自動車リサイクルシステムが、運用開始から約20年という節目を迎え、ついに**2026年1月4日に「大規模改造」**を実施します。日々システムを操作するディーラーの業務担当者の皆様、そしてこれから車を手放す一般ユーザーの皆様にとって、この変更は無視できない非常に大きなアップデートです。
この記事では、業界の常識を覆す「紙のリサイクル券の廃止」や「シングルログインの導入」など、具体的な変更点と明日からの業務に役立つポイントを、どこよりも詳しく解説します。
そもそも「自動車リサイクルシステム」とは?(おさらい)

自動車リサイクル法が生まれた背景
まず、一般の方向けにこのシステムの役割を簡単におさらいしましょう。
自動車リサイクル法(正式名称:使用済自動車の再資源化等に関する法律)は、単なる環境対策としてではなく、使用済み自動車がもたらす社会問題や、国際的な環境意識の高まりを背景に成立しました。
以下に、法律成立に至るまでの主要な出来事と、その後の変遷を年表形式でまとめます。
| 年代 | 出来事・課題 | リサイクル法への影響 |
| 1990年代前半 | 環境意識の高まり | 地球温暖化や廃棄物問題が国際的な課題となり、日本国内でも**「3R(Reduce, Reuse, Recycle)」**の推進が求められ始めました。 |
| 1990年代後半 | 不法投棄の深刻化(特にエアコン・エアバッグ) | 使用済自動車の処理過程で、フロンガス(オゾン層破壊物質)の不適切な放出や、エアバッグ類の不適切な回収・処理が問題化。また、処理業者による不法投棄が増加。 |
| 2000年 | 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)成立 | 大型家電(テレビ、冷蔵庫など)について、メーカーに使用済み製品の回収・リサイクル義務を課す法律が先行して成立。自動車リサイクル法も、この制度設計(消費者が費用を負担する)を参考にすることになります。 |
| 2000年代初頭 | ASR(自動車破砕残渣)問題の深刻化 | 車を解体し破砕した後に残るゴミ(シュレッダーダスト)の最終処分場の確保が困難に。最終処分量の削減が喫緊の課題となります。 |
| 2002年7月 | 自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)公布 | フロン類、エアバッグ類、ASRの3品目を重点的にリサイクル・適正処理するため、**自動車メーカー(リサイクル義務)と自動車ユーザー(費用負担)**に責任を課す法律として成立。 |
| 2004年1月 | フロン類・エアバッグ類の回収・リサイクル義務開始 | リサイクル法に基づき、特定部品の適正な処理が義務付けられます。 |
| 2005年1月 | 自動車リサイクル法、全面施行 | リサイクル料金の預託、ASRの再資源化義務など、自動車リサイクルシステムが本格稼働。新車購入時等にリサイクル料金の預託がスタート。 |
| 2005年以降 | リサイクル率の向上 | 法施行後、ASRのリサイクル率が目標値(2015年度までに70%)を達成し、不法投棄が減少するなど、一定の成果を上げる。 |
| 2023年 | DX化の推進 | 紙のリサイクル券の電子化に向けた動きが本格化。 |
| 2026年1月4日 | リサイクル券の新規発行業務廃止 | リサイクル情報のデジタル管理への完全移行(DX化)が完了。 |
2005年1月に施行された自動車リサイクル法は、不法投棄された使用済自動車から有害物質が流出し土壌や地下水が汚染される問題、フロン類の不適正な処理によるオゾン層破壊、エアバッグ類の安全な処理の必要性、そしてシュレッダーダストの殆どが廃棄物として埋立処分されている問題に対応するために制定されました。産業廃棄物最終処分場の逼迫によりシュレッダーダストを低減する必要が高まり、最終処分費の高騰、鉄スクラップ価格の低迷により、使用済自動車の逆有償化が顕著になり、不法投棄や不適正処理の懸念も生じていました。
実際、2003年の統計では、合計168,806台もの自動車が不適切な状態に置かれていました。こうした深刻な環境問題を解決するため、循環型社会を目指す個別法の一つとして誕生したのが自動車リサイクル法です。
システムの基本的な仕組み
自動車リサイクルシステムは、**「ゴミを出さない、資源を無駄にしない」**車社会を実現するための仕組みです。車を廃車にする際に出るシュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類の3品目を適切に処理するため、新車購入時などにオーナーが「リサイクル料金」をあらかじめ預託します。
