4ORCEによる発進・加減速時の揺れの抑制も、後席に人を乗せるクルマとして説得力があります。

16年ぶりの全面刷新というストーリーもあり、選考委員の関心は高いはずです。ただ、高価格帯のミニバンは大賞の本命になりにくい傾向もあります。

販売現場から見た評価

高級ミニバン市場は、長らく特定の車種が圧倒的な強さを持っている市場です。下取り価格や輸出需要の強さまで含めると、その差は小さくありません。エルグランドは、まず「比較検討の土俵」に乗ることが第一関門になります。

その意味で、689万円台からという価格設定は戦略的です。装備の充実度を考えると、競合と並べて見積もりを出したときに「意外と差がない、むしろ割安」と感じていただける余地があります。発売前に6000台以上の受注を集めたことも、指名買いの層が確かに存在することを示しています。

下取りについては、新型の真価が問われるのはこれからです。先代は長いモデルライフの末期に相場が厳しくなりましたが、新型が中古車市場や輸出でどう評価されるかは、今後数年の動向次第です。

整備の現場から一言

e-POWERはエンジンが発電専用のため、エンジンにかかる負荷のパターンは一般的なガソリン車と異なります。エンジンオイルの管理は通常どおり重要で、「モーターで走るからエンジンはあまり使わない」と誤解されないよう、点検の必要性をきちんと伝える必要があります。

採点

項 目点 数
売りやすさ3
下取り・リセール3
供給・納期4
整備性・アフター体制4
客層の広さ2
現場評価 合計16/25
賞レース期待度★★★☆☆

日産 キックス ― 300万円を切る第3世代e-POWERという「入口」

概要

  • 2代目(日本市場)。2026年6月18日発売、約6年ぶりの全面刷新
  • 価格:2WD 299万9700円~389万8400円/4WD(e-4ORCE)334万9500円~424万8200円
  • 日本市場で初めて第3世代e-POWERを搭載。発電用エンジンは1.4L
  • キックスとして初めてe-4ORCEを設定
  • ボディサイズ:全長4365mm×全幅1800mm×全高1610~1615mm、ホイールベース2655mm

審査員が評価しそうなポイント

先代よりひと回り大きくなり、全長はコンパクトSUVの中でもやや大きめのクラスに入りました。走りの質感や静粛性の向上は評価されやすいポイントです。ただ、同じ日産から同じ第3世代e-POWERを積むエルグランドが10ベスト入りしているため、技術的な話題が分散しやすい点は否めません。

販売現場から見た評価

現場として最も魅力を感じるのは、300万円を切る価格から新世代の電動パワートレインが手に入るという分かりやすさです。コンパクトSUVは激戦区ですが、「e-POWERの静かさを知っているお客様」の乗り換え需要は確実にあります。

一方で、ボディが大きくなったことで、先代の「ちょうどいいサイズ」を気に入っていたお客様にとっては、車庫の寸法確認が必要になります。全幅1800mmは、古い機械式駐車場では制限にかかる場合があるため、商談の初期段階で確認すべきポイントです。

整備の現場から一言

e-4ORCE搭載車は前後にモーターを持つため、4WDでも機械式の4WDのようなトランスファーやプロペラシャフトの整備は不要です。雪国のお客様にも勧めやすい構成で、4WD設定の追加は販売の幅を広げる大きな要素です。

採点

項 目点 数
売りやすさ4
下取り・リセール3
供給・納期4
整備性・アフター体制4
客層の広さ4
現場評価 合計19/25
賞レース期待度★★☆☆☆

ホンダ Super-ONE ― 理屈抜きで「欲しい」と言わせるEV

概要

  • 2026年5月22日発売。軽EV「N-ONE e:」をベースに、トレッドを拡大した専用ボディで小型車登録としたスポーツコンパクトEV
  • 価格:339万200円(1グレード、4人乗り、FF)
  • 一充電走行距離:274km(WLTCモード)、電池容量29.6kWh
  • 通常時の最高出力47kW、「BOOSTモード」で70kWへ。仮想のエンジン音やギアチェンジ感を演出
  • ボディサイズ:全長3580mm×全幅1575mm×全高1615mm
  • 発売後約1か月で1万1000台以上を受注したと報じられています

