2026年10月13日(火)から16日(金)までの4日間、千葉・幕張メッセで「Japan Mobility Show Bizweek 2026(ジャパンモビリティショー ビズウィーク2026)」が開催されます。
「今年は東京モーターショーはやらないの?」――秋になると、こうした声を毎年のように耳にします。かつて東京モーターショーと呼ばれていたイベントは、2023年から「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)」へと名前を変え、奇数年に一般向けの大型ショーを、偶数年にビジネス向けのイベントを開くという形に生まれ変わりました。2026年はその偶数年、いわゆる“裏年”にあたります。
業界関係者から見ても、今年のBizweekは「裏年だから小規模」と片付けてしまうには惜しい内容です。むしろ、自動車業界がこれから10年、20年でどこへ向かおうとしているのかが、表年のショー以上にむき出しの形で並ぶイベントだと感じています。
本記事では、主催者である日本自動車工業会(自工会)の発表資料や各社の出展概要をもとに、展示の中身、注目のセッション、共創プログラム、そして会場での効率的な回り方まで、業界関係者の目線で詳しく解説します。
- Japan Mobility Show Bizweek 2026とは?東京モーターショーの「裏年」に開かれる意味
- 業界関係者が「Japan Mobility Show Bizweek 2026」に足を運ぶべき3つの理由
- 共創テーマ「7つのMOVE」と自工会「新7つの課題」が描く未来
- 【徹底解剖】自工会会員14社による合同展示「動かし続ける、日本。」6つのテーマ
- 【メーカー別】個社ブースと合同展示の見どころ比較
- スタートアップから大企業まで:会場を構成する4つの展示ゾーン
- 業界のキーマンが集まる「未来モビリティ会議」の注目セッション
- 商談につなげる新しい仕掛け:共創プログラムと「Meet-up Box」
- あわせて回りたい「CEATEC 2026」のモビリティ関連展示
- 来場前に確認したいチェックリストと会場の回り方
- Japan Mobility Show Bizweek 2026に関するよくある質問
- まとめ:“裏年”のBizweekこそ、業界の本音と未来が見える
Japan Mobility Show Bizweek 2026とは?東京モーターショーの「裏年」に開かれる意味

「ショーイヤー」と「プロセスイヤー」を交互に開く新しい仕組み
自工会は、東京モーターショーの後継となるJapan Mobility Showを奇数年に開催し、その間の偶数年を「プロセスイヤー」と位置付けています。プロセスイヤーに開かれるのがBizweekで、スタートアップを中心とした企業同士のビジネスの出会いを生むことが目的です。
- ショーイヤー(奇数年):
生活者に向けて、未来のモビリティのワクワクを届ける大型ショー - プロセスイヤー(偶数年):
企業同士が出会い、共創(一緒に新しい事業をつくること)を始めるビジネスイベント
自工会のモビリティショー委員長は、Bizweekで生まれた出会いや共創を次のショーで具体的な成果として見せ、その反応を次のBizweekにつなげていく、という循環を目指していると説明しています。つまり今年のBizweekは、2027年のJapan Mobility Showで何が展示されるのかを占う「種まきの現場」でもあるのです。
2024年の初開催から2回目、規模も内容も拡大
Bizweekは2024年が初開催で、今回が2回目です。前回の実績と今回の規模を比べると、着実に厚みが増していることが分かります。
| 項 目 | 2024年(初開催) | 2026年(今回) |
|---|---|---|
| 出展者数 | 203社(うちスタートアップ145社) | 217社(うち海外14社) |
| ビジネスマッチング | 800件を超える件数が成立 | 共創プログラムを新設し、実効性を強化 |
| 併催イベント | CEATEC 2024 | CEATEC 2026 |
出展者の顔ぶれも、自動車メーカーや部品メーカーだけではありません。AI、ロボット、ヘルスケア、宇宙、エネルギーなど、従来なら自動車のイベントには出てこなかった分野の企業が数多く参加しています。