このシステムの画期的な点は、使用済自動車の引取りからリサイクルに至る工程を電子マニフェストで管理する世界初の仕組みを採用していることです。これにより、1台1台の車の処理状況を追跡できる透明性の高い管理体制が実現されています。
これまでは、その預託を証明するものとして**「リサイクル券」という紙の証明書**が使われてきました。車を売却したり廃車にしたりする際、ダッシュボードの車検証入れに大切に保管されていたあの紙のことです。
そして今、この仕組みが20年ぶりに大きく進化しようとしています。
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2026年「大規模改造」後のシステム概要


なぜ今、大規模改造が必要なのか
今回のアップデートは、単なる「画面の変更」ではありません。システムの老朽化や幾多の機能改修によるシステムの複雑化が課題となっており、現行の自動車リサイクル業務における課題や、今後の自動車業界の変化に柔軟に対応すべく実施されます。
リリース当初はシステム停止などのトラブルがあったものの、2022年11月時点で安定稼働1,700日を達成し、約4年半重大障害なしという過去最高記録を継続中でしたが、20年間の複雑化・老朽化を解消し、デジタル時代の最新基盤へと作り変える文字通りの「大規模改造」が必要となったのです。
特に、自動車業界はガソリン車から電気自動車などへの転換が図られており、これらの外部環境変化を踏まえた、自動車リサイクルの更なる高度化に向けた取り組みが必要となっています。
大規模改造の3つの柱
「利便性」・「拡張性」・「効率性」をキーワードに改革コンセプトが決定されました。
- 利便性の向上:
利用者視点で使いやすいデザインへ刷新。シングルログインやスマートフォン対応など、現代のユーザー体験に合わせた設計。 - 効率性の追求:
手入力の削減や外部システムとの連携。QRコード読み取りやAPI連携により、業務時間を大幅に短縮。 - 拡張性の確保:
車載電池の普及など、将来の変化に柔軟に対応。EV時代を見据えた情報提供機能の実装。
20年前の情報技術から刷新し、継続可能な新しい技術・規格を採用し、低廉な保守を実現します。さらに、ICT時代の多様なセキュリティ攻撃等に対応し、今後20年のセキュリティを見据えた高度な基盤に見直されます。
現場レベルでは、**「紙の管理からの解放」と「IDの統合」**が最も大きな変化となります。
ディーラー・事業者向け:変更点と注意すべき実務のポイント


ディーラーの皆様にとって、2026年1月4日からは日常業務が劇的に効率化されます。特に以下の5点は、早急対応(心の準備も含め)に欠かせない情報です。
リサイクル券の新規発行停止と預託証明の電子化
最大の変化は、紙のリサイクル券がなくなることです。
変更点:
紙媒体で運用しているリサイクル券の新規発行を廃止し、預託状況をシステム上で確認する運用を導入します。これは2005年の法施行以来、実に20年ぶりの大転換です。
実務のメリット:
預託証明に係るディーラーでの印鑑管理、預託証明シールの貼り付け、コスト負担を軽減します。これにより、これまで当たり前だった紙の管理作業、印鑑の押印作業、そしてそれらに伴う保管スペースの確保やコスト負担から完全に解放されます。
注意点:
2025年11月頃から、リサイクル券用紙や預託証明印の発注受付が順次終了します。在庫管理を行っている事業所では、発注のタイミングに十分注意が必要です。過剰発注は無駄になり、不足すると年末年始の業務に支障をきたす可能性があります。
「シングルログイン」の導入
変更点:
これまで「引取」「解体」「フロン回収」など工程ごとに分かれていたID体系が見直され、一つのIDで全ての業務工程を利用できるようになります。複数の業務を兼任している事業者の方にとっては、まさに待望の機能です。
実務のメリット:
複数のID・パスワードを使い分ける手間がなくなり、ログイン後の画面構成も使いやすく改善されます。これまで「どのIDでログインするんだっけ?」「パスワードが合わない…」といった日々の小さなストレスが解消されます。さらに、担当者の引継ぎ時の説明も簡素化され、新人教育の負担も軽減されるでしょう。
セキュリティ強化:
シングルログインの実現と同時に、ICT時代の多様なセキュリティ攻撃等に対応した高度な基盤が導入されます。利便性と安全性の両立が実現されています。
