車好き、旅好きの皆様に衝撃的なニュースが飛び込んできました。現在、特定の地域に居住するユーザーのみが取得可能だった地方版の「図柄入りナンバープレート」が、早ければ2029年度にも居住地を問わず選択可能になる方針が国土交通省(国交省)の検討会で示されました。
この変革は、単なる制度変更にとどまらず、全国のカーライフと地域振興のあり方を根底から変える可能性を秘めています。現在、全国には73種類もの個性豊かな地方版図柄ナンバーが存在します。これが全国のユーザーに解放されることにより、愛車の「走る広告塔」としての魅力は飛躍的に高まり、地域のPRや経済振興に新たな波をもたらすことが期待されています。

本記事では、この「居住地フリー化」の具体的な内容、制度変更の背景にある寄付金増額への取り組み、そして今後のユーザーへの影響について、最新の検討会資料に基づき徹底解説します。
走る広告塔:地方版図柄ナンバーの現状と導入の歴史
地方版図柄入りナンバープレートは、「走る広告塔」としての役割を担い、地域の風景や観光資源をデザインに反映させることで、地域の魅力を全国に発信することを目的に導入されました。2017年の制度導入以来、着実に普及を続け、今や日本のカーカルチャーに欠かせない存在となっています。
73種類のデザインが持つ個性と魅力
図柄入りナンバープレートは、2017年(平成29年)に導入され、全国版と地域版の2種類があります。このうち、地方版は現在、全国で73種類が発行されています。
この地方版は段階的に導入が進められており、第1弾が平成30年10月1日から交付開始されたのを皮切りに、現在までに第4弾までが決定しています。
第1弾(41地域):2018年10月1日~
盛岡、仙台、富士山(山梨・静岡)、京都、熊本など、各地の特色あるデザインが登場しました。第1弾で最も人気が高かったのは「熊本」ナンバーで、くまモンの白抜きシルエットと右側から見切れたくまモンが織りなす遊び心満載のデザインが、復興支援の意味も込められ、圧倒的な支持を集めました。
第2弾(17地域):2020年5月11日~
知床、弘前、飛鳥、出雲などが加わりました。知床の雄大な自然、弘前城の桜、飛鳥の歴史的景観など、より地域の個性が際立つデザインが特徴です。
第3弾(10地域):2023年10月23日~
秋田県、東京都、沖縄県など、都道府県全域を単位とする図柄や、いわき、岡崎などの地域図柄が追加されました。東京都版は47都道府県の県花をモチーフにした美しいデザインで注目を集めています。
第4弾(5地域):2025年5月7日~交付開始予定
十勝、日光、江戸川などが含まれます。これにより、地方版図柄入りナンバーは全73種類という大規模なラインナップとなりました。
これらのナンバープレートは、導入地域における交通改善や観光振興のための取り組みに充てられる寄付金を募る仕組みとなっています。すでに累計で数億円規模の寄付金が集まっており、各地域の交通安全施設の整備や観光PR活動に活用されています。
現在の厳しい交付要件と普及率の地域差
現在、地方版の図柄入りナンバープレートは、その図柄の該当地域内に登録・届け出されている自動車に限定して交付されています。
つまり、「京都」ナンバーをつけたい場合は、たとえ京都のデザインが気に入っていても、京都を管轄する運輸支局等に登録されている車でなければ取得できませんでした。これが、今回大きな変革を迎えるポイントです。