審査員が評価しそうなポイント

EVの世界に「運転の楽しさ」と「遊び心」を持ち込んだ一台です。かつての名車を思わせるブリスターフェンダーの造形、BOOSTモードの演出など、試乗した人を笑顔にする要素が詰まっています。選考委員はクルマ好きの集まりですから、この種のクルマには強く反応する傾向があります。

しかも、単なる趣味車ではなく、軽EVのプラットフォームを活用して価格を抑えた「量産の工夫」もあります。技術・企画・感性のバランスという点で、今年の10ベストの中で最も「大賞らしい物語」を持っていると私は見ています。

販売現場から見た評価

1グレード・1価格という潔い設定は、現場にとって非常にありがたいものです。グレード選びで迷わせることがなく、商談は「色とオプション」に集中できます。指名買いのお客様が多いクルマは、説明コストが低く、成約までが早いものです。

一方で、4人乗りであること、主な想定顧客が50代男性であることからも分かるとおり、客層は絞られています。ファミリーの「1台目」としては勧めにくく、セカンドカーや趣味性の高い買い方が中心になります。

下取りについては、BEVとしてはリセールが比較的期待できる部類だと見ています。趣味性の高い限定的なモデルは、中古車市場で「探している人」が一定数いるためです。ただし、これはあくまで現時点の見立てであり、BEV全体の相場動向の影響は受けます。

整備の現場から一言

ベースのN-ONE e:に対して、タイヤが14インチから15インチへ大型化されています。BEVは車重とモーターの瞬発力の影響で、ガソリン車よりタイヤの摩耗が早い傾向があります。走りを楽しむ方ほど、タイヤ交換の時期が早めに来ることを、あらかじめお伝えしておくべきでしょう。

採点

項 目点 数
売りやすさ4
下取り・リセール4
供給・納期3
整備性・アフター体制4
客層の広さ2
現場評価 合計17/25
賞レース期待度★★★★★

マツダ CX-5 ― 「330万円から」が持つ破壊力

概要

  • 3代目。2026年5月21日発売、約9年ぶりの全面刷新
  • 価格:S 330万円/G 352万円/L 407万円(いずれも2WD、4WDは各+23万6500円)
  • パワートレインは2.5L直噴ガソリン「e-SKYACTIV G 2.5」+マイルドハイブリッド「M HYBRID」に一本化。ディーゼルは設定なし
  • 12.9インチまたは15.6インチの大型ディスプレイ、Googleを搭載したインフォテインメントを採用
  • グレード名をS/G/Lのシンプルな3段階に整理

審査員が評価しそうなポイント

デザインの美しさと、価格に対する装備の充実度は、試乗会でも高く評価されそうです。360度ビューモニターや大型ディスプレイまで標準装備しながら、330万円からという価格は驚きです。

ただし、技術的な新規性という点では、マイルドハイブリッドは他の候補に比べて控えめです。デザイン賞の候補としては有力ですが、大賞の本命とするにはやや決め手に欠ける、というのが私の読みです。

販売現場から見た評価

現場評価では、今年の10台の中で最もバランスが良い一台だと考えています。

  • 価格の分かりやすさ:先代の2.5Lガソリン車が358万円台からだったことを考えると、実質的な値下げと受け取っていただけます
  • グレード構成の整理:先代の複雑な名称体系から、S/G/Lの3つに整理されたことで、商談が格段に分かりやすくなりました
  • リセール:一部のメディアでは、5年後の残価率が50%を超えるとの試算も紹介されています。CX-5は初代以来、国内外で高い人気を保ってきた車種で、中古車市場での需要も安定しています

弱点を挙げるなら、ディーゼルの廃止です。長距離を走るお客様や、ディーゼルのトルク感を気に入っていた先代オーナーの中には、乗り換えをためらう方もいます。また、全幅が約1.86mへ拡大したことで、駐車環境の確認は欠かせません。