QRコード・API連携による入力支援
変更点:
車検証のQRコードや車台のコーションプレート読み取りによる、入力作業の省力化を実現します。これは業務効率化における最大の目玉機能といえるでしょう。
実務のメリット:
手入力によるミスが減り、移動報告のスピードが格段にアップします。これまで車台番号や型式など、長い英数字の組み合わせを慎重に入力していた時間が大幅に短縮されます。特に繁忙期には、この効率化が大きな業務負担軽減につながるはずです。
また、外部システムとのデータ連携が柔軟にできるよう、API活用を中心としたインタフェース機能を構築します。リサイクル事業者の方が自動車リサイクルシステム上で実施していた移動報告やリサイクル料金預託状況の確認を、API連携機能を利用して実施することができるようになります。
これにより、自社の販売管理システムや在庫管理システムから直接データを送受信することも可能になります。システム間の二重入力が不要になり、さらなる効率化が実現します。
提供情報の拡充
変更点:
車載用電池の装備情報や易解体情報等を提供し、安全・安心な作業環境を実現します。
実務のメリット:
電動車(EV/HV)の取り扱いが増える中、安全・安心な解体・引取作業が可能になります。EV車やハイブリッド車が搭載しているリチウムイオンバッテリーは、発火の恐れがあることからイラスト付きの搭載情報を解体業者に提供します。
これは作業員の安全を守るだけでなく、事故のリスクを大幅に低減します。特に、これまでバッテリーの位置や種類が不明確だった車両について、視覚的に分かりやすい情報が提供されることで、作業の確実性が向上します。
収納方法の多様化
「事業者が、全国どこからでも、望む方法で」をコンセプトに現在のリサイクル料金収納方法を見直し、利便性向上を図ります。
これまでの銀行振込や現金払いに加えて、キャッシュレス決済など、現代のニーズに合った多様な決済手段が提供される予定です。事業者にとっても、ユーザーにとっても、支払いの選択肢が広がることで利便性が大きく向上します。
一般ユーザー向け:何が変わるの?
車を所有している皆様にとっても、以下のようなメリットがあります。
券の紛失リスクゼロ
紙のチケットを保管する必要がなくなり、預託状況はオンラインでいつでも確認できるようになります。これまで「リサイクル券をなくしてしまった」「車検証入れに入れ忘れた」といった不安から解放されます。
車を売却する際も、買取店に「リサイクル券はありますか?」と聞かれることはなくなります。オンラインで即座に預託状況を確認できるため、手続きがスムーズになります。
キャッシュレス決済の導入
リサイクル料金の預託に際して、多様な決済手段が選べるようになります。これまでの銀行振込に加えて、クレジットカードやQRコード決済など、普段使い慣れた方法で支払えるようになる予定です。
使いやすい検索画面
自分の車の処理状況を調べる画面が、スマートフォンからでも操作しやすいデザインに刷新されます。従来のシステムは主にパソコンでの操作を前提としていましたが、新システムではスマートフォン時代に対応したレスポンシブデザインが採用されます。
外出先でも、通勤電車の中でも、いつでもどこでも自分の車のリサイクル状況を確認できる時代が到来します。
2026年に向けたカウントダウンと準備
この大規模改造は2026年1月ですが、準備は2025年から始まっています。
準備スケジュール
業務担当者の皆様へのアドバイス
2025年の後半には、公式サイトで操作マニュアルや解説動画が豊富に提供されます。特に「初回ログイン」の手順などは、今のうちにブックマークしておき、チーム内で共有しておくことをお勧めします。
2022年度に業務改革コンセプトを策定してシステム要件を確定し、競争入札で委託ベンダーを決定、2023年度は開発の第一段階として設計の1年として、業務改革コンセプトの具体化を委託ベンダーと共に推進してきました。この綿密な準備期間を経て、いよいよ新システムが実現します。
また、システム移行期には一時的な混乱も予想されます。特に2026年1月の最初の数日間は、アクセス集中やシステムの初期不具合の可能性もあります。可能であれば、年末年始の業務を少し前倒しで完了させておくなど、余裕を持った対応が望ましいでしょう。
契約書上の「約款」や「料金」に関する注意点
リサイクル券の廃止は「証明方法」の変更であり、「リサイクル料金の支払い義務」自体に変更はありません。
預託金(リサイクル料金)について:
- 金額: 各メーカーや車種ごとに定められているリサイクル料金(シュレッダーダスト料金、エアバッグ類料金、フロン類料金、情報管理料金、資金管理料金の合計)の金額自体に変更はありません。
- 支払いタイミング: 新車購入時または中古車購入時に、引き続き販売店を通じて一括で預託する必要があります。
- 約款: 自動車の売買契約書や付属する約款に「リサイクル料金の預託義務」に関する記述がある場合、その義務規定に変更はありません。ただし、「リサイクル券(証書)の引き渡し」に関する文言は、今後は「リサイクル料金の預託情報(車台番号)のシステム上の確認」という表現に読み替えられることになります。
販売店の注意点:
契約書の説明: 営業スタッフは、お客様に対し、「リサイクル料金は徴収するが、紙の券は発行されないこと」、そして**「システム上でいつでも確認できること」**を丁寧に説明する必要があります。
預託漏れ防止: 紙のチェック体制がなくなるため、販売店はシステムへの確実な情報登録と預託金の管理をより厳密に行う必要があります。
システム大規模改造がもたらす業界全体への影響
環境への貢献
自動車リサイクル法の施行により、リサイクル率は法施行前の80%程度から95%以上にまで向上しました。今回の大規模改造により、さらなる効率化と透明性の向上が期待されています。
EV時代への対応
EVの普及によって、車載用リチウムイオン電池など、新たなリサイクル対象が増えています。同時に、回収が困難な樹脂やガラスなどの素材リサイクルへの要求も高まっています。
新システムでは、LiBのトレーサビリティ管理や、素材リサイクルの高度化に取り組む事業者へインセンティブを付与するための機能開発が進められています。これにより、2026年4月から開始予定の「資源回収インセンティブ制度」とも連携し、より高度なリサイクル社会の実現を目指します。
業界全体のDX推進
今回の大規模改造は、自動車リサイクル業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引する役割も担っています。API連携機能の導入により、各事業者が独自に持つシステムとの連携が容易になり、業界全体のデータ活用が進むことが期待されています。
まとめ:2026年のアップデートは「業界のDX」
今回のシステム大規模改造は、例えるなら**「長年増改築を繰り返してきた古い旅館を、最新のIT設備を備えたスマートホテルに全面リニューアルする」**ようなものです。
建物の基礎から見直し、部屋の配置を最適化し、最新の設備を導入する。それでいて、これまで培ってきた「おもてなしの心」は変わらず継承する。そんなイメージです。
最初は操作に戸惑うかもしれません。しかし、紙の管理から解放され、一つのIDで全てが完結する未来は、皆様の業務負担を確実に軽減します。QRコードを読み取るだけで車両情報が自動入力される、API連携で自社システムと直接データをやり取りできる、スマートフォンからいつでも預託状況を確認できる──こうした利便性を一度体験すれば、もう元の方法には戻れないでしょう。
日本の自動車リサイクルシステムは、静脈側の多くの事業者をつなぎ、現在の自動車リサイクル率の高さを支えている世界でも稀な存在です。この優れたシステムが、さらに進化を遂げることで、日本の自動車リサイクルは新たなステージに進みます。
新しいシステムを味方につけて、より安全で効率的な自動車リサイクル業務を実現しましょう。2026年1月4日は、日本の自動車リサイクル業界にとって歴史的な転換点となるはずです。
今後、詳細な操作画面などの情報が入り次第、また本ブログで解説していきます!
よくある質問
Q. 2026年1月4日以降、古いシステムは使えなくなりますか?
A. はい、新システムへの完全移行となります。2025年11月までに発行されたリサイクル券は引き続き有効ですが、新規発行は停止されます。
Q. API連携を利用しない事業者はどうなりますか?
A. 従来どおり、自動車リサイクルシステム上から移動報告やリサイクル料金預託状況の確認が可能です。API連携は任意の機能です。
Q. 現在使っているIDやパスワードはどうなりますか?
A. シングルログイン導入に伴い、新しいIDが発行される予定です。詳細は2025年後半に公開されるマニュアルをご確認ください。
参考リンク:
業務の皆様、初売りから税制変更に伴う「知識の共有やスタッフへの周知徹底」といった企業内のかじ取り役を担うものとして、責任感のある仕事「縁の下の力持ち」として本当にご苦労様です。
4月、5月の制度変更ゴールに向けてともに頑張って参りましょう!