実際、国土交通省が公表しているデータによると、地方版図柄ナンバーの普及率(対象地域の保有台数に対する取り付け台数の割合)は地域によって大きな差があります。第1弾導入地域の中では、地域住民の強い愛着が反映された地域ほど普及率が高く、人口規模だけでなく地域アイデンティティの強さが普及に影響していることがわかります。
また、申込件数では熊本、仙台、富士山、広島などが上位を占めており、キャラクター入りデザインや地域を象徴する風景が入ったプレートに根強い人気があることが明らかになっています。
【大転換】2029年度にも実現へ!「居住地フリー化」の衝撃
国土交通省が2025年6月25日に発表した「図柄入りナンバープレート等に関する検討会」の中間取りまとめは、この地方版ナンバープレートの交付要件を大幅に緩和するものです。この発表は、自動車業界に大きな波紋を広げています。
居住地を問わずデザインを選択可能に
国交省は、自動車の使用者が希望するデザインを、居住地を問わず選択できるようにする案を示しました。この新しい仕組みは「図柄ナンバープレート(ふるさと版)」(仮称)として創設が検討されています。
これは、遠方に住んでいる人が故郷のナンバーデザインを選んだり、お気に入りの旅行先の地域のデザインを選ぶことができるようになることを意味します。たとえば、東京在住の沖縄出身者が故郷への思いを込めて沖縄デザインを選んだり、富士山が好きな北海道在住者が富士山ナンバーを選ぶことが可能になります。
この変更は、早ければ2029年度にも導入したい考えです。これにより、図柄入りナンバーの魅力が飛躍的に高まり、結果として寄付金の増額や地域振興などへの相乗効果が期待されています。
実現すれば、ふるさと納税のような形で、全国のドライバーが自分の応援したい地域を選び、寄付を通じて支援できる画期的な仕組みとなります。この「ふるさと版」の創設により、地域間の良い意味での競争が生まれ、より魅力的なデザインが次々と登場する可能性も高まります。
注意点:地名表示は変わらない
この居住地フリー化の導入にあたって、注意すべき重要な点があります。それは、ナンバープレート上部に記載されている地名(運輸支局の所在地やご当地名)は変わらないという点です。
例えば、あなたが大阪に住んでいて、沖縄のデザインを選んだとしても、ナンバー上部の地名は現在の登録地に基づく「なにわ」や「大阪」のままとなる、ということです。この点は、地域の識別という基本的な機能を維持しつつ、ユーザーの「デザインへの自由な選択」を可能にするための措置です。
つまり、「なにわ」という地名表示の下に、沖縄の美しい海とシーサーのデザインが入る、といった組み合わせが実現します。これにより、ナンバープレートの基本的な機能である車両の識別や所在地の確認という役割は保持されながら、デザインの自由度は大幅に拡大されることになります。
制度変更の裏側:地域振興を支える「カラー版への統一」と導入要件緩和
今回の交付要件緩和と同時に、国交省は地方版の図柄入りナンバープレートに関して、重要な仕様変更を行う方針を示しています。また、より多くの地域が図柄ナンバーを導入できるよう、要件の大幅な緩和も決定されました。
地方版はカラー版に一本化
現在、地方版のナンバープレートは、寄付金なしで取得できるモノクロ版と、1,000円以上の寄付金が必要なカラー版を選択できます。
しかし、今後、地方版についてはカラー版に統一する方針が示されました。全国版に関しては、モノクロ基調のデザインも残すとしています。この決定は、制度の持続可能性を確保するための重要な判断です。
カラー統一の背景と目的
なぜ地方版のみカラーに統一するのでしょうか?
