所有権解除について考察

業務

オートローンなどに於ける割賦販売においては自動車の所有権をクレジット会社や、多くはローン会社に代わって一旦ディーラーに所有を置く登録届出登録が一般的で所有権留保登録と言います。その後分割の支払いが完了した際には所有者名義を購入者に戻す手続きが発生します。この所有権を戻すべき手続きを所有権解除といいますが登録業務の現場において手間の掛かる作業であったりもします。ディーラー目線で所有権についてお話を進めて参ります。お付き合い下さい

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車両購入時の所有権留保の考え方

普通・小型乗用車や貨物自動車(登録車と言います)は動産(資産)に当たるため印鑑証明を添え運輸省に登録を行います。車検証上の所有者はその車の売買に関するすべての権利を有します。一方軽自動車は動産には当たらず軽自動車協会へ届出をすることによって車検証上の所有者となります。

登録車も軽自動車も権限は同じなのですが権利上の重みが違います。さて新車・中古車を購入する際にお支払い方法を決めます。「納車時に現金で」または「全額期日内お振込み」であるには場合無条件で所有権を購入者にお渡しすることになりますが、必ずしも全ての方が所有者を購入者にするともかぎりません。印鑑証明の提出と押印が手間という理由からディーラーに所有を置いておくと後に手間が掛からないメリットもあるため、あえて取引が完了しているのに車検証の所有者をディーラー(販売店)にしておく方もおられます。

メリットは先ず登録時に印鑑証明を取りに行く手間がない、更には転売時にも販売店にすべての権限があるので何も用意しなくよい。車の引き渡しのみで済ませることができることです。

 稀に所有者が不幸にもお亡くなりになったケースでは所有者の権利譲渡が財産(軽自動車は除く)である以上相続の手続きが発生します。

相続となると、家・建物・金融資産等と同様に譲渡権は相続の権利のある者すべての承認が必要となり、自動車に動産価値があろうがなかろうが遺産相続に関わる分割協議を行い協議書に於いて代表者にその権限を一任させた後に代表者は譲渡手続きを始めることができるようになります。お車が古くなるに従って廃車手続に伴うこの権利譲渡のリスクは増していくことになります。

割賦販売に於ける登録・届出に於いては無条件で販売店で所有権を置くことになります。クレジット契約に於いても同様に販売店が割賦契約を結んでいるクレジット会社と提携することで所有権を販売店に置くようにしています。

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所有権発行の手続き

下取り車の所有権

 新車・中古車の下取り(孫どり車)車両の所有権について発行・取得に於いては販売会社連携によって処理を進めます。陸運局内に販売店を取り纏める販売店加盟協会があって、所有権もその窓口を介して集配等の利用によりスムーズに所有権発行処理を行っています。

 協会に属さない販売店の所有権では通常通り所有権発行依頼書・本人より発行業務の依頼を受けた委任状・車検証上の所有者若しくは使用者の本人の確認がとれる書面を添付することによって郵送または直接訪問をして発行して貰います。

 上記に例のような場合では下取りの所有権取得に手間が発生することから注文書の中に予め所有権手続き代行の為の費用を計上し購入者から頂いています。

 販売会社での下取りはこの所有権譲渡が可能な状態で搬入できることが下取りであって、書類不備の状態で後の業務課の作業として送られてくる場合も少なくありません。旧所有者の印鑑証明以外なら行政書士に依頼して揃えることも可能ですが購入者でなければ判らない情報も多々ありますので現場で出来る限り書類は整えるか情報収集はしておきたいものです。

購入者からの依頼における所有権

割賦の期間が終了すると所有権を購入者に譲渡する義務が販売店にはあります。この場合の所有権移転処理(所有者名義を購入者にするのみの処理)は販売店が無償で行うことになります。割賦が終わった段階で購入者に権利譲渡が出来ることを連絡するという作業は販売スタッフに委ねられるということになりますがそこまで細かなつながり(管理している)スタッフも少ないと思われます。