整備の現場から一言

ディーゼルからガソリン+マイルドハイブリッドへの移行は、整備の現場から見ると歓迎すべき面もあります。短距離走行が多い使い方では、ディーゼル車特有の排気浄化装置まわりの手間が発生しやすかったためです。お客様の使い方によっては、むしろ維持の負担が軽くなるケースもあります。

採点

項 目点 数
売りやすさ4
下取り・リセール4
供給・納期4
整備性・アフター体制4
客層の広さ4
現場評価 合計20/25
賞レース期待度★★★☆☆
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輸入4台を現場目線で採点

輸入車の採点では、国産車と同じものさしを使っています。そのため、ブランドの浸透度や販売網の規模の差が、どうしても点数に表れます。これはクルマの出来の良し悪しではなく、「日本の販売現場でどれだけ扱いやすいか」の評価である点をご理解ください。

BMW iX3 ― 航続906km、次の100年を告げる技術の旗艦

概要

  • 次世代EV群「ノイエ・クラッセ」の市販第1弾。2026年7月22日発売
  • 価格:iX3 50 xDrive 982万円/同 M Sport 1034万円
  • 一充電走行距離:835~906km(WLTCモード)
  • 第6世代「BMW eDrive」、800Vの高電圧システムを採用。350kWの急速充電器なら約15分で約420km分(10%→63%)を充電
  • 駆動・制動・回生・操舵を一つのコンピューターで統合制御する「Heart of Joy」を量産車として初搭載
  • 2026年の「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞
  • ボディサイズ:全長4780mm×全幅1895mm×全高1635mm、Cd値0.24

審査員が評価しそうなポイント

技術の新規性という点では、今年の10台の中で頭一つ抜けています。航続距離900kmクラスという数字は、「EVは遠出が不安」という長年の常識を覆すものです。走りの制御をコンピューターで統合する思想も、選考委員にとって評価しやすい明確な進化です。

世界的な賞をすでに獲得していることもあり、インポート・カー・オブ・ザ・イヤーの本命であると同時に、テクノロジー賞やデザイン賞にも絡んでくる可能性があります。

販売現場から見た評価

航続距離の長さは、販売現場にとって非常に強力な武器です。BEVの商談で必ず出てくる「充電の不安」に対して、数字で明快に答えられるからです。自宅に充電設備がないお客様にも、検討していただける余地が広がります。

一方で、1000万円前後という価格帯は、それだけで客層を大きく絞ります。さらに、高額な輸入BEVは、中古車市場で相場の下落が早い傾向がこれまでも見られました。技術の進化が速いほど、数年後に「旧世代」と見なされるリスクも高まります。下取りの評価は慎重にならざるを得ません。

整備の現場から一言

800Vの高電圧システムを整備するには、絶縁工具や作業手順など、専用の体制が必要です。正規の販売・サービス網で整備を受けることが前提になるクルマであり、購入時に「近くに対応できる拠点があるか」を確認していただくことをお勧めします。

採点

項 目点 数
売りやすさ2
下取り・リセール2
供給・納期3
整備性・アフター体制3
客層の広さ2
現場評価 合計12/25
賞レース期待度★★★★☆

BYD ラッコ ― 黒船は「軽のど真ん中」に来た

概要

  • 海外メーカーが日本の軽規格に合わせて専用設計した初の市販EV。2026年7月28日発売
  • 価格:214万5000円~249万7000円(3グレード)
  • 一充電走行距離:210km(200)/320km(300Plus・300Premium)
  • 全高約1.8mのスーパーハイト系、両側電動スライドドアを装備
  • リン酸鉄リチウムイオンの「ブレードバッテリー」、統合型EV技術「X-PACK」、OTAでのソフトウェア更新に対応
  • CEV補助金は15万円。最廉価グレードの実質負担は199万5000円
  • 駆動用電池の容量保証は8年または16万km(有償で10年または20万kmまで延長可能)
  • 年間販売目標は1万台

審査員が評価しそうなポイント

ラッコの意義は、何といっても「軽自動車市場で最も売れているスーパーハイト系」に正面から挑んだことです。BYDの日本法人によれば、年間約130万台の軽乗用車市場のうち、スーパーハイト系は約65万台と半数を占めるそうです。そこにEVとして初めて参入したわけです。