開催概要
| 名 称 | Japan Mobility Show Bizweek 2026(ジャパンモビリティショー ビズウィーク2026) |
|---|---|
| 会 期 | 2026年10月13日(火)~16日(金)10:00~17:00 |
| 会 場 | 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール2・3(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1) |
| 入場料 | 無料(全来場者の事前登録が必要) |
| 主 催 | 一般社団法人日本自動車工業会(JAMA) |
| 共 催 | 一般社団法人日本自動車部品工業会(JAPIA) |
| 併 催 | CEATEC 2026(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会/JEITA、展示ホール4~8) |
| スローガン | あなたが動けば、世界が動く。 |
| 出展者数 | 217社(うち海外14社) |
業界関係者が「Japan Mobility Show Bizweek 2026」に足を運ぶべき3つの理由
理由1:「クルマを見る場」から「次の事業をつくる場」へ変わった
東京モーターショーの時代、私たち業界関係者がショーに行く目的は、ライバル車の内装の質感を確かめたり、コンセプトカーから数年後の市販車の方向性を読み取ったりすることが中心でした。
Bizweekはそこが根本的に違います。主役はクルマそのものではなく、「クルマを取り巻く社会の課題を、誰とどう解くか」です。完成車メーカー、部品メーカー、スタートアップ、大学、自治体、金融機関が同じフロアに並び、名刺交換の先にある具体的な事業の話を進める場として設計されています。
自工会は、自動車産業が全就労人口のおよそ1割にあたる約550万人の雇用を支え、出荷額は約70兆円、輸出で約20兆円の外貨を稼ぐ産業であると説明したうえで、「クルマをつくる産業」から「社会を動かすモビリティ産業」への進化が必要だと訴えています。この危機感が、イベントの設計そのものに表れています。
理由2:CEATEC 2026との併催で、デジタル業界と直接つながれる
2024年に続き、国内最大級のデジタル総合展「CEATEC 2026」と同じ会期・同じ会場で開かれます。CEATECには今回、前年を上回る821の企業・団体が出展します。
SDV(ソフトウェア定義車両:ソフトウェアの更新で機能が進化していくクルマ)、自動運転、コネクテッド、物流の自動化。これからの自動車の競争力を左右するテーマは、どれも自動車業界だけでは完結しません。半導体、通信、AI、センサーの企業と同じ日に、同じ会場で話ができる機会は、年間を通じてもそう多くありません。
理由3:一度の事前登録で2つの展示会を無料で回れる
来場登録はJMS BizweekとCEATECで共通です。一度登録すれば、ホール2・3のBizweekと、ホール4~8のCEATECを自由に行き来できます。入場料は無料で、移動も館内だけで済むため、1日で両方の主要ブースを回ることも十分に可能です。
共創テーマ「7つのMOVE」と自工会「新7つの課題」が描く未来

Bizweek 2026の共創テーマ「7つのMOVE」
今回のBizweekでは、異なる業界の企業が参加しやすいように、「動かす」対象ごとに7つの共創テーマが設定されています。
自工会が掲げる「新7つの課題」
一方、自工会は業界として取り組むべき課題を「新7つの課題」として定めています。
- 重要資源・部品の安全保障
- マルチパスウェイの社会実装
- サーキュラーエコノミー(資源循環)の仕組みづくり
- 人材基盤の強化
- 自動運転を前提とした交通システムの確立
- 自動車関連税制の抜本改革
- サプライチェーン全体での競争力向上
業界関係者の視点:2つの「7」を重ねて読むと展示が立体的に見える
「7つのMOVE」は来場者や出展者に向けた入口、「新7つの課題」は業界の本音の宿題と言い換えられます。会場を歩くときは、目の前の展示がどちらの「7」に当てはまるのかを意識すると、各社が何を狙っているのかが見えやすくなります。