背景には、ナンバーを製作する業者の負担や、原料であるアルミの価格が高騰していることなどが挙げられています。複数種類のプレートを製作することは、供給者側に大きな負担をかけており、制度の持続性を脅かす要因となっていました。
そして、最大の目的は寄付金の増額です。カラー版を選択する場合、交付手数料(中板で約2千円)に加えて、モノクロ版(約1万円)よりもさらに1,000円以上の寄付金が必要となります。
このカラー版への一本化により、図柄入りナンバープレートを希望するユーザーは、自動的に地域振興のための寄付を行うことになります。寄付金は最低1,000円から、100円単位で任意の金額を選択できます。より多く寄付したいという方は、上限なく寄付することが可能です。
興味深いデータとして、全国版図柄入りナンバープレートの申込件数の9割以上が軽自動車で、そのうち6割以上が寄付なしのモノトーン版を選択しているという実態があります。これは、軽自動車ユーザーが白ナンバー化を目的に図柄ナンバーを選択しているケースが多いことを示唆しています。
寄付金の使い道と実績
集められた寄付金は、地域ごとの「公益財団法人日本デザインナンバー財団」が管理し、交付地域における交通改善や観光振興などに関する取り組みに充てられます。
具体的な活用例としては以下のような事業があります:
交通安全施設の整備
横断歩道の改修、ガードレールの設置、カーブミラーの増設など、地域の交通安全を向上させるハード面の整備に活用されています。
観光振興事業
観光案内板の設置、観光PR動画の制作、観光イベントの開催支援など、地域の魅力を発信する活動に使われています。
交通環境の改善
公共交通機関の利便性向上、パークアンドライド施設の整備、EV充電スタンドの設置など、持続可能な交通システムの構築に貢献しています。
さらに、今回の制度見直しでは、寄付金の使途に新たに「災害復旧・復興支援」も追加されることが決定しました。これにより、被災地の復興を図柄ナンバーの寄付金でサポートする道も開かれます。熊本地震後の熊本ナンバーの人気が示すように、図柄ナンバーは単なるデザインの選択を超えて、地域への応援メッセージとしての役割も果たしています。
つまり、ユーザーはナンバーを選ぶだけで、遠い地域の活性化に貢献できるようになるのです。これは、ふるさと納税と似た仕組みであり、「応援したい地域」を選んで支援できる新しい形の地域貢献モデルと言えるでしょう。
導入要件の大幅緩和で対象地域が拡大
中間取りまとめでは、地方版図柄ナンバープレートの導入要件も大幅に緩和されました。
これまでの要件:
- 単独市区町村での導入:登録車の保有台数10万台以上
- 登録車と軽自動車合計:17万台以上
新しい要件:
- 単独市区町村での導入:登録車の保有台数7万台以上
- 登録車と軽自動車合計:12万台以上
この緩和により、これまで導入が難しかった中規模都市でも図柄ナンバープレートの導入が可能となります。今後、さらに多様な地域の図柄が登場し、ユーザーの選択肢は一層広がることが予想されます。
地方創生の観点からも、この要件緩和は大きな意味を持ちます。人口減少が進む地方都市にとって、図柄ナンバープレートは地域のアイデンティティを発信し、関係人口を増やす重要なツールとなり得るからです。
図柄ナンバープレートの申込方法と活用術
図柄入りナンバープレートの取得は、思いのほか簡単です。ここでは、申込方法から活用のポイントまで、実用的な情報をお届けします。
申し込みは簡単、現在乗っている車もOK
図柄入りナンバープレートは、新車・中古車の購入時だけでなく、現在お乗りの車の番号が変わることなく、いつでも交換することができます。
申込方法は3つ:
- WEBサイトから自分で申し込む 図柄ナンバー申込サービス(https://www.kibou-number.jp/)から24時間いつでも申し込み可能です。車検証を手元に用意し、画面の指示に従って必要事項を入力するだけで完了します。
- ディーラーや整備工場に相談 車の購入時や車検の際に、担当者に相談すれば手続きを代行してもらえます。
- 行政書士に依頼 名義変更などの手続きと同時に図柄ナンバーへの変更も依頼できます。
ただし、地域名表示が変わる申込み(例:引っ越し等)を行う場合は、希望番号による手続きが必要となります。
費用の目安:
交付までの期間は、入金確認後、約2週間程度(土日祝日・年末年始を除く)です。人気の抽選番号(「1」「7」「8」「88」「333」など)を希望する場合は、抽選に当選する必要があるため、さらに時間がかかることがあります。
