2019年5月に公布された道路運送車両法の一部を改正する法律により、4年以内に自動車車検証のデジタル化を終えることを国は定めています。ディーラー業務においてどのような影響やメリットがあるのか国土交通省の「自動車検査証の電子化に関する検討会」資料を基に解り易くまとめてみました。
車検証デジタル化の背景
国が進める「未来投資戦略 2018」(平成 30 年 6 月 15 日閣議決定)」においてデジタル・トランスフォーメーションが世界的に拡大する一方で、我が国の行政部門が旧態依然としたアナログ型行政を続けている現状を転換し、民間のデジタル化の動きに遅れることなく、デジタル時代に即した組織・サービスとしていくことで、世界最先端のデジタル社会の基盤を整備していくことを目指す
現状、自動車の登録・検査に係る申請数は年間 3 千万件に上っている
国民にとって身近な頻度の高い手続であることを意味しており、手続きの簡素化を図ることは、自動車ユーザーをはじめ、自動車保有関係手続に関与する者の負担軽減につながる重要な課題となっている。
OSSの現状
平成 10 年 12 月より自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)の検討が開始され、平成 17 年より新車新規手続を対象にオンラインでの申請を可能とする「自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)」の運用が開始
平成 29 年 4 月からは対象手続が継続検査、変更登録、移転登録、中古車新規登録、一時抹消登録及び永久抹消登録に拡大
令和2年3月時点で、新車・中古車新規登録については 44 都道府県、継続検査については全国 47 都道府県、変更登録、移転登録、一時抹消登録及び永久抹消登録については全国 44 都道府県で利用可能となっている。
今後の課題
OSS の利用は、新車新規については、平成 30 年度末で 106.6 万件(40.8%)、継続検査については、265.5 万件(16.7%)となっており、新車新規については一定の利用があるものの、継続検査等での OSS の利用は低調
原因はOSS申請の場合においても自動車検査証受取りのため運輸支局等への出頭が必要となっていること。継続検査、変更登録及び移転登録(以下「継続検査等」という。)に関する OSS の更なる利用促進を検討していく上での課題
電子化の狙い
自動車検査証の電子化は、自動車検査証の情報を単に電子化するにとどまらず、自動車保有関係手続のために必要な運輸支局等への出頭を不要にすることを可能とし、OSS の利便性をさらに向上させる
申請者の負担軽減を図り、業務の効率化を促進する効果
自動車検査証のIC チップの領域であって、自動車検査証情報等国土交通省令で定める事項が記録された領域以外の領域(以下、「空き領域」という。)を利活用し、組織の壁を越えて自動車関連情報が一層活用・連携されることを通して、行政機関、民間事業者による新たなサービスの展開の可能性につながる
クルマ社会を取り巻く環境変化CASE
CASE が一層進み、様々な移動サービスが連携して、個人に最適な移動手段の検索、予約、決済を総合的に提供するサービスである MaaS(マース:Mobility as a Service)の実現へむけて
自動車検査証の電子化は、安全・安心な交通環境の整備、自動車関連業務の効率化、さらには、自動車に関わる社会の利便性の向上等、自動車ユーザーや自動車関係事業者をはじめとした社会全体に大きな価値をもたらすものと期待される。
デジタル化の基本方針
現行の自動車検査証については、自動車ユーザーはもとより、民間事業者や行政機関等において、自賠責保険・自動車保険契約、定期点検整備、自動車の流通、交通取締り、徴税、各種許認可など、様々な場面で利用されているため、運輸局への出頭を不要化できる仕組みを残しつつ閲覧・持ち運びの容易さを維持しながら、電子化された場合には利用者にとって更なるメリットがある仕組みとすることが適当
デジタル化への検討内容
現在 OSS の対象となっていない手続についても OSS に対応するよう検討を行うとともに、電子化を通じた自動車検査証の活用や、その書き換えにおける柔軟な対応等更なる利便性向上を目指した検討を
継続していくべきである
具体的電子化方法
①電子化に伴う申請手続フロー
②電子化の方式
③閲覧方法等
④自動車検査証の記録事務代行・運用体制等
⑤軽自動車等における自動車検査証の扱い
⑥導入時期
⑦導入コスト等
①電子化に伴う申請手続フロー