特に私が注目しているのは、「人材基盤の強化」が課題として明記されている点です。現場では整備士の確保が年々難しくなり、電動車や先進運転支援システム(ADAS)の普及で、求められる知識も大きく変わりました。ショーの華やかな展示の裏側で、業界全体が人の問題に正面から向き合おうとしていることは、もっと知られてよいと思います。
【徹底解剖】自工会会員14社による合同展示「動かし続ける、日本。」6つのテーマ
会場の中央には、自工会の会員メーカー14社による合同展示が置かれ、その周りを4つの展示ゾーンが囲む配置になっています。テーマは「動かし続ける、日本。― MOVE JAPAN」です。「新7つの課題」を起点に、次の6つの取り組みが紹介されます。
ライバル同士のメーカーが同じブースに並び、1つのストーリーとして社会課題への取り組みを示す。46年この業界を見てきた立場からすると、これは本当に大きな変化です。かつては考えられなかった光景だと言っても過言ではありません。
① マルチパスウェイ:答えを1つに決めない現実的な戦略
マルチパスウェイとは、BEV(バッテリーEV)だけに絞るのではなく、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)、水素エンジン、合成燃料やバイオ燃料など、複数の道筋でカーボンニュートラルを目指す考え方です。
業界関係者の着眼点
日本国内だけを見ても、充電環境が整った都市部と、長距離移動が当たり前で寒冷地も多い地方とでは、最適なパワートレインがまったく違います。さらに輸出先の国々を見れば、電力事情もインフラも千差万別です。ひとつの技術にすべてを賭けないという姿勢は、現場でお客様と向き合ってきた感覚からしても、非常に理にかなっています。
展示では、スズキのフレックス燃料(エタノール混合燃料)対応バイクや、圧縮バイオガス(CBG)を使うモデルなども紹介されます。これらは主にインドなどの海外市場を見据えた技術で、「地域ごとの最適解」という考え方がよく分かる展示です。
② 水素普及:「つくる」だけでなく「運ぶ」「使う」まで
水素の課題は、つくることよりも、運んで届け、使える状態にすることにあります。自工会が掲げる「水素大動脈構想」は、水素の需要が集まる重点地域を幹線でつなぎ、水素社会を面で広げていこうという考え方です。
合同展示では、トヨタの水電解システム(電気で水を分解して水素をつくる装置)などが紹介されます。
業界関係者の着眼点
乗用の燃料電池車は、水素ステーションの少なさが普及の壁になってきました。一方で、決まったルートを走り、決まった拠点に戻ってくる大型トラックやバスは、水素との相性が良い分野です。今回、商用車メーカー各社が水素関連の展示に力を入れているのは、まさにこの理由からです。
③ 共同物流:競合同士が「運ぶ力」を持ち寄る
ドライバー不足が深刻な物流業界では、1社だけで輸送網を維持することが難しくなっています。共同物流のテーマでは、会社の垣根を越えてトラックの空きスペースや運行データを共有し、平時も災害時も途切れない物流をつくる取り組みが紹介されます。
業界関係者の着眼点
ここで鍵を握るのは、実はクルマそのものよりもデータの共通化です。メーカーごとに異なる車両データの形式を、どこまでそろえられるか。この点は後で紹介する商用車メーカー各社の個社ブースとあわせて見ると、各社の考え方の違いがよく分かります。
④ 自動運転:インフラと協調し、事故死ゼロを目指す
自動運転のテーマでは、クルマ単体のセンサーだけに頼るのではなく、信号機や道路側の設備と通信しながら安全性を高める「インフラ協調型」の取り組みが中心です。年齢や住む場所に関わらず、誰もが安心して移動できる社会を目指しています。
合同展示では、日産のAIを使った運転技術や、いすゞの自動運転バスなどが紹介されます。
業界関係者の着眼点
地方では路線バスの減便や廃止が続き、高齢の方の移動手段の確保は待ったなしの課題です。自動運転バスの実車展示は、技術そのもの以上に「地域の足をどう守るか」という問いに対する1つの答えとして見ていただきたいと思います。
また、整備の立場から言うと、自動運転やADASの普及で、カメラやレーダーの取り付け位置や角度を正確に合わせる「エーミング(校正作業)」の重要性が年々高まっています。高度な自動運転が広がるほど、点検・整備の質がそのまま安全性に直結する時代になります。