記念保存制度も整備
取り付けた図柄ナンバープレートは、廃車するまで使用し続けることができます。また、使用終了後には、不正使用防止のための穴を開けた上で、取り外したナンバープレートを記念に受け取ることができる制度も用意されています。
愛着のある図柄ナンバープレートを、愛車との思い出として保存できるのは嬉しいポイントです。ガレージに飾ったり、自宅の壁に掛けたりと、カーライフの記念品として大切に保管しているオーナーも多くいます。
対象車両と注意点
対象車両:
対象外:
軽自動車の自家用は黄色の縁取り、事業用登録自動車は緑色の縁取りが施されることで、車両の区分が明確化されています。
また、図柄ナンバープレートは樹脂製シートを使用した特殊な構造となっているため、取り扱いには注意が必要です。高圧洗浄機の至近距離からの使用や、硬いブラシでのゴシゴシ洗いは、図柄を傷める原因となるため避けましょう。
地域振興への期待と効果
地方版図柄ナンバープレートの導入は、2017年の募集開始以来、国交省が「地域振興、観光振興の取組が一層促進されること」を期待してきた施策です。
実際、図柄ナンバープレートは次のような効果をもたらしています:
認知度向上効果
図柄ナンバーをつけた車が全国を走ることで、地域の名前や特産品、観光地の認知度が向上します。まさに「走る広告塔」としての効果です。
地域愛の醸成
地元住民が自らの地域の図柄ナンバーを選ぶことで、地域への愛着や誇りが高まります。普及率の高い地域ほど、住民の地域アイデンティティが強い傾向が見られます。
経済効果
寄付金による直接的な資金提供に加え、観光客の増加による経済効果も期待されます。「このナンバーのデザイン、実際に見てみたい」という動機で観光地を訪れる人も少なくありません。
今回の居住地フリー化は、その期待をさらに押し上げる、強力なドライバーとなるでしょう。全国のドライバーが「応援したい地域」を選んでナンバーをつけることで、地域間の新しいつながりが生まれ、日本全体の地域活性化につながることが期待されます。
まとめ:新時代のカーライフと地域共創モデル
2029年度にも導入が見込まれる地方版図柄ナンバーの「居住地フリー化」は、自動車ユーザーにとって、愛車の個性化の選択肢を大きく広げる画期的な改革です。
あなたが応援したい地域や、心惹かれる観光地の風景を、居住地を気にすることなく、誇りを持って全国の道を走らせることができるようになります。ふるさとを離れて暮らす人々にとっては、故郷への思いを愛車に込める手段にもなるでしょう。
地方版のカラープレート統一によって、あなたの支払う寄付金が、遠い地域の交通改善や観光振興、さらには災害復旧・復興支援に確実に役立てられる点も大きな魅力です。1,000円という手頃な金額から、地域貢献ができる仕組みは、多くのドライバーにとって参加しやすいものとなるでしょう。
この大転換は、単なるプレートの変更に留まらず、全国のユーザーと地方自治体を「走る広告塔」でつなぎ、日本の地域活性化に貢献する新しい形の共創モデルとなるでしょう。
2028年度には新しい全国版デザインの募集も始まり、2029年度以降には「ふるさと版」の導入が予定されています。これからのカーライフに、新しい選択肢と楽しみが加わることは間違いありません。
あなたは、どの地域のデザインを選びますか?愛車に込める思いと共に、新しい図柄ナンバープレートの時代を楽しみに待ちましょう。
※本記事は、国土交通省が2025年6月25日に発表した「図柄入りナンバープレート等に関する検討会」の中間取りまとめに基づいています。
たとえ話:図柄ナンバーは「走るふるさと納税」
この制度変更は、まるで全国に散らばる「ご当地Tシャツ」を、オンラインショップを通じて誰でも購入できるようになることに似ています。これまでは現地に行かなければ手に入らなかった、あるいは着られなかった特別なデザインを、自分の好きなタイミングで身につけ(車につけ)ることが可能になる。
そして、その購入代金の一部が、デザインのモチーフとなった地域の振興に直接役立てられる。これにより、ユーザーは単なる愛好者ではなく、地域を応援するアンバサダーとしての役割を果たすことができるのです。
まさに「走るふるさと納税」とも言える図柄ナンバープレート。あなたも、愛車を通じて地域貢献の輪に参加してみませんか?
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