運輸支局等に出頭していたが、これを不要化するためには、自動車検査証の情報の更新に係る事務の一部について、申請に関与した OSS手続代行者(指定整備事業者等)又は OSS 申請代理人(以下、「OSS 手続代行者等」という。)において実施することが適当である。
OSS 申請が行われた場合
→ 運輸支局等において必要な審査を実施し、特段の問題がなければ、審査完了の旨を通知
→ 自動車検査証の有効期間の更新情報を OSS 手続代行者等にシステム上で通知
→ OSS 手続代行者等において電子化された自動車検査証に記録する
移転登録に於いても同様の処理が考えられる
自動車検査証の記載事項が更新された場合
新たな自動車検査証受取のために運輸支局等に出頭する必要がある。
継続検査の際に併せて交付される検査標章が運輸支局等でのみ交付される場合は、
結局、運輸支局等への出頭が残る
検査標章についても、OSS手続代行者等で印刷・交付することを可能とする必要がある
OSS 手続代行者等が標章を印刷・交付することが適当
②電子化の方式
ICカードなどICチップを活用する方式とオンライン上のみで自動車検査証情報を確認する方式が考えられていますが、インターネット環境の無い場所での活用も考慮しICチップを活用する方式が採用されるのが適当であるとされています。
ICカード方式は、カード券面にも自動車検査証の情報の一部を記載することが可能
ICカードの券面には、自動車の使用者等が容易に自動車検査証の記録内容を確認できるよう必要な事項を表記することが適当
③閲覧方法等
自動車検査証の記載事項等
自動車検査証記載事項の一部については、券面に記載し、容易に目視での確認ができるようにする
継続検査等の OSS 申請において更新されない事項についてはICチップ記録のみとする
ICチップの空き領域については、将来的に行政機関、民間事業者等も利活用でき、自動車ユーザーの利便性の向上や社会的な要請に応えるような仕組みとする
ICチップ記録の閲覧方法
個人情報へのセキュリティ対策が重要である
QRコードについては別途読取端末が必要であるため閲覧の利便性の観点から、セキュリティコードの入力を求めることが適当
ICチップ記録の印刷等
読取端末を用いた閲覧のほか、利用者の利便性を確保する観点から、ICチップ記録の印刷及び電子ファイルの生成を可能とする仕組みを導入すること
広く一般にICカードの読取環境が普及するまでの当面の間は、ICチップ記録の閲覧のために必要
となるICカードリーダ等を有しない場合であっても、ICチップ記録の閲覧を可能とするため、運輸支局等において自動車検査証を交付する際に、併せて、当該情報を印刷した控えの書面を交付する運用等を行う
継続検査等の OSS 申請時に、記録等事務代行者(④参照)が自動車検査証の記録を更新した際にも、同様に自動車ユーザーに対して控えの書面を交付する
自動車検査証の利用者における自動車検査証記載内容の手入力作業を不要とし、業務効率化が図られるよう、ICチップ記録情報を各利用者が用いているアプリケーションに電子的に取り込めるような仕組みを導入する
④自動車検査証の記録事務代行・運用体制等
記録事務及び印刷事務の代行・運用体制
継続検査等の OSS 申請時の情報の記録及び検査標章の印刷・交付の事務(以下、「記録等事務」という。)を実施することを可能とすることが必要
本来国が実施する事務の一部を OSS 手続代行者等が実施することを可能とするものであり、国からの事務の委託という位置付けになる
OSS 手続代行者等に一定の要件を設定し、これを満たした者に限り国から委託し、記録等事務代行を認めることとする
国は、検査標章の偽造防止対策等を実行するとともに、必要に応じて監査等を行える体制を構築する
OSS 手続に関与しない者への記録等事務代行の委託
運輸支局以外の事業者間での記録簿事務代行委託業務については責任の所在(管理体制の複雑化)などから認めないとする方針です
記録等事務代行者間での記録等事務代行に係る設備の共用
記録簿事務代行委託が認められない同様に設備の併用も認められないとする
⑤軽自動車等における自動車検査証の扱い
軽自動車及び小型二輪車における自動車検査証について、電子化しない場合には、書面の自動車検査証と電子化された自動車検査証が併存することとなります。
民間・行政双方における自動車検査証の利用者が、2系統の事務を実施することが必要となり、業務の煩雑化に繋がるため、あわせて電子化すること
軽自動車、小型二輪車の自動車検査証についても、登録車と共通の機器が利用できる仕組みとすること