⑤ 走行中無線給電:道路そのものが充電器になる未来
走行中無線給電とは、道路に埋め込んだ設備から、走っているクルマに電気を送る技術です。ホンダとトヨタがこの技術を展示します。
業界関係者の着眼点
BEVの課題は、航続距離、充電時間、そしてバッテリーの重さとコストです。走りながら給電できれば、搭載するバッテリーを小さくでき、車両価格や重量を抑えられる可能性があります。バッテリーは使用する原材料の量も多いため、資源の観点からも意味のある技術です。
ただし、道路インフラの整備には長い時間と大きな費用がかかります。まずは路線バスや物流拠点など、決まったルートを走る用途から実用化が進んでいくと考えるのが現実的でしょう。
⑥ サーキュラーエコノミー:使い終わった電池や素材を次に活かす
資源循環のテーマでは、使用済みバッテリーの再利用や、リサイクル素材を使った部品づくりなどが紹介されます。三菱自動車は、PHEVの使用済み電池を再利用した街路灯を展示します。
業界関係者の着眼点
電動車のバッテリーは、クルマとしての役目を終えた後も、蓄電池として十分な性能を残していることが多くあります。これを定置用の蓄電池や街路灯に活かすことは、資源の有効活用だけでなく、電動車の下取り価格や残価にも影響してくるテーマです。中古車市場で電動車の価値をどう評価するかは、業界全体にとっての大きな課題でもあります。
展示の締めくくりは「未来の暮らし」を描く大型ビジュアル
合同展示の最後には、これら6つの取り組みが社会に実装された未来の暮らしを描いた大型のビジュアルが置かれます。単に技術を並べるだけでなく、「この未来を一緒につくりませんか」と来場者に呼びかける構成になっている点が、Bizweekらしいところです。
【メーカー別】個社ブースと合同展示の見どころ比較
各メーカーは、自社の製品や事業を紹介する「個社ブース」と、業界共通の課題への取り組みを示す「合同展示」の両方に出展しています。両方を見比べることで、各社が「自社で稼ぐ領域」と「業界で協調する領域」をどう線引きしているのかが見えてきます。
| メーカー | 個社ブースの主な展示 | 合同展示での主な展示 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車 | ZONE 1に出展し、事業を紹介 | e-Palette、水電解システム、ITSスマートポール、走行中無線給電 |
| 日産自動車 | 新型エルグランド、第3世代e-POWERのカットモデル | AIドライブ搭載の次世代プロパイロット開発試作車、リーフの再生バッテリー活用 |
| 本田技研工業 | VR仮想同乗サービス「Honda DIVE」 | Honda Charge、V2H Stand、走行中無線給電のモックアップ、再生材を使った部品 |
| マツダ | 英国Thymia社との共感型AIの研究開発 | 2ローター・ロータリーEVのコンセプトユニット、PET由来の繊維シート |
| SUBARU | ドライバーモニタリングシステム、機能アップデートサービス | インフラ協調型自動運転の試験車両 |
| スズキ | 電動台車「MITRA」、電動歩行器、インドでのCBG事業 | 代替燃料対応バイク、MITRAの活用例 |
| ダイハツ工業 | AI画像生成体験、地域交通やエネルギーの取り組み | アンモニア/水素混焼エンジンの実機(初公開) |
| 三菱自動車 | 車両データ連携、スマート充電など7事業の紹介 | アウトランダーPHEV、使用済み電池を使った自律型街路灯 |
| いすゞ・UDトラックス | グループ共同ブース(脱炭素・自動運転・コネクテッド) | エルガEVの自動運転バス(実車)、物流情報基盤「GATEX」 |
| 日野自動車 | 物流データ、共同配送、EV運行管理のサービス | 大型燃料電池トラック「日野プロフィア Z FCV」 |
| 三菱ふそう | eCanter、自動運転、次世代整備士の育成 | 水素エンジン大型トラック「H2IC」のコンセプトモデル |
| ヤマハ発動機 | 電動スクーター、電動アシスト自転車 | 水素エンジン搭載ゴルフカーのコンセプト「DRIVE H2」 |