海外メーカーが日本独自の規格に本気で向き合ったという点は、選考委員の中でも高く評価する方が多いと思います。日本の自動車市場の転換点として、大賞の大穴になり得る一台です。

販売現場から見た評価

スペックだけ見れば、非常に強い商品です。320kmの航続距離、両側電動スライドドア、充実した装備。車両本体価格だけで比べれば、国産の軽EVよりも安く見えます。

しかし、2026年4月の補助金制度の見直しにより、ラッコの補助金は15万円にとどまりました。国産の軽EVが50万円台後半の補助金を受けられることと比べると、実質負担額では逆転されるケースがあるのです。現場で商談するとき、この「表示価格と実質価格のねじれ」をどう説明するかは、悩ましいポイントになります。

もう一つの課題は、ブランドへの信頼と販売網です。軽自動車のお客様は、自宅の近くで気軽に点検や修理を受けられることを重視します。販売・サービス拠点の密度が、国産メーカーの軽自動車と比べてどうなのか。ここが販売台数を左右する最大の要因になると私は見ています。

下取りについては、新規参入ブランドの軽EVという前例のない組み合わせのため、現時点では慎重な評価にとどめます。電池の長期保証は、中古車としての評価を支える材料になり得ます。

整備の現場から一言

リン酸鉄リチウムイオン電池は、熱安定性が高く、充放電の繰り返しに強いという特徴があります。一方で、低温時に性能が落ちやすい傾向もあります。寒冷地のお客様には、冬場の航続距離について現実的な説明が必要です。

採点

項 目点 数
売りやすさ3
下取り・リセール2
供給・納期4
整備性・アフター体制2
客層の広さ4
現場評価 合計15/25
賞レース期待度★★★☆☆

Kia PV5 ― 乗用と商用の境界を溶かす「プラットフォーム」

概要

  • Kiaが双日との合弁会社「Kia PBVジャパン」を通じて日本市場に再参入。直営1号店は2026年5月15日に営業開始
  • PBV(Platform Beyond Vehicle)シリーズの第1弾。専用プラットフォーム「E-GMP.S」を採用
  • 価格:PV5パッセンジャー(5人乗り)679万~769万円/PV5バン 619万~679万円
  • パッセンジャーのボディサイズ:全長4695mm×全幅1895mm×全高1899mm、ホイールベース2995mm
  • バンは51.5kWh仕様でも一充電走行距離377km(WLTCモード)
  • 2026年の国内販売目標は1000台

審査員が評価しそうなポイント

PV5は、用途に応じて車体の構成を柔軟に変えられる「プラットフォーム」としての発想が最大の特徴です。人を運ぶ、モノを運ぶ、仕事場になる。高齢化や物流の担い手不足といった日本の社会課題に、クルマのあり方から答えようとする提案性は、選考委員の関心を引く要素です。

ただし、乗用車としての評価を競う日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、「提案は面白いが、乗用車の1台として大賞か」という点で票が伸びにくい可能性があります。

販売現場から見た評価

個人のお客様向けの乗用車として見ると、680万円前後からという価格、新規ブランド、拠点数の少なさが重なり、現場の採点はどうしても厳しくなります。

ただし、PV5の主戦場は法人需要だと考えるべきでしょう。商用EVには国の補助制度が手厚く用意されており、企業にとっては環境対応を対外的に示せるメリットもあります。個人向けの販売では苦戦しても、法人の車両管理の現場では存在感を高めていく可能性があります。

整備の現場から一言

法人車両は走行距離が伸びやすく、点検や修理で車両が止まる時間が業務に直結します。部品供給のスピードと、代車の手配を含めたサービス体制の整備が、PV5の評価を決める最大のポイントになるはずです。