 大半は当該車両を売却又は譲り渡す際に初めて所有権書類の必要にお気づきになります。どうして販売店に所有権(すべての権限)があるのか?とお怒りになる購入者もおられますが、これは販売時に上記所有権留保の考え方等しっかりとした説明がなされていないとトラブルになります。皆様はご自身のクルマの車検証名義をご理解されていますでしょうか。

さて、購入者から所有権のご依頼があった場合、大半は業務課(若しくは経理課)では購入者の取引が完了しているか、割賦の場合はクレジット会社に残債の有無を確認(注)をし譲渡しても良いか承認をとります。その上でご依頼主が本人であるかの確認を取った上で発行します。

注)クレジット残金を完済したいので弁済金額を知りたいと言われる方がいますが個人情報の観点から残債が残っているか否かの回答のみ販売店は確認できます。金額の提示は本人へが原則となります。但し残債依頼書に免許書の添付(免許証番号の記載)があればその限りではありません

発行の際には管轄外(他県登録で使用するか否か)の確認をとります。登録車の場合には販売店の印鑑証明本通(原則2か月以上期限があるもの)を添付する必要があるためです。

実際に発行する方法として、店頭に本人が来られて渡せる場合には本人証明の店頭での確認で済みます。来られない場合には本人住所に書留郵送でも確実に本人に発行が可能です。

ご本人以外の発行については上記の協会に属さな販売店への発行のように発行依頼書や購入者が証明できる本人証明の写しを持参していただく必要があります。添付に必要な書類は各社ディーラーによって異なりますが、車検証の使用者本人の確認が出来るもの(車検証住所が同一である)と購入者から依頼を受けたことの証明(委任状)、発行を受ける者の本人証明が揃っていれば大丈夫でしょう。

所有権発行の現場から

販売店協会経由の発行依頼では県外使用案件はありません。必ず自社商品にするために販売者の名義に移転登録(所有者を変える登録のこと)を済ませるからです。ですが緊急性はあります。いつ受け取ったかいつ発行されたか協会の管理ですので期限があります。

お客様からの依頼もいついつ取りに行きますといった案件も多く業務作業を止めてでも行わなくてはならない優先案件になります。所有権発行後の処理も重要性があり、管理ユーザーからの消し込みは最重要です。点検の案内等その後そのお車番号で案内が発送されることが無いよう徹底が必要です。

企業によっては廃車を除く他メーカーへの流出やその原因について問われる場合も多く、高年式で流失の有無も知らないというケースでは管理に問題は無かったかスタッフ全員に問われる案件です。

所有権発行業務は負の作業でもありながら業務を圧迫します。必要不可欠な作業であるがゆえに多忙期に於いてはただただ辛い作業になります。そして譲渡証の重複発行は無いか、個人情報漏洩には厳重に注意を払い他人の資産の管理という責任重大な作業でもあるのです。

所有権データーをどう扱うのか

所有権発行に於いては、

所有権が実施に弊社になっていることの確認(販売時の条件・注文書データ)。現時点で売掛金(残債)が残っていないかの確認作業

  • 所有権が実施に弊社になっていることの確認(販売時の条件・注文書データ)
  • 現時点で売掛金(残債)が残っていないかのデータ確認作業
  • 過去に於いて所有権が既に発行されてはいないかというデータ確認

クレジットの残債確認以前に最低減上記のデータを参照する必要があります。

上記データをいかに効率よく管理するかが問われる訳です。

注文書は経理部、残債は経理部とサービス部、所有権発行リストは業務課これでは大変です。

皆さんどのように管理をされているのでしょうか?

弊社では出来る限りアクセスを設計利用してデータベース管理していました。ただデータを自社で別管理する、所有権発行の為に入力の手間を掛けるのがベストか?(顧客の精査には有効なのですが)

そもそもアクセス設計レベルの人材がいるのか?データ精度の維持管理はどこまで可能か等々課題は大きいと思います。会社には理解されにくい業務を圧迫する案件でもあります。