| カワサキモータース | (合同展示が中心) | 水素エンジンのモーターサイクル |
乗用車メーカーの見どころ
トヨタ自動車:社会インフラ側から未来を描く
トヨタは個社ブースをZONE 1(物流・サプライチェーン)に構え、合同展示ではe-Paletteや水電解システム、道路側に設置して見通しの悪い交差点などの情報を伝えるITSスマートポール、走行中無線給電など、インフラ寄りの技術を幅広く出展します。クルマ単体ではなく、街や道路とセットで未来を考えている姿勢がよく表れています。
日産自動車:第3世代e-POWERのカットモデルは必見
個社ブースでは新型エルグランドの実車に加え、第3世代e-POWERのカットモデルが展示されます。e-POWERは、エンジンで発電し、その電気でモーターを回して走るシリーズ式のハイブリッドです。
カットモデルは、普段は見ることのできない内部構造を確認できる貴重な展示です。エンジン、発電機、モーター、インバーターがどのように配置され、どこまで一体化されているのか。整備の経験がある方なら、部品の集約の度合いや冷却系の取り回しに注目すると、世代ごとの進化がよく分かるはずです。
本田技研工業:VRで「離れた人と同じクルマに乗る」体験
ホンダは、VRを使って離れた場所にいる人とドライブ体験を共有する「Honda DIVE」の実証を紹介します。移動そのものの価値を広げる試みで、高齢の家族や、入院中で外出が難しい方との時間の過ごし方を変える可能性を秘めています。合同展示では、家庭とクルマの間で電気をやり取りするV2H(Vehicle to Home)関連の機器も展示されます。
マツダ:2ローター・ロータリーEVのコンセプトユニット
マツダは、2ローターのロータリーエンジンを発電用に使うEVのコンセプトユニットを合同展示に出します。ロータリーエンジンは小型・軽量で振動が少ないため、発電専用のエンジンとして相性が良いとされています。また、水素など多様な燃料に対応しやすい特性も持っており、マルチパスウェイの文脈でも注目される技術です。
個社ブースでは、英国のスタートアップThymia社と取り組む共感型AIの研究開発を紹介します。ドライバーの状態を理解し、寄り添うクルマづくりという、マツダらしい「人中心」のテーマです。
SUBARU:運転支援の延長線上にある自動運転
スバルは、インフラ協調型自動運転の試験車両を合同展示に出し、個社ブースではドライバーモニタリングシステムや、購入後に機能を更新できるサービスを紹介します。購入後のアップデートは、SDV時代のアフターサービスのあり方を大きく変えるテーマで、販売や整備の現場にとっても見逃せません。
スズキ・ダイハツ:小さなモビリティと地域の暮らし
スズキは多目的の電動台車「MITRA」や電動歩行器など、クルマ以外の小さなモビリティを展示します。ダイハツは、アンモニアと水素を混ぜて燃焼させるエンジンの開発実機を初公開します。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素を出さず、水素より運びやすいという特長がありますが、燃えにくさなどの課題もあり、その開発状況を実機で確認できる点は大きな見どころです。
三菱自動車:PHEVの経験を社会に還元
三菱自動車は、アウトランダーPHEVと、使用済み電池を活用した自律型街路灯を展示します。個社ブースでは、車両データの連携やスマート充電など7つの事業をパネルと映像で紹介します。PHEVを長く手がけてきたメーカーならではの、電池を「使い切る」視点が見どころです。
商用車メーカーの見どころ
今回のBizweekで、私が最も充実していると感じるのが商用車の展示です。各社とも、単にトラックやバスを売るのではなく、運行管理や物流データまで含めた「仕組み」として提案している点が共通しています。
いすゞ・UDトラックス:自動運転バスの実車展示
いすゞとUDトラックスはグループ共同ブースを構え、合同展示ではエルガEVをベースにした自動運転バスの実車と、物流情報の基盤「GATEX」を展示します。
日野自動車:大型燃料電池トラックと物流データ
日野は、大型燃料電池トラック「日野プロフィア Z FCV」を合同展示に出します。個社ブースでは、物流データの活用、共同配送、EVの運行管理といったサービス群を紹介します。