採点

項 目点 数
売りやすさ2
下取り・リセール2
供給・納期3
整備性・アフター体制2
客層の広さ2
現場評価 合計11/25
賞レース期待度★★☆☆☆

ボルボ ES90 ― セダンでもSUVでもない、新しいフラッグシップの形

概要

  • 2026年7月8日発売。3列SUVの「EX90」と同時に日本導入
  • 価格:Plus Single Motor Extended Range 979万円/Ultra Single Motor Extended Range 1129万円/Ultra Twin Motor Performance 1229万円
  • 一充電走行距離:最大720km(WLTCモード)
  • 新世代プラットフォーム「SPA2」と800Vの高電圧システムを採用
  • セダンの佇まい、5ドアハッチバックの実用性、SUVに近い最低地上高を組み合わせたクロスオーバー
  • 14.5インチのセンターディスプレイにGoogleを搭載。わずかな動きを検知して車内への置き去りを防ぐ乗員検知システムを装備
  • 早期購入特典として、5年間の外出先急速充電無料(月60分相当)、自宅用充電器本体の無償提供、5年残価保証ファイナンスなどを組み合わせたパッケージを用意

審査員が評価しそうなポイント

ボルボらしい安全思想と、北欧デザインの静かな美しさは、ES90でも健在です。「セダン、ハッチバック、SUVのどれでもない」という新しいカテゴリーの提案は、デザイン賞の候補として十分に魅力があります。

ただ、同じ800V・長航続のBEVとして、iX3と票を分け合う構図になりそうです。インポート賞ではiX3の対抗という位置づけになると見ています。

販売現場から見た評価

現場目線で注目したいのは、残価保証ファイナンスを組み込んだ購入パッケージです。高額な輸入BEVの最大の不安は、数年後の価値がどうなるか分からないことです。そこにメーカー側が残価を保証する仕組みを用意したのは、販売現場の悩みを正しく理解した施策だと評価できます。

とはいえ、1000万円前後の価格帯、全長5000mm・全幅1940mmという大柄なボディは、客層を相当に絞ります。日本の都市部では、駐車場の制約で検討の土俵に乗れないお客様も少なくありません。

整備の現場から一言

ES90には、レーダー、カメラ、超音波センサーなど多数のセンサーが搭載されています。こうした車両は、フロントガラスの交換や軽微な板金修理のあとでも、センサーの調整(エーミング)が必要になる場合があります。修理費用が一般的な車両より高くなりやすいことは、保険や修理の見積もりの際に知っておいていただきたいポイントです。

採点

項 目点 数
売りやすさ2
下取り・リセール2
供給・納期3
整備性・アフター体制3
客層の広さ2
現場評価 合計12/25
賞レース期待度★★★☆☆
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採点結果一覧と、業界関係者の大賞予想

現場評価の1位はe SKY・RAV4・CX-5の3台が20点で並びましたが、大賞の本命はホンダ Super-ONEと読みます。つまり、現場の1位と賞レースの本命は一致しませんでした。まずは採点結果を一覧でご覧ください。

10台の採点一覧(現場評価の高い順)

車名売りやすさ下取り供給・納期整備・アフター客層現場評価(25点満点)賞レース期待度
スズキ e SKY4345420★★★★☆
トヨタ RAV45515420★★★★☆
マツダ CX-54444420★★★☆☆
日産 キックス4344419★★☆☆☆
ホンダ Super-ONE4434217★★★★★
日産 エルグランド3344216★★★☆☆
BYD ラッコ3242415★★★☆☆
BMW iX32233212★★★★☆
ボルボ ES902233212★★★☆☆
Kia PV52232211★★☆☆☆

選考の仕組みから読む「勝ち方」

例年どおりであれば、最終選考では各選考委員が持ち点25点を5台に配分し、最も高く評価する1台に必ず10点を入れる方式が取られます。この方式では、多くの委員から「まんべんなく評価される」こと以上に、「10点を入れたい」と思わせる熱量が勝敗を分けます。

優等生型のクルマは、多くの委員の5台に入っても、10点はライバルに流れることがあります。逆に、強い個性を持つクルマは、10点票を集めて一気に抜け出すことがあります。この構造を踏まえて予想します。

日本カー・オブ・ザ・イヤー(大賞)予想

本命:ホンダ Super-ONE

「10点を入れたくなるクルマ」という条件に、最も当てはまるのがSuper-ONEです。EVに運転の楽しさを持ち込んだ明快なコンセプト、量産プラットフォームを活かした価格設計、そして発売直後の受注実績。技術・企画・市場の反応という三つがそろっています。試乗会で選考委員を笑顔にする力は、10台の中で随一だと考えます。