⑥導入時期
導入方法
一斉に電子化する方が望ましく、全車を対象に導入を開始し、継続検査等のタイミングで順次切り替えていくべき。リサイクル法でのリサイクル券発行の発行イメージで良いのではないでしょうか。
る国土交通省と軽自動車検査協会とで、システム更改の時期が異なるため、交付時期が離れすぎないよう、予め調整することが必要
導入スケジュール
国が保有する自動車登録検査業務電子情報処理システム(以下、「MOTAS」という。)の改修が必要
システムの開発状況、関係者における準備状況、事前の試行状況等を踏まえ、最終決定
⑦導入コスト等
検査標章の印刷が汎用プリンタで行えることについて、配慮すること
ICチップ空き容量の利活用
容量を制限することや様々な利用が検討されているようですが、現段階では詳細が定まっておらず業務エリアから少し異なった話題となるため今回は割愛しました。
ディーラーとしての活用できる用途が定まった時点で特集を組みたいと考えております。まずは導入内容優先として記載をすすめます。
電子化としての技術的要件
ICカードの標準仕様
銀行のキャッシュカード、クレジットカード、運転免許証などと同じサイズ
券面記載事項
備考欄の記載方法については、現在の紙の自動車検査証が、民間事業者や行政機関等においても様々な場面で既に利用されていることを踏まえつつ、備考欄項目があることを認識するための必要最低限の記載とすることなどを基本的な考え方とする
業務フローについて
(1)支局等における自動車検査証の発行に係る業務フロー
自動車検査証が電子化されることで、自動車検査証 1 枚あたりの発行時間が増加することが見込まれる。特に紙とカードの自動車検査証が混在する電子化後の 3 年間は、支局等における業務が煩雑化することが想定され、自動車検査証の円滑な発行に向けて、支局等の効率的な業務フローを検討・実行する必要がある
新規登録の OSS 申請の場合、現在は自動車登録官が登録内容の審査を行い、申請者が支局等に来局した後に、自動車検査証を出力している。
電子化後は自動車登録官が登録内容の審査を終えた時点で自動車検査証を出力し、自動車検査証の発行が終えた旨を申請者に伝えた後に、申請者に支局等に来局していただく業務フローが考えられる。
これにより、申請者の支局等における待ち時間の縮減が期待できる。
(2)記録等事務代行業務に係る業務フロー
記録等事務代行者が不正な IC チップの記録更新や検査標章の印刷を行うことができないように、システムと IC チップ間の相互認証機能やシステムのコマンド機能を活用した業務フローを検討
MOTAS で ICチップ間で相互認証を行い、記録等事務を行うことが適切な車両であることを確認した後に、MOTAS から記録等事務代行者に対して記録更新や印刷の指示を行う。
デジタル化に向けての業務所感
2023年の導入で進められている自動車検査証デジタル化についてその恩恵は受けられるのでしょうか。業務作業量は本当に減るのでしょうか、皆様はどう感じておられますでしょうか?
作業イメージですと、AIRACの電子入力にETCセットアップ業務がくっついているようなイメージをもっております。新規登録・新規検査若しくは移転登録(いわゆるICチップの新規発行が必要)ならば運輸局で発行が必要ですので店舗での手間は増えないイメージですが、継続検査と標章発行は如何なものでしょうか。3年間は大変そうですね、リサイクル券発行が蘇ってきます。
取引完了後の所有権解除(ディーラーで行うべきもの)や所有者情報の記載変更などはお店で完了というのは事務簡素化になるのではないでしょうか
さて所有権発行に伴う、残債の確認作業が業務課若しくは経理課にありますが、電話や県外からの郵送依頼等の案件では必ず現在の車検証の所有有無を検査証で確認作業をおこなっています。電子化によって検査証ICカードでは所有の有無が目視確認できません。
車台番号と登録番号が確認できれば閲覧できるネット上でのサービスも有料ですが利用はできます。登録事項証明という方法も手間を掛ければ可能かもしれませんが効率的ではありません。
色々なご意見や不安材料も多いかと思われます。導入に向けて今後説明会も実施されることになるでしょうし、デバイスも店舗に揃える必要があるでしょう。担当者は誰にするのかとか
まずは、自動車検査証のデジタル化について事前情報として国土交通省のPDF長文を読まれる前に少しでも時間短縮にご利用して頂ければ幸いです。
新しい情報が入りましたら出来る限り早期に更新して参ります。また新たな時代の波に乗りましょう!
最新情報を更新しました こちらから