三菱ふそう:水素エンジン大型トラックと整備士育成
三菱ふそうは、水素エンジンを積んだ大型トラック「H2IC」のコンセプトモデルを展示します。個社ブースでは、電気小型トラックeCanterや自動運転に加え、次世代の整備士育成も紹介される予定です。電動化や水素化が進む商用車の現場では、高電圧や高圧ガスを扱う知識が欠かせなくなっています。新しい技術を支える人づくりにまで目を向けている点は、業界関係者として非常に心強く感じます。
二輪メーカーの見どころ
ヤマハ発動機は水素エンジンを積んだゴルフカーのコンセプト「DRIVE H2」、カワサキモータースは水素エンジンのモーターサイクルを展示します。二輪車は車体が小さく、燃料タンクを積むスペースが限られるため、水素の搭載方法には独自の工夫が求められます。その解決策を実機で確認できる貴重な機会です。
技術解説:燃料電池(FCV)と水素エンジンは何が違うのか
今回の会場には、水素を使う2つの方式の実機がそろいます。どちらも「水素で走る」点は同じですが、仕組みはまったく異なります。
| 比較項目 | 燃料電池(FCV) | 水素エンジン |
|---|---|---|
| 仕組み | 水素と酸素を化学反応させて電気をつくり、モーターで走る | 水素をエンジン内で燃やし、その力で走る |
| 排出物 | 水のみ | 二酸化炭素はほぼ出ないが、窒素酸化物(NOx)への対策が必要 |
| エネルギー効率 | 高い | 燃料電池よりは低い傾向 |
| 既存技術の活用 | 新しい部品や技術が多い | 従来のエンジン技術や生産設備、整備の知見を活かしやすい |
| 今回の主な展示 | 日野プロフィア Z FCV など | 三菱ふそうH2IC、カワサキの二輪、ヤマハのゴルフカー、ダイハツの混焼エンジン |
整備の立場から見ると、水素エンジンの強みは、エンジンの基本構造が従来と大きく変わらないことです。これまで培ってきた整備の技術や、部品メーカーのサプライチェーンを活かしやすく、雇用の面でも意味があります。一方で、燃焼の制御やNOxの処理、高圧の水素タンクや配管の点検など、新しく身につけるべき知識も少なくありません。会場で両方式の実機を見比べると、それぞれの得意分野がはっきり見えてくるはずです。
スタートアップから大企業まで:会場を構成する4つの展示ゾーン
217社の出展ブースは、業種ではなく「実現したい社会の姿」ごとに4つのゾーンに分けられています。同じ課題を抱える企業がとなり合わせに並ぶため、自然な会話から新しい連携が生まれやすい設計です。
ZONE 1:滞らないシステムで、広がる安心。
物流、サプライチェーン、製造の基盤、金融がテーマです。普段の効率と、災害時にも止まらない強さを両立する仕組みを扱います。AIを使った危機管理サービスのSpectee、サプライチェーンのリスク管理を手がけるResilire、地方銀行8行による広域ネットワークのほか、トヨタ、いすゞ・UD、日野、三菱ふそうなどが出展します。
ZONE 2:環境も経済も、ともにより良い方へ。
資源循環、エネルギー、脱炭素、グリーン金融がテーマです。商用EVの運行を支えるeMotion Fleet、資源循環を手がけるdigglue、DOWAサーモテックのほか、日産、スズキ、三菱自動車、ヤマハ発動機などが並びます。
ZONE 3:テクノロジーとともに、人がもっと人らしく。
人とAIの協働、教育、リスキリング(学び直し)、体験価値がテーマです。音声AIのアイフライテック、自動運転の人材を育てるシミュレーターを手がけるVirtual Motorsport Labのほか、SUBARU、ホンダ、マツダ、ダイハツなどが出展します。
ZONE 4:人もモノもデータも、すべてがシームレスに。
AI、データ連携、スマートシティ、都市のOS(都市全体のデータ基盤)がテーマです。配送ルートの最適化を手がけるオプティマインド、高精度な3次元地図のダイナミックマッププラットフォーム、グーグル・クラウド・ジャパンなどが出展します。
共創のハブとなる「コンソーシアム」も出展
今回は、複数の企業や団体が集まる共創の拠点も出展しています。
自治体や地域の拠点が前面に出てきている点は、モビリティの課題が地域の課題と切り離せないことをよく表しています。
「モビリティイノベーション賞」は雪国発の除雪ドローン