対抗:トヨタ RAV4

完成度、技術の厚み、世界戦略車としての存在感では最上位です。新世代PHEVとAreneの初採用という明確な技術的トピックもあります。弱点は「優等生ゆえに10点票が分散しやすい」ことです。多くの委員の上位5台には入るはずなので、得点の総量では本命を上回る可能性も十分にあります。

単穴:スズキ e SKY

軽EVの普及という社会的意義では、今年の候補の中で最も分かりやすい存在です。2022年にサクラ/eKクロス EVが大賞を受賞した前例もあります。ただし、発売が選考期間の最終盤であることと、「軽EVの大賞はすでに一度出ている」という点が、評価をどう左右するかは読み切れません。

大穴:BYD ラッコ

海外メーカーが軽のスーパーハイト系にEVで参入したという出来事は、日本の自動車史に残る転換点です。歴史的意義を重く見る委員が10点票を投じれば、一気に浮上する可能性があります。もし輸入車が1位になれば、ラッコがそのまま日本カー・オブ・ザ・イヤーとなります。

インポート・カー・オブ・ザ・イヤー予想

  • 本命:BMW iX3(航続距離900kmクラス、世界的な受賞歴、技術の明確な進化)
  • 対抗:ボルボ ES90(新しいカテゴリー提案と安全思想)
  • 穴:BYD ラッコ(日本市場への適合という独自の価値)

デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー予想

  • 本命:マツダ CX-5(魂動デザインの成熟と、量販車としての完成度)
  • 対抗:BMW iX3(新世代BMWの顔を示した意欲的な造形)
  • 穴:ボルボ ES90(セダンでもSUVでもない新しいプロポーション)

テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー予想

  • 本命:BMW iX3(第6世代eDrive、800V、統合制御「Heart of Joy」)
  • 対抗:トヨタ RAV4(新世代PHEV、SiC半導体、Arene)
  • 穴:BYD ラッコ(X-PACKによる軽規格での高度な統合設計)

なお、過去にはインポート賞とデザイン賞を同じ車が受賞した例もあり、iX3が複数の賞を獲得するシナリオも考えられます。

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売れる車と賞を取る車は、どこが違うのか

結論から申し上げると、賞を取る車は「その年に何を変えたか」で選ばれ、売れる車は「お客様の何も変えずに済むか」で選ばれます。46年間、毎年の受賞車と販売の現場を見比べてきて、私が行き着いた答えです。

違い1:評価の「時間軸」が違う

選考委員の評価は、発表から数か月の間に行われます。見ているのは「新車の瞬間」です。

一方、お客様の満足は、購入してから手放すまでの数年間で決まります。

  • 1年目:納車までの待ち時間、初期不良の有無、使い勝手
  • 3年目:最初の車検費用、消耗品の交換、ソフトウェア更新の有無
  • 5年目以降:下取り価格、次のクルマへの乗り換えのしやすさ

賞の評価には、2年目以降の話がほとんど入りません。だからこそ、受賞車が必ずしもお客様の長期的な満足につながるとは限らないのです。

違い2:「新しさ」は、現場では「説明の手間」になる

選考委員にとって、新しい技術は加点要素です。しかし販売の現場では、新しい技術ほど説明が必要になります。

今年の10台で言えば、BEVが6台を占めました。BEVの商談では、ガソリン車にはない確認事項が次々に出てきます。

  • 自宅に充電設備を設置できるか(集合住宅か、駐車場の電源はどうか)
  • 補助金の金額と申請手続き、届出の期限
  • 実際の電費と、冬場や高速走行時の航続距離の目安
  • 電池の保証内容と、将来の劣化の考え方
  • 下取り時に電池の状態がどう評価されるか

これらは、お客様の安心のために欠かせない説明です。しかし同時に、商談の時間を延ばし、成約までのハードルを上げる要因にもなります。「新しいこと」は賞では武器になり、現場では宿題になるのです。

