職権抹消について

業務

ディーラー目線で職権抹消についてのお話です。他サイトでは職権抹消されたクルマを廃車または復元登録する際に自動車税はどの程度収めるのか等語られています。このサイトでは違った目線、自動車会社からみた職権抹消を考察してみます。お付き合い下さい。

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職権抹消の必要性

職権抹消は「はやい話、自動車税納付における事故物件処理」企業で行う貸倒償却のようなものです。3年以上自動車税を納付していない車両、当然車検も受けられていません。自動車そのものが実際にあるのかもわかりません。情報源として納税義務者の数が存在するだけです。

自動車ディーラーであれば、顧客管理の指標として車検防衛率や点検獲得率が重要視される訳ですが、その分母となる対象顧客数は大変重要です。そのお客さまが実際にそのお車を使用されているのかということです。

運輸省も全国保有車両数は重要で、実際に稼働している車両数がつかめていないと困る訳です。自動車税未納者に向けて督促状は勿論のことですが所在の解らない自動車データーを永久にデータベースに残し管理するのは得策では無い訳です。

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職権抹消の権限

職権抹消は運輸省のデータから納税が行われない当該車両を強制削除する行為なのですが、未納期間を定めて勝手に削除される訳ではありません。

自動車の登録時点での「所有の形態」によって定められた納税義務者に対し、強制削除を執行することを承諾するか否かの確認作業を必ず行います。

個人所有の車なら所有者に権限がありますので本人に通達が行われます。連絡無き場合には最終的に期限をもって執行されることとなります。

一方、販売会社で売られる自動車の多くは割賦販売であったり「所有権解除について考察」で述べましたディーラーに所有権をおいたまま使用する車両も多く、職権抹消の確認作業は販売会社の担当者に調査を一任されることとなります。所有権留保車両の職権抹消権限はディーラーにあります。

運輸省が未納者全てを確認するという作業は負いません。

職権抹消の実態調査と執行許可

小職も3年ほどですが、この調査執務を行った貴重な経験があります。何万代も管理している古参ディーラーともなれば調査対象となる事故物件の数も多くなります。比率的には0.1%(1000件に1台)程度の発生頻度でした。

調査リスト(登録番号の一覧表と車検証の事項証明写し)を基に登録日報データーを参考に古い注文証データから電話番号を調べ問い合わせを行っていきます。

調査内容には確認欄があって、1自動車所在が確認できる(車検証やナンバープレートが存在し抹消登録が可能な状況である)、2既に転売が数回行われていて所在がハッキリしない場合の追跡不可車両、3連絡がとれたが既にその車は存在しないという回答、4電話確認ができない 記憶が曖昧ですがこのような内容だった筈です。1は抹消を促す訳ですが長期的な納税義務の観点から抹消登録に至るケースは殆ど無かったです。ですので殆どが職権抹消執行とされる訳ですが・・・・・

職権抹消後の復元と責務

復元に至って個人所有の場合は数年分の納税を行って(自動車税は地方税ですので自動車税事務所によって金額の見解は異なっていると思います)解体抹消なり中古車新規登録復元登録や継続検査と、めでたく復元(運輸省データーにのる)されます。

問題は所有権留保からディーラー調査を経ての復元登録です。運輸省は調査業務をディーラーに移管しディーラー責任において職権抹消を執行している訳です。そのユーザーからの復元依頼が運輸省にきているのですから少なからず調査責任が生じるます。

復元における理由書や念書のようなもの(古い記憶で申し訳ありません)を提出しお伺いを立てる訳ですね。小職の場合も数十件扱う中で連絡がとれなかった人もいます。復元の可能性も多い訳です

制度の運用と所感

ユーザーからすると、納税できない正当な理由があった場合でも数年で税金がストップする有難い制度ではありますが取扱いによっては荒っぽい制度だと感じています。

故意に納税しない悪質なユーザーも中には居ます。営業スタッフもまたそんなユーザーを黙認する人も居ました。随分昔の話にはなりますが、業務課に抹消を行うナンバープレート置き場があって車両から取り外されたプレートが並べられています。

そんなプレートの中に何年経ってもずっと抹消されないプレートが沢山ありました。営業スタッフの机の下にもナンバープレートが置かれたままという風景もありました。

何らかの理由で抹消できない理由が発生し、そのまま職権抹消を故意に待っているとしか思えない?そういう時代もありました。

職権抹消の制度を全ての営業スタッフが理解しているとは思えませんが現代に於いても悪質な利用が可能な制度でもあります。

日本の自動車保有台数 8222.6万台(令和3年4月現在 自検協)毎日のように盗難や海外輸出が発生しています。空地で朽ち果てていく放置車両、リサイクル法である程度は明らかになった保有台数ですが未納車両は後を絶ちません。