併催のCEATECが表彰する「CEATEC AWARD 2026」では、Bizweekの出展者を対象とした「モビリティイノベーション賞」に、エバーブルーテクノロジーズの国産の陸上ドローン「除雪ドローン」が選ばれました。自律走行で除雪作業を行い、雪国の危険で重い労働を減らすことを目指した技術です。
事前の記者会見では重量の関係で実機の展示が見送られましたが、Bizweekの会場では実機が展示されます。豪雪地域の高齢化と担い手不足という切実な課題に、モビリティ技術で応えようとする好例で、ぜひ実物を見ておきたい展示の1つです。
業界のキーマンが集まる「未来モビリティ会議」の注目セッション
会場内のメインステージでは、これからのモビリティ社会について議論するカンファレンス「未来モビリティ会議」が開かれます。業界のトップが何を語るのかは、今後の業界の方向性を読むうえで欠かせない情報です。
【初日10月13日・13:00~】自工会会長×JEITA会長のトップ対談
併催を象徴する特別企画として、初日の13時から「日本の未来社会に向けて」と題した対談が行われます。
- 登壇者:自工会会長 佐藤恒治氏(トヨタ自動車 副会長)、JEITA会長 新野隆氏(日本電気)
- テーマ:日本の基幹産業を担うトップ同士が、これからの産業構造や移動社会について語り合う
自動車とエレクトロニクスという日本を支える2つの産業のトップが同じ壇上に立つ機会は、そう多くありません。聴講の方法や予約の要否は、公式サイトで事前に確認しておくことをおすすめします。
【初日10月13日・11:00~】特別セッション「共創の障壁を打ち破る」
自工会の会長・副会長とスタートアップの代表者、有識者が登壇し、モビリティ産業における共創のハードルについて本音で議論します。大企業とスタートアップが組むとき、何がうまくいかないのか。意思決定のスピード、契約、知的財産の扱いなど、現場で実際に起きている壁をどう越えるかが焦点です。
【10月14日~16日】4つのテーマのビジネスセッション
自工会の理事や有識者が登壇し、4つの展示ゾーンに対応したテーマで社会実装への道筋を議論します。
- AI・ロボティクス:テクノロジーとともに、人がもっと人らしく
- 環境・エネルギー:地域ごとのエネルギーの最適な組み合わせと脱炭素
- 商用車・物流:物流データと自動運転の管制がつなぐ社会基盤
- シームレス交通:運行データと小型モビリティがつなぐ新しい交通のかたち
専門部会・パートナーによる注目プログラム
業界関係者の着眼点
個人的に強くおすすめしたいのが、学生と業界トップが語り合う15日のプログラムです。若い世代がクルマやモビリティに何を求めているのかは、私たちのように長く業界にいる人間ほど見えにくくなっています。また、16日の個人情報保護のセッションは、車両データを扱う販売や整備の現場にも直結するテーマです。コネクテッドカーの普及で、お客様のデータを預かる責任は確実に重くなっています。
商談につなげる新しい仕掛け:共創プログラムと「Meet-up Box」
展示会でよくあるのが、「名刺交換とあいさつだけで終わってしまった」という悩みです。今回のBizweekは、この課題を解決するために共創の支援を大きく強化しています。
新設「アクセラレーション・共創推進プログラム」
グローバルなアクセラレーター(スタートアップの成長を支援する組織)であるPLUG AND PLAY JAPANと連携し、参加型のプログラムが用意されています。
業界関係者の着眼点:「リバースピッチ」は業界の本音が聞ける場
通常のピッチは、スタートアップが自社を売り込む場です。リバースピッチはその逆で、大企業側が「実はこれに困っている」と課題を公開します。業界の大手が何に悩んでいるのかを直接聞ける機会は貴重で、出展者でなくても聴講する価値は十分にあります。
ビジネスマッチングシステム「Meet-up Box」
事前登録者が使えるマッチングの仕組みとして「Meet-up Box」が用意されています。出展企業の課題や提案を事前に検索し、面談の予約を入れたうえで会場に向かえるため、当日の商談の効率が大きく上がります。2024年の初開催時にも、800件を超えるビジネスマッチングが成立しています。
あわせて回りたい「CEATEC 2026」のモビリティ関連展示