違い3:「下取り」は、次の1台を決める見えない価格

クルマの本当のコストは、「買った価格-売った価格+維持費」です。車両本体価格が同じでも、5年後の下取り価格が100万円違えば、お客様の実質的な負担は100万円変わります。

下取りが強いクルマには、共通の特徴があります。

  1. 中古車市場で「指名買い」する人が多い
  2. 海外で人気があり、輸出の需要がある
  3. モデルチェンジで一気に陳腐化しにくい
  4. 値引きや登録済み未使用車の大量流通が起きていない

今年の10台では、RAV4とCX-5がこの条件を比較的満たしやすい車種です。一方、BEVの多くは、まだ中古相場の歴史が浅く、評価が定まっていません。ここは賞の評価にはまったく表れない、しかしお客様の家計には大きく効いてくる部分です。

違い4:「供給」は、どんな名車も止めてしまう

RAV4の例が象徴的です。クルマとしての評価がどれほど高くても、受注が止まれば現場は商談すらできません。お客様は待ちきれずにほかの車種へ移り、その間に競合が台数を稼ぎます。

賞の評価では、供給の問題は考慮されません。しかし販売の世界では、「欲しい時に買えること」も商品力の一部です。

違い5:販売・サービス網の「近さ」

特に軽自動車やコンパクトカーのお客様は、「家から近い店で、気軽に点検してもらえるか」を非常に重視します。高齢のお客様や、クルマを生活の足として毎日使う方ほど、その傾向は強くなります。

輸入車や新規参入ブランドが、クルマの出来は良くても販売台数で苦戦しやすいのは、この「近さ」の差が大きいからです。どれだけ素晴らしい技術を積んでいても、点検のたびに遠くまで足を運ぶ必要があれば、選ばれにくくなります。

それでも、賞には大きな意味がある

ここまで「賞と販売のズレ」をお話ししてきましたが、私は賞の価値を否定するつもりはまったくありません。

  • 受賞をきっかけに、それまで関心のなかった層がショールームに足を運んでくださる
  • 新しい技術や考え方が、業界全体の方向性として認知される
  • 開発に携わった方々の挑戦が正当に評価され、次の挑戦への原動力になる

賞は「業界の未来」を照らし、販売は「お客様の今」を支える。両方の目線があって、はじめてクルマ選びの全体像が見えてくると私は考えています。

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まとめ ― 12月3日は「二つの目線」で楽しんでください

大賞の本命はホンダ Super-ONE、現場評価の1位はスズキ e SKY・トヨタ RAV4・マツダ CX-5の3台が同点。これが、業界関係者としての今年の結論です。

本記事のポイント

  • 今年の10ベストは6台がBEVで、軽EVが国内・海外から1台ずつ入った歴史的な顔ぶれです
  • 賞レースでは「10点を入れたくなる熱量」を持つSuper-ONEを本命、完成度で勝るRAV4を対抗と読みます
  • インポート賞はBMW iX3が本命で、テクノロジー賞との複数受賞もあり得ます
  • 販売現場では、価格の分かりやすさ、下取りの強さ、供給の安定、販売・サービス網の近さが評価を大きく左右します
  • 現場評価では、e SKY・RAV4・CX-5が20点で並びました。ただしRAV4は「買えない」という大きな課題を抱えています

これからクルマを選ぶ方へ

賞の結果は、クルマ選びの「入口」としてぜひ参考にしてください。そのうえで、次の3点も確かめていただくと、購入後の満足度が大きく変わります。

  1. 納期と受注状況:欲しい時に本当に手に入るか
  2. 乗り換え時の価値:3年後・5年後の下取りや残価設定の条件
  3. 点検・修理の拠点:自宅や職場から無理なく通えるサービス拠点があるか

12月3日の最終選考会は、公式YouTubeチャンネルで配信される予定です。選考委員の方々がどの車に10点を投じるのか。その結果と、販売現場の実感がどこで一致し、どこでズレるのか。ぜひ「二つの目線」で見届けていただければ幸いです。

結果が出た後には、予想の答え合わせと、受賞車の販売への影響についても改めて書きたいと考えています。

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参考資料