せっかく幕張まで足を運ぶなら、ホール4~8で開かれるCEATEC 2026も見逃せません。今回のCEATECのテーマは「Transformation」で、生成AIから現実の世界で動く「フィジカルAI」への進化が大きな焦点になっています。
自動車の生産現場や整備の現場で、熟練の技をどう若い世代に伝えるかは長年の課題でした。手の動きをデータ化する技術は、技能の継承という観点からも大いに注目に値します。
来場前に確認したいチェックリストと会場の回り方
来場までの3ステップ
- 公式サイトで事前登録(無料):
Bizweek・CEATEC共通の来場登録を済ませる。登録がないと入場できません - Meet-up Boxで面談とプログラムを予約:
会いたい企業、聴きたいセッション、参加したいワークショップを事前に押さえる - 当日は幕張メッセへ:
JR京葉線の海浜幕張駅から徒歩圏内。Bizweekはホール2・3、CEATECはホール4~8
持ち物チェックリスト
目的別のおすすめの回り方
1日しか時間がとれない方
- 午前:中央の自工会合同展示で6つのテーマを一通り見て、全体像をつかむ
- 昼前後:関心のある展示ゾーン(物流ならZONE 1、エネルギーならZONE 2など)を重点的に回る
- 午後:未来モビリティ会議のセッションを1つ聴講
- 夕方:CEATEC側のデジタル交通社会パビリオンなどモビリティ関連に絞って回る
技術・整備に関心がある方
日産の第3世代e-POWERのカットモデル、マツダの2ローター・ロータリーEVユニット、ダイハツのアンモニア/水素混焼エンジン、商用車各社の水素関連の実機を中心に回るのがおすすめです。パワートレインの多様化を実物で比べられる機会は、表年のショーでもなかなかありません。
事業開発・新規事業に関心がある方
リバースピッチの聴講と、Meet-up Boxでの事前の面談予約を最優先にしてください。展示を見て回るのは、予約した面談の合間で十分です。
Japan Mobility Show Bizweek 2026に関するよくある質問
Q. 東京モーターショーは2026年に開催されないのですか?
東京モーターショーは2023年から「Japan Mobility Show」に名前が変わり、一般向けの大型ショーは奇数年に開かれています。2026年は偶数年のため、ビジネス向けの「Japan Mobility Show Bizweek 2026」が開催されます。次の一般向けのショーは2027年の予定です。
Q. 入場料はかかりますか?
入場は無料です。ただし、すべての来場者に事前登録が必要です。
Q. 新型車やコンセプトカーは見られますか?
新型エルグランドなど一部の実車展示はありますが、表年のショーのように新型車やコンセプトカーが次々と発表されるイベントではありません。技術や事業、社会課題への取り組みが中心の展示になります。新型車の発表を目当てにする方は、その点を理解したうえで足を運ぶことをおすすめします。
Q. CEATECにも入れますか?
はい。来場登録は共通で、一度の登録で両方の会場を自由に行き来できます。
Q. 業界関係者でなくても楽しめますか?
ビジネス向けのイベントのため、展示の多くは事業や技術の紹介です。それでも、自動運転バスや水素エンジンの実機、除雪ドローンなど、モビリティの未来を身近に感じられる展示は数多くあります。登録の条件などは公式サイトで確認してください。
まとめ:“裏年”のBizweekこそ、業界の本音と未来が見える
Japan Mobility Show Bizweek 2026は、華やかな新型車の発表こそ少ないものの、自動車業界がこれからどこへ向かうのかを最も率直に示すイベントです。
46年この業界に身を置いてきましたが、ライバル同士がこれほど同じ方向を向いて未来を語る時代が来るとは、若い頃には想像もしていませんでした。ここで生まれた出会いが、2027年のJapan Mobility Showでどのような形になって表れるのか。その出発点を自分の目で確かめに、ぜひ幕張メッセへ足を運んでみてください。
※本記事の内容は、主催者および各出展企業の公式発表をもとにしています。セッションの日時や展示内容は変更になる場合がありますので、最新の情報は公式サイトでご確認ください。


